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元東京ヤクルトスワローズ中尾輝の地元愛知で続くセカンドキャリア

愛知県で小中学生への野球塾を通じて、セカンドキャリアを歩む元プロ野球選手がいる。
その野球塾で指導をしているのは、東京ヤクルトスワローズの投手として活躍した中尾輝さん(28)。

中尾さんは、プロ野球を引退後、2022年3月に投手専門野球塾「UNLIMITED」(アンリミテッド)を開講した。開講から1年が経過した2023年3月、中尾さんの取り組みや思いを取材した。

東京ヤクルトスワローズでの5年間

中尾さんは、愛知県名古屋市出身。同県豊田市にある杜若高校から、名古屋経済大学に進学。当時、愛知大学野球2部リーグに所属していた同大学では、1年春からリーグ戦で活躍し、「2部リーグの逸材」として、プロのスカウトから評価を高めた。
大学4年時に迎えた2016年ドラフト会議で、東京ヤクルトスワローズから4位指名を受け、夢であったプロ野球の世界に飛び込んだ。

プロ1年目から、一軍登板を果たすと、プロ2年目には、最速151キロのストレートを武器にセットアッパーとして、一軍に定着。同年は、54試合に登板し、7勝12ホールドの活躍で、日本生命セ・パ交流戦優勝の立役者となった。
ヤクルトでは、5年間で通算73試合に登板。プロの世界で、多くの経験を積んだ。

ヤクルト時代の中尾さん:本人提供

第2の野球人生は、野球指導を通じて地元に恩返しへ

5年間のプロ生活を経て、2021年限りでプロ野球を引退。
多様なセカンドキャリアがある中で、中尾さんには、子供たちに野球を教えたいという夢が芽生えていた。それも、生まれ育った地元の愛知県に恩返しができる形でできれば、理想だと考えていた。
プロ野球引退時は、27歳とまだまだ体が動き、速いボールを投げることができていた中尾さん。プロ野球を離れ1年以上が経過した現在でも、軟式硬式問わず、140キロ超のボールを投げることができている。

「自身が培ってきた投手としてのスキルを、子供たちに自分の投球を見せながら指導がしたい。」

そうした思いの中、野球塾を始めることができ、かつコーチ兼任でプレーができる愛知県の社会人クラブチーム・TJクラブへの所属を決断。
そして、2022年3月、地元・愛知県にて投手専門野球塾「UNLIMITED」の開講が実現した。

マンツーマンで個人のレベルに合わせた指導をモットーに

クラブチームと野球塾の二刀流で第2の野球人生をスタートされた中尾さん。
野球塾の開講に先立ち、無料体験会を行うなど、着々と準備を進め、2022年3月に開講。現在では多くの子供たちが、中尾さんのピッチング指導を受けている。

中尾さんの投手専門野球塾「UNLIMITED」では、マンツーマンでの指導、個人のレベルに合わせた指導が特徴となっているが、その中でも特に、フォーム固めといったピッチングの基礎を大事にしているという。

そうした指導方針の裏には、これまでの野球人生で培ってきた経験が大きく影響している。実は、中学時代は、チームでも3番手の投手だったという中尾さん。それでも、小中学生時代に、正しい基礎ができていたからこそ、高校、大学でエースになることができ、プロの世界で活躍できるまでに成長することができたと、振り返っている。自身の経験から、まずはピッチングの基礎を身につけるところからスタートしている。

また、個人の体格やポテンシャルに合わせた指導を行うためにも、マンツーマンでの指導を行っている。クラブチームや部活動においては、複数人の選手がいる中で、選手1人1人の日々の変化を汲み取り、個人の状況に合わせた細かい指導を行うことがどうしても難しい側面がある。
いわば自身が専任のピッチングコーチとなることで、個々に合ったピッチング指導が可能となっている。

もちろん、プロの世界で学んだ経験も、大きく生きている。中尾さんがプロ入りした当時から、ヤクルトで二軍投手コーチを務めていた小野寺力コーチから、個人の課題に合わせた様々な指導を受け、技術の引き出しが広がっていた。

「小野寺力コーチには、本当に親身になって指導を頂いた。プロの世界で学んだ貴重な経験を子供たちに伝えていきたい」と話す。

ピッチング指導の様子:本人提供

可能性は無限大。投手未経験から指導半年で優勝投手を輩出

「UNLIMITED」の開講から1年が経過した現在は、子供たちに野球を教えることの難しさを感じると共に、大きなやりがいを得ている。

ピッチング指導の対象にしているのは、主に小中学生だ。そのため、プロ同士であれば、投球フォームの理論などは口頭でも簡単に伝わることが多いが、子供たちには、1回で理解してもらうことが難しい場面が多い。
実際に自分の体の動きを見せながら、子供たちにも分かるようにかみ砕いた説明を心掛け、同伴している子供たちの保護者には細かい理論の説明を行うなど、工夫をしながらピッチング指導を行っている。

一方で、自分のピッチング指導により、子供たちが目に見えた成長していくことが、中尾さんの大きなやりがいになっている。現在の少年野球では、肘や肩のけがを抑止するため、投手の球数制限が導入されている。
チームの状況によっては、投手の練習をしたことがない野手が試合で登板をしなければならない場面も発生している。

つまり、誰にでも試合で登板する可能性があり、誰でも投手として活躍できる可能性が眠っているということだ。

実際に「UNLIMITED」には、投手経験者だけでなく、投手未経験で入塾をしたという子供たちも多くいるという。投手として細かい指導を受けてこなかった子供たちは伸び代が大きく、中尾さんの指導により、すぐに大きな成長を見せている。中には、投手未経験から半年のピッチング指導で、所属チームのエースとなり、大会で優勝投手になった生徒も出ている。

「UNLIMITED」には、可能性が無限大という意味が込められている。文字通り、誰にでも投手として活躍ができる可能性がある現在の少年野球にぴったりの野球塾となっている。

セカンドキャリアは野球の楽しさを伝えていきたい

2022年3月の開講から1年が経過した「UNLIMITED」。今後の活動や目標についても話を伺った。
今後も、投手専門野球塾「UNLIMITED」での活動を続けていく方針だ。

「いずれは教え子が名門高校に入学したり、甲子園出場を果たしたりする生徒が出てきてくれたら嬉しい」と話す。

日本プロ野球OBクラブの一員として、野球教室にも積極的に参加。左からの今井茂さん、中尾輝さん、安斉雄虎さん、尾崎匡哉さん、海老原一佳さん、今井順之助さん

また現在は、個人の野球塾以外にも、野球教室やイベントなどにも積極的に参加している。そこでは、とにかく野球を楽しんでもらえるようにと心掛けているそうだ。
野球人口が減少している昨今、やはり野球を楽しいと感じてもらうことが大事だと語る。

「UNLIMITED」でのピッチング指導でも、やる時はやる、楽しむ時は楽しむというメリハリを大事にしている。そのせいか、指導を受けた選手から「楽しく野球を指導してもらえる」という声がよく挙がっているそうだ。

そして、中尾さんは既に高校、大学で指導が可能となる学生野球資格を回復しており、小中学生だけでなく、高校生や大学生といった幅広い年齢層への指導が可能な状況だ。
指導の選択肢が広がったが、これまでの指導経験上、高校生・大学生よりも小中学生の方が悩んでいる子が多いと感じており、これまで通り小中学生へのピッチング指導を中心としながら、活動の範囲を広げていくようだ。

今後も、中尾さんの野球人生は、地元・愛知県で続いていく。

取材・文/ 野島洋孝

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