ベイスターズ 躍進の起点になったユニフォーム秘話と率先して行っていた”共創”のスポーツ〜第3期 横浜スポーツビジネススクール 第2回編〜
「I☆YOKOHAMA SERIES」開催におけるエピソード
球場により多くのお客様が来場し楽しんでいただき、この観戦定義を実現するため、「コミュニティボールパーク化構想」を掲げ様々な工夫を凝らしてきた。
球場内においては、多様な層が観戦できるようなシートを用意したり衛生環境を整えるなど改修を何年もかけて行ってきた。
小さなお子さんを持つ家族も安心して観戦できるようなクッション性の席を備えた「リビングBOXシート」や、職場の同僚など大人数で楽しめるために1つのカウンターに10リットルのビールサーバーが付いている「スカイバーカウンター」などが挙げられる。
また、試合のイベントも幅広いファンに楽しめる内容を用意している。女性向けに開催している「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」や子どもたちを対象にした「キッズSTAR☆NIGHT」、そして横浜夏の風物詩とも言える「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」など毎年開催してきた。
もちろん、毎年同じことをしているだけではなく、常に新たなアイデアと工夫を凝らし続けている。
ここでは昨年行われた新たな取り組みとして、「I☆YOKOHAMA SERIES」を紹介した。
同シリーズは球団名を冠して30周年を迎えたベイスターズと、横浜F・マリノスがクラブ創設30周年を迎えたことを記念して行われたコラボレーションイベント。
このイベントの中核となるのが、両チームによるスペシャルコラボユニフォームだった。ベイスターズは6/28~6/30の阪神3連戦で、マリノスは6/25のJリーグ第18節 柏レイソル戦と、それぞれのホームゲームで着用した。
このユニフォームは、競技やリーグの垣根を越えた同じコンセプトを持つデザインとなっている。制作するにあたり、実現までの苦労を講義で明かした。
まず、両チームでユニフォームサプライヤーが異なることだった。デザイン会社も同様に異なるため、双方の調整を経て完全に同じユニフォームとするには様々なハードルがあった。
「完全に同じデザインは難しいということで、両チームで再度協議し、共通したコンセプトをそれぞれのデザイン会社様へ共有することで、双方で落とし込んでいただきました。その結果、極力似せたユニフォームになる形で着地しました」
コンセプトのキーとなったのは、「海と港のまち」。横浜を象徴するレンガ調の街並みにも馴染みやすいネイビーが基調となり、アクセントとして横浜市花であるバラを表現したピンクを彩った。
また、普段使いのファッションとして日常生活に取り入れやすいスタイリッシュなデザインとなっているのも特徴となっている。
プロモーションにおいても、これまでにない新たな取り組みが行われていた。原さんは意図を語った。
「観戦する以外の方々にも広がりを見せるために、ファッションの1つとして、例えばランニングや買い物に行く時の一部にユニフォームなどがある世界観をつくりたいと考えました」
これまで行ってきた選手がモデルになり着用した形ではなく、「私服との着合わせ×ホームタウンを連想させる背景でのモデル起用」というスタイルのキービジュアルを採用した。
加えて、ユニフォームコンセプトの世界観醸成に向けた専用サイト制作や、ユニフォームのプロモーション動画を両チームで共同でつくるなど、近年の欧州サッカー界のトレンドを参考にしたプロモーションを行った。
横浜を代表する2チームがタッグを組んだ取り組み、斬新なプロモーション企画による話題性などもあり、ユニフォームを始めグッズの売り上げ増にも貢献する企画となった。
さらにグラウンド内においても、このユニフォームはチームの2位躍進に欠かせないものとなった。
着用した3連戦は、サヨナラ勝ちを含む3戦全勝。イベント初戦である6/28は、球団記録である本拠地横浜スタジアムでの17連勝を記録した最初の試合でもあった。
選手たちからの要望も受け、9/11からの東京ヤクルト戦から再び着用するなど、縁起のいいユニフォームとしてファンにも強い印象が付いた。
志を持つ受講者に向けて「まず門を叩いてみてほしい」