今秋ドラフト候補の東日本国際大・大山凌が復活の13奪三振完封~南東北大学野球第4週振り返り(前編)
4月29、30日、石巻市民球場で南東北大学野球春季リーグ戦第4週の計6試合が実施された。首位を走る東日本国際大は連勝し、これで開幕から無傷の8連勝。2位の東北公益文科大も連勝で6勝1敗とし、リーグ優勝に望みをつないだ。両校が直接対決する5月6、7日の連戦を前に、第4週でのそれぞれの戦いぶりを振り返る。
エースの使命感胸に、圧巻の完封劇
東日本国際大は日本大工学部に2-0、3-0で連勝。1回戦は今秋ドラフト候補の最速151キロ右腕・大山凌投手(4年=白鷗大足利)が2安打13奪三振完封し、2回戦は藤井優矢投手(3年=角館)、渡邉拓海投手(4年=酒田南)、早坂一希投手(4年=一関学院)、永井龍樹投手(2年=明秀日立)の4投手による継投で0に抑えた。これで4試合連続完封勝ち、36回連続無失点と投手陣のレベルの高さが際立っている。
大山は2年秋に防御率0.36、3年春に同0.35を記録し、昨年の全日本大学選手権では3戦3勝で4強入りに貢献した好投手。スピード、キレのある直球はもちろん、スライダー、カットボールなど6種類の変化球も精度が高く、ゲームメイク能力にも長けている。しかし昨秋開幕戦の試合中に右肘を痛め、それ以降表舞台から姿を消していた。
本格的にボールを投げられるようになったのは今年の2月下旬で、オープン戦の登板は0。それでも、勝負のドラフトイヤーに向け調整を進めてきた。「去年は王座(明治神宮大会東北地区大学野球代表決定戦)で投げられなかったことが一番悔しかった。そのあとに先輩たちが抜けて、『自分しかいない』という気持ちがより強くなった」。チームを再び全国の舞台へ導くためにも、一日でも早くマウンドに戻りたかった。
今春2週目の山形大1回戦、「ぶっつけ本番」で実戦復帰。5回1失点とまずまずの投球を見せると、翌週の福島大1回戦では5回11安打無失点とさらなる快投を披露した。29日の日本大工学部1回戦は復帰後最長となる9回を投げ完封し、「久々なので終盤は疲れました」と言いつつも試合後の表情は充実感に満ちていた。藤木豊監督も「本気を出した大山はもっと凄いですよ」と話しており、完全復活は間近だ。
「去年の選手権で対戦したバッターは間違いなくレベルが高かった。少なくとも自信にはなったし、マウンドでの落ち着きも増したと思う」。幼少期からぼんやりと抱いていたプロ志望が昨年、確固たるものとなった。怪我を乗り越えたこれからは、目標達成に向け突き進むのみ。「今年はピッチャーが豊作と言われている年。その中でも上位でプロに行きたい」と力強く口にした。
東日本国際大打線は下級生が起爆剤に
東日本国際大の野手陣は、第4週は2試合で計5得点と爆発力を欠いた。そんな中、今春はスタメンの多くを占める下級生がこの2試合も躍動した。1回戦では、打率ランキングトップを走る須貝将希外野手(2年=明秀日立)が先制直後の貴重な適時打をマーク。2回戦では1番に座った黒田義信外野手(1年=九州国際大付)が先制につながる三塁打とダメ押しの2点適時三塁打を放ち、リーグ戦初スタメンとなった伊藤航大内野手(1年=東海大相模)も2安打と好守で存在感を示した。
黒田は走攻守三拍子揃った逸材で、U-18日本代表でも活躍した注目のルーキー。同じく左の好打者である森川大輝外野手(1年=青森山田)とともに開幕から全試合でスタメンに名を連ね、しかも1、3、4番と重要な打順を任されている。黒田は「最初は4年生をはじめとした先輩方の姿を見て、『自分でいいのかな』とも考えてしまった。それでも先輩方の思いも背負いながら、1年生らしく、自分らしく野球をやっている」と話しており、学年を問わないレギュラー争いがチーム力を底上げしているようだ。
とはいえ、昨年の全日本大学選手権では4年生野手がバットでチームを牽引したように、リーグ優勝し、全国の舞台で勝つためには4年生の力も不可欠だ。昨年からレギュラーを張る佐々木優征外野手(4年=青森山田)、今春は三塁を定位置としている青木空良捕手(4年=聖望学園)、主将の播磨雄大捕手(4年=埼玉栄)はいずれも3割を超える打率を残しており、三人を中心とした4年生の奮闘にも期待がかかる。
東北公益文科大、逆転優勝へ望み
負ければ後がなくなる東北公益文科大は、山形大1回戦は2点ビハインドの7回から1点ずつを奪いサヨナラ勝ち、2回戦は3-0で完封勝ちを収めた。
1回戦ではエース嵯峨恭平投手(3年=東海大山形)が5回4失点で降板。6回から救援登板した原田稀大投手(1年=小林西)が走者を背負いながらも4回無失点に抑え、勝利を呼び込んだ。一方、2回戦はリーグ戦初登板初先発の島田尚弥投手(3年=小林西)が5回無失点と好投。2番手の桒原雅仁投手(1年=田村)も0を連ね相手打線を封じ込んだ。原田、島田、桒原と今春から台頭してきた左腕が投手陣を支えている。嵯峨への負担が大きくなりかけていただけに、次週の大一番では3投手の起用法が鍵を握ることとなりそうだ。
打線は開幕からしばらく1番を固定できずにいたが、第4週は前週に続き2試合とも、今春打撃好調の間野温翔外野手(2年=遊学館)がトップバッターを務めた。1回戦は2安打をマークするも、2回戦は4打数無安打。1回戦では佐澤深志外野手(3年=日南学園)が中堅からの再三の好返球とサヨナラ打でアピールするなど、外野手のライバルは多く、1番定着に向け正念場を迎えている。
「1番が好きなので、1番でスタメン発表された時は嬉しかった」。小中高と双子の兄・勇翔外野手(現・新潟医療福祉大2年)と同じチームでプレー。小中では1番を打ち続けたものの、高校では兄が1番など上位打線に座る中、自身は下位打線や守備固めに甘んじていた。「地元からも、兄からも離れて野球をしよう」と選んだ東北公益文科大で巡ってきたチャンスを、ものにすることはできるか。チーム内のポジション争いも最終週まで続く。
(取材・文・写真 川浪康太郎)