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「メジャーリーガーが惚れ込んだ宮崎産グラブ」ドリュー・ポメランツ(パドレス)が和牛JBと契約

宮崎産グラブ「和牛JB」が本場アメリカへ上陸を果たす。2018年の発表以来、国内では話題となっていたが、今季からは現役メジャーリーガーも使用する。

製造・販売元のボールパークドットコム社・山内康信社長は、「和牛JBには多くの思いや願いが込められている」と語ってくれた。

ドリュー・ポメランツ(パドレス)は、ブルペンを支える大型サウスポー。

~世界一を狙うパドレスに欠かせないセットアッパー

ドリュー・ポメランツ(パドレス)が、今年1月からの1年契約で和牛JBを使用することとなった。

「レッドソックス時代、同球団在籍の日本人スタッフを通じて知り合いました。日本製グラブに興味があるということで、プレゼントしました。国内での和牛JBデビュー前年の2017年に、プロトタイプを渡しました。長いお付き合いになっています」

「当時のポメランツには契約メーカーもあったので、練習使用のみになると思いました。すると本人から、グラブに『寿司ボーイ』と刺繍を入れて欲しいとのリクエスト。その頃から、日本や日本の食文化に興味を持っていることが伝わっていました」

ポメランツに最初に渡されたグラブは「寿司ボーイ」の刺繍入り。

2010年ドラフト1位(全体5位)でインディアンズ(現ガーディアンズ)へ入団したサウスポー。翌11年に移籍先のロッキーズでメジャーデビューを果たし、その後は数球団を渡り歩いた。チーム事情に合わせ、先発とリリーフ両方をこなせる適応能力の高さが長所だ。

2016年のパドレス時代には、地元サンディエゴ開催のオールスター戦出場。2018年にはレッドソックスの世界一に大きく貢献した。2019年オフには4年総額3400万ドルの大型契約で古巣パドレスへ復帰。ブルペンに欠かせない存在であり、自身2度目となる世界一獲得を目指す。

「パドレスは大型補強を重ねるなど、本気で世界一を狙っています。ポメランツも今年が契約最終年、今まで以上に結果を求められる年です。ギア変更は気分一新もあったのではないでしょうか。そういった状況下で和牛JBを選んでくれたのが光栄でした」

一流タンナーのなめし技術でできた最高級の革でグラブは作られる。

~宮崎産黒毛和牛にこだわったグラブ

「ポメランツの自宅には学生時代からのグラブが20個くらい並べてありました。ナイキを使っていたのですが、ロゴマーク『スウォッシュ』が逆向きのもの。そういったギアへのこだわりの強い選手が弊社に興味を示してくれたのが嬉しかったです」

米国ではギアに関してこだわりを持つ選手は多くなく、消耗品の1つと考える部分もある。日本選手のように細部に気を配ることもなく、使用後は粗末に扱うこともある。しかしポメランツはギアへも気を使い、和牛JBに興味を持った。

「日本製ギアの強みは、手作りによって可能になる繊細さだと思います。和牛JBでは究極を突き詰めたグラブを作りたい。革は和牛の霜降りを乾燥させ過ぎず、国内の一流タンナーにお願いしてしっかりなめしたもの。それを使ってグラブ職人が1つずつ丁寧に作り上げます」

「『Made in Japan』は守り抜きたいのでグラブ工場も建設しました。海外の工場を使ったら和牛JBではなくなります。そこの一貫性は絶対に守りたい。ポメランツにもそういった部分が伝わっているのではないでしょうか。グラブ職人育成もしており、弊社内での生産性も高まっています」

2018年にスタートした和牛JBは、宮崎産黒毛和牛のみで作られている。同和牛は全国和牛能力共進会において4大会連続、内閣総理大臣賞を受賞している。「皮」から「革」へのなめし作業は一流タンナーによって行われる。そして脂分を適度に残しつつ強度や耐久性を維持した革を用いて、グラブ職人によって1個ずつ丹念に作り上げられる。

グラブ職人の手作りによって1個ずつ丁重に作り上げられる。

~2mの大型サウスポーを満足させた

ポメランツのグラブ作り時も細部へのこだわりを徹底した。また米国人選手への初の納品ということで試行錯誤も多かった。身長198cmと大柄で手のサイズが想像以上に大きかったからだ。

