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アメフト・日本選抜vs米国大学選抜「アイビーリーグに勝つことで、さらに上のレベルへの挑戦権が得られる」

日米国際親善試合「JAPAN U.S. DREAM BOWL」が開催される。

国内アメフト界のレベルアップ、そして米国でも通用する選手を育成するプロジェクトの一環。

国際経験豊富なアサヒ飲料クラブチャレンジャーズ所属の2選手、QB(クォーターバック)ギャレット・サフロン、そして日本選抜のOL(オフェンスライン)黒川晴央(はるひさ)に大会の注目点を聞いた。

QB#8ギャレットとOL#75の黒川は、クラブで攻撃の中枢を担うコンビ。

「JAPAN U.S. DREAM BOWL」は1月22日(日)13時に国立競技場でキックオフを迎える。2020年3月に米テキサス州フリスコで行われた「日本代表対TSL(The Spring League)」戦以来の国際試合。今回は「日本選抜」と「米国大学選抜」との対戦形式となる。

~ベストな時期に組まれたオールスターチーム

「日本選抜」は外国籍選手を含めたXリーガーと学生選手の中から60名(うち学生6名)が選出された。指揮を執るのは、今季ライスボウル覇者の富士通フロンティアーズ・山本洋ヘッドコーチ。アシスタントヘッドコーチ兼オフェンスコーディネーターをパナソニックインパルスの荒木延祥監督が務める。

「タレント揃いのメンバー構成。日本人選手はフットボールの理解度が高く、そこへ米国人選手が加わる。日本のアメフトを知らない米国人が今回の試合を見たら驚くと思います」(ギャレット)

「ドリームチームと言っても良い。1人1人が上手くて強いので、合同練習もハードでタフでした。これまで日本代表になっても米国に勝った経験がないので、今回は結果を残さないといけないです」(黒川)

1月22日という開催日程も話題になっている。日本スポーツ界ではオフシーズンの印象が強いが、日米共にアメフト界ビッグイベントの前後に当たる。ベストコンディションに限りなく近い状態での熱戦が期待される。

「特に富士通やパナソニックの選手はライスボウルを終えたばかりだから、よく動けています。来日する米国選手も同様が予想されるので、両チームの良いパフォーマンスが見られるはずです」(黒川)

「シーズン終了後の期間が空いていないので、お互いにフットボールシェイプ、万全のコンディションで試合に臨めると思います。それより後になると、オフシーズンに入りソファでくつろいでしまう(笑) 。激しい試合になるのではないか」(ギャレット)

黒川は190cm125kgの体格を誇る日本トップレベルの選手。

~アイビーリーグはNFL選手が生まれるレベル

「米国大学選抜」はアイビーリーグ選抜(以下アイビー)での来日となる。ディビジョンI-AAのリーグだが、カイル・ユーズチェック(サンフランシスコ49ers、ハーバード大卒)などNFL選手を輩出している。

「アイビーの情報が少ない。可能な限りの情報収集はしていますが、ちょっと判断しづらい。だから多少ぶっつけ本番的な部分もあります。大学トップレベルではないでしょうが、甘く見ていません。本場米国の選手なので心して戦いたいと思っています」(黒川)

「アイビーは学力もさることながら、知的でスマートな良いフットボールをする。運動能力に優れた選手も多く、ハードワークを心掛けている。NFLレベルに達する選手も何人かはいるはず。とても良いチームだと思います」(ギャレット)

ギャレットはサクラメント州立大ホーネッツ時代から名前を知られた名QB。

~プレー理解度とハードワークのみ

日本選抜は1月7日から3日間の合同練習を開催、参加選手の中から60名が選考された。昨年末にはプレーブック(試合用戦術)が選手たちに渡されるなど、大事な一戦へ向けての事前準備にも力が入っている。

「選考のための合同練習は、まさに自分をアピールする場でした。バチバチでやっていました。普段は和やかでしたが、練習が始まると緊張感がすごい。米国と戦う覚悟がある、勝つ気持ちを持ったチームだと感じました。アイビーに勝つことで、次回、その上のレベルへの挑戦権を得られると思っています」(黒川)

「ミスを恐れずに戦うこと。複雑なことをしようとせず、シンプルにプレーすれば良い。そして、何よりも楽しむことが大切。米国に通用するプレーは数多く持っています。また外国籍やハーフ選手もいる。彼らの存在は大きい力になるはず」(ギャレット)

