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【連載企画】四国アイランドリーグPlusの今〜愛媛マンダリンパイレーツ編〜

2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大が日本だけでなく世界中を襲っている。

収束の気配が見えない中、スポーツ界においても延期や自粛の対応を迫られた。

野球界も例外ではなく、NPBそして独立リーグは3月下旬の開幕を断念。2度の延期を経て、6月20日の開幕に向け準備を進めている。

この未曾有の状況の中、独立リーグではどう向き合っているのか。

四国アイランドリーグPlus4球団の監督・球団代表協力のもと、連載企画でお送りする。

第1回は愛媛マンダリンパイレーツ。
昨年は2年連続後期優勝を果たし、リーグチャンピオンシップに進出。しかし、徳島インディゴソックスに敗れ、あと一歩で優勝を逃した。

今シーズンも前年に引き続き河原純一監督が指揮を執り、5年ぶりの独立リーグ日本一奪還を目指す。

今回はその河原監督と田室和紀球団統括マネージャーに登場いただいた。
(取材日は5月8日)

自主練習期間は地元企業の施設を継続して利用

当時の現場の状況を河原監督に伺う。

4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大し、これに伴いチームは翌17日から全体練習を休止。自主練習に切り替えた。

「グループを9人ずつ3班、時間帯も3つに分けてできるだけ少人数で練習をしています。早いグループで朝9時から、終わりが遅いグループだと夜8時位までは動いています」

幸いグラウンドやウエイトトレーニング施設は後援企業の支援もあり、継続して利用できていたという。

「我々はグラウンドとウエイトの施設が今も使えています。練習メニューを与えつつ、グラウンドの練習を3時間・ウエイトトレーニング2時間を1つの班に割り当てています」

ノックを打つ河原監督。毎日朝からグラウンドに来ていた

取材日である5月8日、県からはスポーツ施設などが11日から再開されるという声明が発表された。

「また来週から変わってくるのではないかと思います。全体で揃ってできるのではないかと」

その言葉通り、11日からは全体練習を再開。愛媛銀行総合グラウンドで全員がユニフォーム姿で顔を合わせた。13日には紅白戦を行い、6月20日に決まった開幕に向けて調整が再度始まった。

選手たちは野球に専念

独立リーグでは、生計を立てるためにアルバイトをしている選手も多くいる。

しかし、マンダリンパイレーツでは県や球団のバックアップにより環境が整えられているという。

「選手は寮生活なんですよ。アルバイトもしていません。野球に集中できるという点ではすごく恵まれていると思います」

インタビューに答える河原監督(球団事務所にて実施)

自主練習に切り替わり、練習方法や過ごし方に変化があったのか。監督は以下のように説明した。

「毎日グラウンドに行っているので、普段より家にいる時間が増えたわけではないです。これまでと変わらず過ごせていますね。グラウンドやトレーニング施設が使えないとなると練習の仕方を考えなきゃいけないですが、我々は恵まれているので今までやってきたことを継続してやる形です」

河原監督は12年に選手として愛媛に入団。15年まで現役を続け、17年に監督に就任した。4年目を迎える今シーズン、2月からこれまでのチーム状況について語った。

「2月から練習してきて、3月末の開幕に向けていい感じで来ていました。そこで開幕が延期になって、体力面や技術面を維持することもそうですし、気持ちを切らさずこれからもやらないといけないので、どうコントロールするか頭を使うところです」

昨年は後期優勝を果たした。5年ぶりの独立リーグ日本一を狙う

強化するべきポイントはどこか。これについてはっきりと述べた。

「ここがポイントというのは無いです。全てにおいてレベルアップしないと選手はNPBには行けないので、『この選手はここだけ』なんて事はないですね。どの選手もすべてをレベルアップさせないといけないと思ってやっています」

ここまで施設も継続的に利用し、大きなブランクなく調整ができている。今シーズンは4年ぶりの四国アイランドリーグPlus制覇、5年ぶりの独立リーグ日本一を狙う。

スポンサー契約は開幕前に完了

続いて、運営面について田室球団統括マネージャーに話を伺う。
取材前日である5月7日まで球団スタッフは完全在宅勤務。8日から業務に応じて一部スタッフが出社、翌週からは在宅と出社で半分ずつ勤務するようになった。

営業活動については4月以降活動が停止しているが、財政状況についてはこう説明した。

「本来は3月28日に開幕予定だったので、スポンサー契約や後援会(ファンクラブ)への入会は3月までに済んでいたこともあり、資金繰りはなく済んでいます。マイナスになるのは当日球場で販売していたチケット収入などの興行収入です」

しかし、開幕に向けて準備が始まっていると言えども確定はしていない。無観客になる可能性も考えられる。

「この先を言うと、試合が開催されなかった場合はスポンサーの露出はありませんし、後援会の特典に関してもチケットやグッズの購入券などがあるのでまだどうなるか分からないです」

チームの状況について説明する田室統括マネージャー

では、選手の待遇はどうなのか。給与面については4月も支払えているという。

「本来払うべき正規の報酬に関しては開幕以降ということになっているので、今選手たちに支払っている給料は3月の独立リーグ一律で決まってるミールマネーです。ただ、この状況なので4月もミールマネーでの支払いをしています」

上述の通り選手は全員アルバイトをしていない。選手の管理については以下の通り説明した。

「球団によって考え方は異なるのですが、我々は幸いグラウンドで練習できているので、アルバイトとかはせずに毎日野球の活動として拘束をしていました」

台湾から届いた「友好のマスク」

5月11日、マスク500枚がチームに寄贈された。贈り主は台湾社会人野球チームのトプコファルコンズ。

松山市と台北市は友好交流協定を締結しており、マンダリンパイレーツとは15年から3年間、お互いのホームで試合を行うなどチーム間で交流を行っていた。

1日にトプコファルコンズの関係者から電話があり、                      

「日本国内で不足しているマスクを台湾では十分な量を確保できているので、愛媛マンダリンパイレーツに無償で提供します」

と連絡をいただいたことがきっかけに500枚の「友好のマスク」が贈られた。

チームに届いた「友好のマスク」

NPBで11シーズンプレーし、台湾球界でも3シーズンプレーした正田樹投手もこのように感謝の言葉を述べた。

「本当に嬉しい。野球を通したつながりを実感しています。洗濯や消毒をして一枚一枚大切に使いたいです」

メディアの取材を受ける正田樹投手

田室球団統括マネージャーもチームの関係についても交えて語った。

「トプコファルコンズさんとはここ2年ほど、事情で交流機会が持てていない状況ですが、これを機に改めてお互いの球団の絆が深まり強まることを期待しています」

ファンへのメッセージ

6月20日の開幕に向けてチーム全員が一丸となって準備を重ねている。最後にファンに向けてメッセージをいただいた。

河原監督
「開幕に向けてやるべきことをしっかりやっていきたいと思います。何とか良い姿をファンの皆さんにお見せ出来るのを楽しみにがんばりますので、ぜひ応援していただけたらと思います」

田室統括マネージャー
「開幕の見通しが立ちました。何とか1日でも早く収束を願っていると共に、試合が始まったときには、精一杯のプレーを見せてくれると思いますので、楽しみにしていて下さい」

(取材/文 白石怜平)

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