「最初にいくつか作ったグラブが小さ過ぎて手が入らなかった。手のひらの真ん中あたりまでしか入らない。思い切って外野手用くらいの大きさで作ったら、『これくらいが良い』ということでした。投手用としては日本人選手では考えられない大きさです」

「最近は映像で投げている姿を見ることができるので、イメージをしやすかった。職人とも話をして『極端に大きくしても問題ないのでは』と試したら気に入ってもらえました。グラブ色は黒など濃いものが多かったが、今年は黄色という指定がありました」

「今季は5個前後の試合用グラブ、練習時に使用する外野用グラブを数個、渡す予定です。『サンディエゴまで足を運んで、直接渡したい』と思っています。短い回を任され、登板機会が多い投手。グラブへの不安を感じずに打者を確実に打ち取って欲しいです」

ボールパークドットコム社・山内康信社長は宮崎への熱い思いも語ってくれた。

~松坂大輔の西武復帰後の初勝利にも貢献

MLB上陸を果たした和牛JBだが、NPBでは松坂大輔氏が実戦使用したことでも話題になった。

2020年3月22日の日本ハム戦(当時メットライフドーム)に先発した松坂氏は、5回を投げて勝ち投手となった。古巣・西武では14年ぶりの勝利ということで多くのメディアで取り上げられた。その試合で使用していたグラブが和牛JBだった。

「西武復帰したばかりで、色々と試したいということでした。宮崎県南郷町でキャンプをやっているので、縁があって手渡す機会がありました。やはりオーラのようなものを感じました。あれだけの選手が使ってくれたのは本当に嬉しかった。メーカー冥利に尽きます」

「グラブを渡した時に『使ってみます』ということでしたが、社交辞令でも仕方がないと思っていました。でも西武復帰後の初勝利で使ってもらえたなんて信じられませんでした。『感触がすごく良かった』とも言ってくださったようです。素晴らしい経験になりました」

西武時代の松坂大輔も和牛JBを使用した(カードはボールパークドットコム社所有)。

~宮崎は大事にしたい場所

日本国内では数多くのグラブ専門メーカーが生まれている。各選手が自分自身に合ったグラブを作れるようになったことは、野球レベル向上にも繋がるはずだ。同時に各社間の競争は熾烈を極め、細かな部分での差別化も求められている。和牛JBには「野球どころ宮崎」という恵まれた環境があることも大きいという。

「グラブの選択肢が広がったことは素晴らしいことです。ユーザーの方々に選んでいただけるような、質の高いグラブを作り続けたいと思います。今後も名前の通り、“和牛”の革にこだわります。また日本製という部分も絶対に変えてはいけない部分です。この2つは弊社のアイデンティティに関わる重要なことです」

「宮崎は昔から多くのチームがキャンプで使ってくれることで、野球どころとして知られるようになりました。そういう文化や伝統を野球グラブを通じて残していければ嬉しい。大袈裟ですがグラブ産業のようなものを残したい。それが宮崎を広めることに少しでも力になれれば嬉しいです。自分たちのルーツ、大事にしたい場所ですから」

和牛JBは九州から日本全土に広がり、野球の本場にまで進出を果たした。誠実かつ着実に一歩ずつ歩みを進める姿はまさに「牛歩」と呼ぶに相応しい。

ポメランツはチームカラーである黄色のグラブでマウンドに上がる予定。

「ダルビッシュ有が先発、ポメランツが後ろへ繋ぐ。優勝を争うシビレル試合でそういう光景が見たい。仕事関係なく、野球人の端くれとして最高の瞬間になると思います」

野球好きが高じて2002年に立ち上げたボールパークドットコム社。メジャーリーグまでたどり着いたが、ここから先も立ち止まることなく1歩ずつ前進する。

「ポメランツとの契約には、大好物の宮崎牛のステーキ肉を年2回送ることも入っています(笑)」

今季、宮崎の魂を持ってメジャーのマウンドに登るポメランツの活躍に注目したい。

(取材/文・山岡則夫、取材/写真協力・ボールパークドットコム)

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