千葉県野田市で「LIGAベースボールフェスタ真夏のグッドイベント」
広尾晃のBaseball Diversity
8月13日、千葉県野田市で「LIGAベースボールフェスタ真夏のグッドイベント」が行われた。
これは、高校野球のリーグ戦であるLiga Agresivaに参加する千葉県の高校が一堂に会して、スポーツマンシップの学びをさらに深めるとともに、野球を通じて高校生同士の交流を行おうと言うものだ。
第1回だった昨年は、千葉商大付属高のグラウンドで行われたが、今回は、野田市のSAN-POWスタジアム野田が会場。 開会式では、このイベントを企画、推進した千葉商大付属高の吉原拓監督が挨拶、さらにこのイベントに招待された慶應義塾高の森林貴彦監督もコメントした。
午前中は、千葉商大付属高対慶應義塾高の交流戦、大接戦となり3対2で慶應義塾高が勝利した。両校のユニフォームはほぼ同じ。背番号の有無(無いのが慶應)などで区別するしかなかったが、実力が拮抗し好ゲームとなった。
一方で、他の参加校の選手は、多目的ルームで一般社団法人日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事による「スポーツマンシップ講座」を受講。
Liga Agresivaでは、参加校の選手が全員、中村氏の「スポーツマンシップ講座」を受講することになっている。選手は一度はスポーツマンシップの講座を聞いているが、今回、中村氏はさらに踏み込んだ内容の講義を行った。
参加校、指導者の言葉
参加校の指導者に今回のイベントについて話を聞いた。
日大習志野高 吉岡眞之介監督
「高校野球は、目の前のトーナメントしか目標がありません。それに対してLigaは選手の育成や、野球を好きになる取り組みなども考える集団なので、将来のある生徒にとってもいい影響があると思います。今日のイベントも楽しんでほしいです」
東京学館高 遠藤湧士コーチ
「このイベントは、とても良いと思います。他校の生徒とこういう形で実のある交流をする機会はめったにないと思いますので、生徒たちには今日1日、楽しんでほしいと思います」
千葉県立八千代高 阿部賢太郎監督
「選手の交流ができるのがありがたいですね。普通の練習試合では、選手同士が話す機会があまりないのですが、このイベントでは、一緒に昼ご飯を食べるとか交流を通じて友達ができるのがいいと思います」
東葉高 小洞拓人監督
「いろんな学校の生徒と一同に会う機会は、めったにないので有意義ですね。どうしても学校の部活は視野が狭くなる傾向にあります。でもこのイベントをすることでいろんな価値観に触れて、視野が広がると思います。そこに意義があると思いますね」
千葉県立松戸向陽高 栗原光監督
「このイベントは交流できるのがいいですね。普通の練習試合は2校が対戦するだけです。交流は限られています。このイベントとは比べ物にならないですね。野球は閉鎖的で、交流という点では他の競技より遅れていると思います。これがスタンダードになっていけばいいと思います」
千葉県立四街道高 古谷健監督
「今回、これだけ多くのチームが集まり交流できるのは素晴らしいですね。野球を通じて将来に活きる交流ができるのではないかと思います。
昨年も参加しましたが、普段の試合では見たことがない生徒の表情を見ることができ本当によかったと思います。今年もいい表情が見られるかな、と期待しています」
千葉県立船橋高 日暮剛平監督
「仲間内でリーグ戦を始めたのは、1発勝負のトーナメントだけで子供たちが本当に成長できるのか、と思っていたからです。そんなときに(Liga Agresivaを推進する)阪長友仁さんから話をいただいて実施しました。去年から、スポーツマンシップ講座も実施しています。チームとしての『目標』はもちろん甲子園ですが、では、選手が野球をやる『目的』は何だろう、と考えさせるところがいいんですね」
千葉県立君津商業高 金城歩睦監督
「スポーツマンシップという共通の理念をみんなで学んで、野球というスポーツを通じて確認していく。敵味方なく、みんなで試合を作り上げていくと言う考えが素晴らしいと思います。
昨年は、相手選手がファインプレーをしたときに『ナイス!』と声をかけたチームがありましたが、今年はうちもそうしよう!と選手に話しました」
子供たちも野球遊びに夢中
グラウンドで熱戦が繰り広げられる一方で、隣接する体育館では、子どもたちを集めた「ちびっこ野球フェス」が行われた。
こちらは県立船橋高の選手たちが担当。前出の日暮監督は
「今年は、地域の子供たちを呼んで野球のボールを投げる、打つなどの教室を開きました。うちの学校では以前からこうした取り組みをしていますが、底辺の野球人口の拡大につながりますし、地域の人に来ていただくことで地域に貢献もしていると思います。
こうした取り組みが、少しずつ広がっていると言うことは、周りの理解も増えているということなので、非常にうれしいなと思っています」
交流戦で「野球って楽しい」
午後からはLiga千葉の参加校に、慶應義塾高の選手も交えて、メンバーをシャッフルさせての「交流戦」が2試合行われた。
まるで昔、空き地で子供たちがやった「野球遊び」のような雰囲気だ。この試合を通して高校生たちは「野球をすることの意義、目的」に気が付くのだ。そして何より「野球って楽しい!」と思う。それこそが、このイベントの最大の目的でもある。
森林監督と吉原監督の言葉
ゲスト校として招かれた、慶應義塾高の森林貴彦監督は
「うちが所属するLiga神奈川もそうですが、Ligaは、各県内で交流するのが基本でした。でも今回は、千葉の高校が集まる中に、うちも交流させてもらえると言うことで、ついに県をまたいでの交流が始まったと言うことで、これも発展形として非常に面白いのではないか、と楽しみにしていました。
試合をしてみて、もちろん目の前の勝利を追いつつも、選手を育て、成長させると言う共通の意識、同じLigaの理念を持った指導者同士のなので、非常に気持ちよく試合をさせていただきました」
今回のイベントを企画、推進した千葉商大付属高の吉原拓監督は
「去年は、うちのグラウンドでやったんですけど、今回はスタジアムでやりたいと思っていました。学校ではなく、スタジアムで人に見られて試合をすると言うのは、生徒にとって貴重な経験になるのだろうと思ったのです。
またスポーツマンシップ講座や子供の野球教室もしたいと思っていたので、複合施設でやりたいと思っていたのですが、スタジアムも確保でき、前回よりもかなりバージョンアップできたかなと思います。
慶應義塾高の森林先生には、もう昨年のうちにお願いしていたんです。Ligaの先頭を走っている学校だったので、ぜひ試合がしたいと。それが実現できてすごく幸せなイベントになったと思います。
来年、どんなイベントにするかはまだ決めていませんが、生徒のため、高校野球のために、引き続き有意義なイベントをしていきたいと思っています」
甲子園では熱戦が続いていた。千葉県も猛暑に見舞われたが、熱中症対策を取りながら、イベントは夕方まで続いた。甲子園の熱気とはまた少し違うが、千葉県でも「高校野球の未来」を見つめた取り組みが、行われていたのだ。