石巻専修大が“本拠地”石巻で連勝、地元出身強打者が復調アピール~南東北大学野球第4週振り返り(後編)
4月29、30日、石巻市民球場で南東北大学野球春季リーグ戦第4週の計6試合が実施された。石巻市民球場でのリーグ戦開催は2019年春以来。同市内に練習拠点を構える石巻専修大は福島大と対戦し、1回戦は3-0で完封勝ち、2回戦は11-0でコールド勝ちを収めた。日本大工学部、福島大、山形大は連敗を喫する中、各チーム光る部分も垣間見えた。後編では、4大学の第4週での戦いぶりを振り返る。
打線爆発の口火切った石巻出身2年生
石巻専修大打線は、1回戦は3安打で3得点を奪う効率の良い攻撃を展開し、2回戦は10安打11得点の猛攻を見せた。
2試合ともに「5番・指名打者」でスタメン出場した吉岡尚樹内野手(2年=東北生文大)は、2試合連続で初回にチームを勢いづける適時打を放った。昨秋は1年生ながら全試合で4番を任され、今春も4番スタート。しかし開幕から10打席連続で安打が出ず、第3週の山形大戦からは5番に降格していた。
昨秋は変化球攻めに苦戦しながらも手応えをつかみ、今春は目標を「ホームラン王」に設定していた。ただ目標を意識するあまり、身体が開いてバットがボールに当たらなくなってしまっていることに気づいた。反省をもとに、「『まず手から』ということを意識して、右方向に低いライナー性の打球を打つ」ことを徹底。この2試合の適時打はいずれも、逆方向へ飛ばす意識通りの安打だった。
吉岡は石巻市出身で、小中と石巻のチームでプレーした。当時から石巻市民球場を何度も利用しており、「やり慣れているので、気楽にできました。大学でもこの球場でプレーできて嬉しい」と笑顔を見せた。生まれ育った石巻で鍛錬を積み、再び4番の座を狙う。
防御率0点台のサイド右腕が圧巻の完封
一方の投手陣は、1回戦でエース石倉春輝投手(4年=日本学園)が9回3安打完封勝利を挙げると、2回戦では速球を武器とする有望株・岡本寛太投手(2年=新井)が5回1安打無失点の好投を披露した。
石倉は今春ここまで4試合に先発し、30回を投げ自責点は1、防御率0.30と絶好調。最上級生となりマウンドでの存在感が増している。9回を投げ切っての完封はリーグ戦では初めてで、「オープン戦から意識してきた『打たせて取る投球』ができて、リズムに乗れた」と胸を張った。
石倉といえば極端なサイドスローが特徴の一つ。中学までは外野手で、高校1年の夏に投手転向した際、同学年のチームメイトに速球派投手がいたことから、差別化を図るためサイドスローに取り組んだ。それ以降、投球フォームはほとんど変えていない。ストレートの最速は141キロながら、5種類の変化球と制球力を武器に凡打の山を築いている。
石巻専修大は渋谷祐太郎投手(現・七十七銀行)、庄司魁投手(現・西濃運輸)と投手陣を支えていた二人の好投手が今春、大学を卒業した。石倉は「二人が抜けたことがチームとしては一番大きい。その穴をなんとか埋められるようにと思いながら投げている」と、エースとしての自覚を強め大学ラストイヤーに臨んでいる。春のリーグ優勝の可能性はついえたが、最後まで自身の投球スタイルを貫く。
強力打線牛耳った日本大工学部の2投手
日本大工学部は東日本国際大に連敗したものの、1回戦は2失点、2回戦は3失点と投手陣が奮闘した。1回戦は左腕・須藤ジオ投手(2年=米沢工)が先発、右腕・藤田一希投手(3年=本庄東)が救援、2回戦は藤田が先発、須藤が救援というかたちとなり、左右の柱である二人で強力打線に立ち向かった。
藤田は昨年、エース級の活躍でブレイクを果たした好投手。今オフは右肩を痛めたことから万全の状態で開幕を迎えることができず、第3週までは投球回数が計6回にとどまっていたものの、第4週では1回戦は4回2安打無失点、2回戦は5回3分の1を8奪三振3失点と力投し、復活の兆しを見せた。
冬場にウエイトトレーニングで筋力をアップさせたことと、投球フォームを見直したことが功を奏し、リーグ戦前のオープン戦では大学入学後の最速を3キロ上回る149キロを計測。この2試合も直球には威力があり、東日本国際大の各打者が手を出せずに三振に倒れる場面が多々あった。
ただ藤田は「結果的にそこまで点は取られていないけど、自分のやりたいことはできていない。流れをつくるテンポの良い投球ができなかった」と反省しきり。特に2回戦は125球を要し、与四死球も5を数えた。尊敬する投手として東日本国際大・大山凌投手(4年=白鴎大足利)の名を挙げ、「ランナーを出してもギアを一気に上げて、バッターが絶対に打てないところに変化球を投げる」大山の投球術を目標としている。同リーグでしのぎを削る一流投手に一日でも早く追いつくため、己を磨き続ける。
須藤は最速143キロの直球が持ち味の速球派左腕。大学2年目の今季は第3週を終えた時点で防御率7.50と安定感を欠いていたが、東日本国際大戦では2回戦で3回3分の2を5奪三振無失点に抑えるなど本領を発揮した。球速だけでなく、制球力や変化球の精度を上げることに重きを置いてきたことが結果に表れ始めている。現在は変化球がカーブとカットボールの2種類しかないことから、シーズン中に新球種を習得することも模索しているという。
名前の「ジオ」は祖父が名付けたもので、ギリシャ語で「地球」を意味する。「とにかくでかい男になってほしい」との思いが込められているといい、須藤は「大学でも、でかい男を目指して頑張ります」と白い歯を見せる。今春は残り3試合。藤田、須藤を中心に秋につながる野球を見せてほしい。
実力者多数の国立大対決に注目
国立大の福島大、山形大は悔しい連敗。第3週までに2勝を挙げていた福島大は2試合連続で無得点と打線が沈黙し、2回戦では投手陣が11失点を喫した。そんな中、1回戦では市川正己投手(4年=安積黎明)が7回3安打3失点(自責1)と好投。前週の東日本国際大戦では5回6失点と打ち込まれていただけに、エースらしさを取り戻す投球となった。金野太樹投手(2年=仙台南)、矢上必顕投手(2年=郡山)の2年生コンビは2回戦でそれぞれ5失点と辛酸をなめており、今後の巻き返しに期待がかかる。
山形大は2位の東北公益文科大相手に1回戦で終盤までリードを奪う粘り強さを見せた。この試合では1番に座った岩垂圭斗外野手(2年=仙台)が長打2本を含む3安打1打点と躍動。先発のエース菅原圭悟投手(4年=仙台)も変化球を駆使して8回4失点と力投した。ここまでわずか1勝にとどまっているとはいえ、投打がかみ合いつつあるのは確かだ。
次週は福島大と山形大が対戦する。東日本国際大と東北公益文科大のリーグ優勝をかけた直接対決に注目が集まる一方、国立大の意地がぶつかり合う両校の戦いからも目が離せない。南東北の熱戦はまだまだ続く。
(取材・文・写真 川浪康太郎)