外国籍やハーフ選手が加入したとはいえ、日米選手を単純に比較した場合、体格やパワーの差があるのは明白。まず最初に乗り越えなければならないカベだろう。

「以前、米国と戦った時にはフィジカルで圧倒されたのが印象に残っています。最初は戦えると思っていても、試合が進むにつれてズルズルと圧倒された。しかし最近は日本人選手のサイズも大きくなりつつある。パワーもついているので、ある程度の対応はできると思います」(黒川)

「米国人は純粋な身体能力がズバ抜けている。日本人にも身体能力の高い選手は多いが、どうしても不利な部分になる。フットボールの理解度を高め、ハードワークすることでカバーできる。スピード、フィジカルで上回る相手に対して、1対1で勝負できるか。各自がタスクをしっかりこなすことです」(ギャレット)

1対1で負けないだけでなく、結果に繋がる仕事を目指す。

~クイックパス、ラン、そしてホームランパス

Xリーグは国内トップリーグであり、レベルが上がっているのは間違いない。NFL選手までは行かないものの、NFLに次ぐ高いレベルを誇る CFL等でプレーする選手も輩出している。対するアイビーは米国内の大学トップリーグではない。綿密な準備と不屈の精神を持って戦うことで道は開けるはずだ。

「日本の強みであるテンポの良いオフェンスを大事にする。短いクイックパス、ランで確実にゲイン。そして良いタイミングでTD(タッチダウン)を狙ったホームランパスを投じる。効果的なプレー選択でダウン更新をしっかり行うことです。またディフェンスでは基本のタックルはもちろん、集まりの早さも重要。フィジカルで勝る相手にズルズルとゲインされないことです」(ギャレット)

「選抜チームなので『戦術がどうなるか?』は、まだわからない。急造ユニットなので不安はゼロではない。でも同じ意志を持ってプレーできるようにコミュニケーションはしっかり取り合っています。OLとしては自分自身が1対1で負けないだけではなく、結果に繋がる仕事をしないと意味がないです」(黒川)

~選手各々に試合での活躍以上の役割がある

日本選抜チームとしての勝利を目指すのは当然だが、イチ選手として大きな経験が積める場所でもある。黒川にとっては前回2020年のTSL戦に続く選出になったが、合同練習時から得ることは大きいという。

「攻撃時ラインナップ(OL&RB)には米国人選手もいます。トラショーン・ニクソン(富士通)からの細かい確認が多くて、驚きました。コミュニケーションの取り方がしっかりしている。『無理をしてでも走る選手』というイメージが変わりました。日本でやってきた経験を活かしている。尊敬できて参考になります」

「コミュニケーションを多く求められるオフェンスラインは、日本一になった富士通中心のユニットの方が完成度は高い。でもそこへ食い込んでいくのが他チームから選出される意味だと思います。日本選抜で得たものをチャレンジャーズにも還元したいです」

ギャレットはプロ契約選手としてチャレンジャーズでプレーする。QBとしてチームの結果を左右する立場だけに、自らをオーバーラップさせて語ってくれた。

「Xリーグでプレーする米国人選手も招集されています。その選手たちが日本を背負って戦う。どれだけの価値を日本代表にもたらすのか。試合までの練習を通じて、彼らの高いスキル、経験を他の選手に伝えることも求められるはずです。それによって日本人選手も、もう一段階成長するはずです」

状況に応じた的確な攻撃を選択することが得点力を上げる。

~日本アメフト界のレベルは米国人を驚かせるはず

日本アメフト界が次のフェーズへ進むための試金石になりそうだ。またアイビー選抜から将来のNFL選手を発掘できるかもしれない。多くの楽しみに溢れた注目の一戦になることは間違いない。

「日本選抜はドリームチームです。今までにないようなプレーもできると思うので、どれだけ通用するのか楽しみです。普段のリーグ戦より激しくて見応えのある試合になると思います。アメフトの魅力を感じるはずです。そして本場の米国チームに絶対に勝ちたいです」(黒川)

「米国で今回の試合が観られるのであれば、間違いなく誰もが日本のレベルの高さに驚くと思います。そして、自分たちの国技が海を渡り、これほど発展していることに最大限の敬意を払うでしょう。選手の立場からしても楽しみな試合です」(ギャレット)

国立競技場を高校サッカーだけでなく、アメフトの聖地にすることを目指す。

「米国は『絶対負けたくない』という姿勢で試合に臨むと思います。基本的に負けるのが大嫌いな国民ですから。でも僕の予想では、日本が勝つと思います」(ギャレット)

最後にギャレットは太鼓判を押してくれた。

日本アメフト界の新たな一歩が始まろうとしている。新しくなった国立競技場を大熱狂させて、今後の聖地にして欲しいものだ。

(取材/文・山岡則夫、取材/写真協力・アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ)

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