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TDKのルーキー佐藤亜蓮が母校封じ 休部→転籍のJR東日本東北・武田龍成も好投~東北地区社会人・大学野球対抗戦総括(前編)

 3月25日、仙台市民球場で東北地区社会人・大学野球対抗戦が開催された。東北のアマチュア野球界を代表する社会人チーム、大学が一堂に会する対抗戦で、今年で5回目の開催。JABA東北地区連盟に所属する5チームと仙台六大学野球連盟、北東北大学野球連盟、南東北大学野球連盟に所属する6大学による6試合が予定されていたが、2日目は雨天中止となり3試合が行われた。前編では、社会人プレーヤーの活躍ぶりを振り返る。

地元・秋田で再出発 TDK右腕・佐藤亜蓮が母校に“恩返し”

 都市対抗野球大会17回、社会人野球日本選手権大会11回の出場を誇る強豪・TDKは、仙台大に4-2で勝利した。立役者となったのは、先発した佐藤亜蓮投手(22=仙台大)。昨年まで在籍していた母校の打線を相手に、5回5安打無失点と好投した。

 「母校なのでもちろん『打たれたくない』という気持ちはありましたけど、その気持ちはいつもと変わらないので、いつも通りコントロールミスなく投げようと思っていました」。

 特別な意識は持たず、大学時代同様淡々と、時には気迫を込めてボールを放った。気温が低かったこともありストレートの最速は140キロ台前半にとどまったが、制球力と変化球のキレは抜群。2、3、5回は得点圏に走者を背負うも、要所を抑え本塁は踏ませなかった。試合後は「しっかりゾーンに投げ込めて、変化球も指にかかっていた。カウントを有利に取れたのもよかった」と白い歯をこぼした。

帽子を落としながら投球する佐藤

 「仙台大で野球というスポーツの難しさや準備の大切さを学んだ」。佐藤は充実の大学4年間をそう振り返る。3、4年次には明治神宮大会のマウンドを経験。昨年はリーグ戦で先発デビューを果たし、大車輪の活躍を見せた明治神宮大会東北地区大学代表決定戦では最優秀選手賞、最優秀投手賞の二冠に輝いた。

 自身を成長させてくれた母校のことは卒業後も気にかけており、「相手の隙を突いて、決めるところは決める野球を徹底して、全国大会で勝てるチームになってほしい」と後輩たちにエールを送った。

 3月上旬のスポニチ大会では5回2安打無失点と堂々の公式戦デビューを飾った一方、オープン戦の登板では社会人野球のレベルの高さも痛感しているという。「どんな場面でも踏ん張れる、勝てるピッチャーに、そして先発として大事な試合を任されるようなエースになりたい」。プロ入りを目指し、地元・秋田での大飛躍を誓う。

大型高卒ルーキーに東日本国際大コンビ TDK若手陣に高まる期待

 TDKは佐藤以外にも、入社内定選手の活躍が目立った。身長190センチ、体重92キロと恵まれた体格を持つ右の大砲候補・前田一輝外野手(18=鳴門高)は、「3番・右翼」でスタメン出場。第1打席はストレートで押され見逃し三振、第4打席は変化球に手が出て空振り三振に倒れたものの、第2打席では落ちる変化球をすくい右前に運ぶ安打、第3打席では好機で三塁走者を返す犠飛を放ち、存在感を示した。

 特に第2打席は修正能力の高さが光った。第1打席では完全に封じ込まれた仙台大先発・佐藤幻瑛投手(1年=柏木農)との2度目の対戦。「(第1打席は)体の開きが早く、ボールも見えていなかった。(第2打席は)足を使って最後まで粘れるよう意識した」との言葉通り、粘り強い打撃を披露した。また本人が「積極性と長打力が持ち味」と話すように、ファーストストライクを仕留めにいく姿勢と豪快なフルスイングも可能性を感じさせる。

打席で新人離れした風格を漂わせる前田

 徳島生まれ徳島育ちで、鳴門高では3年次に春夏続けて甲子園に出場。夏の甲子園では近江・山田陽翔投手(現・西武)から適時三塁打を放ったほか、救援登板したマウンドでは最速144キロを計測し、投打で躍動した。

 進路を決める際、大学に進学する選択肢は頭になかったという。「自分の中で、大学に進むと親に迷惑をかけてしまうという思いがあった。社会に出て、自立した上でプロを目指したい」との考えだ。そんな折、TDKの佐藤康典監督が徳島まで足を運び、声をかけてくれた。

 佐藤監督の熱意に応え、縁もゆかりもない東北の地へ。「秋田の寒さにはまだ慣れていない。雪も徳島では降らなかったのでびっくりした」と環境の変化に戸惑いつつも、チームの雰囲気には早くも溶け込んでいる。この道を選んだからには、必ずや目標を叶えてみせる。

安打を放ち、一塁塁上で笑顔を見せる打川

 この日は、昨年の全日本大学野球選手権4強の東日本国際大から加わった二人も猛アピールした。前田と同じく右の強打者として期待される打川和輝内野手(22)は4番に座り、第4打席で中前打をマーク。最終回に登板した水町辰良投手(22)はストレート主体の力強い投球で1回無失点に抑え、試合を締めくくった。タレント揃いのTDKルーキー陣に今後も注目だ。

「野球ができるありがたさ」かみしめる25歳右腕が好投

 仙台市に本拠地を置くJR東日本東北は、青森大に6-2で快勝した。先発した武田龍成投手(25=専修大)は6回2失点と好投。持ち味であるテンポの良い投球で球数を58球にとどめ、四死球0と制球力の高さも見せつけた。

 武田は大学卒業後の2020年から3年間、きらやか銀行(山形市)でプレーしていた。しかし昨年9月、思いもよらぬ出来事が。経営再建の一環で、今年度で硬式野球部を無期限休部とすることが発表されたのだ。「自分もチームのみんなも、野球ができる環境を当たり前に感じていた。その中でのいきなりの休部だった」。突然突きつけられた現実に、ただ呆然とするしかなかった。

懸命に投げ込む武田

 それでも慣れ親しんだ東北地区での競技継続を模索し、昨年12月にJR東日本東北へ転籍。元々知り合いだった選手が多いこともあり、チームにはすぐに馴染むことができた。きらやか銀行では先発、中継ぎ、抑えとあらゆるポジションを任された。そのスタンスは変わっておらず、「チームが勝てばそれでいい。投げろと言われたところで一生懸命投げたい」と力を込める。

 「企業があっての社会人野球。毎日、誰よりも、また野球ができるありがたさを感じながら練習している」。武田の言葉には重みがあった。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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