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「努力」の兄と「センス」の弟 B-net/yamagataでチームメイトになった“本間兄弟”が胸に秘める熱い思い

小学生時代にバッテリーを組んでいた山形の「本間兄弟」が、10年の時を経て再びチームメイトになった。山形市の硬式野球クラブチーム「B-net/yamagata」に所属する本間秀真投手(しゅうま、22)、樹真内野手(じゅま、19)。似たもの同士であり、ライバル同士でもある二人は、別々の野球人生を歩んだのちに同じチームにたどり着いた。

揃ってロングヘアー、きっかけは”平成“への憧れ

4月20日、B-net/yamagataはきらやか銀行総合グラウンド(山形県中山町)で水沢駒形野球倶楽部とのオープン戦に臨んだ。「8番・右翼」でスタメン出場した樹真は9回の第4打席でサヨナラ勝利につながる安打を放ち、6回から登板した秀真は満塁のピンチをしのぎ1回無失点。ともに1対0完封勝利に貢献した。

力のある直球を投げ込んだ秀真

二人揃って襟足をなびかせるロングヘアーがトレードマーク。樹真は「(秀真と)一緒に平成のドラマを見ていて、『ロン毛の人はかっこいいな』と思って自分が先に伸ばし始めたら真似されました」、秀真は「弟が先だっただけで、もともと大学の部活を引退したら伸ばす予定でした。自分もきっかけは平成のかっこいい男の人への憧れです」と互いの“言い分”を口にし笑い合う。

背番号は樹真が56、秀真が57で意図せず連番に。秀真は「そんなに仲良いつもりはないんですけど…」と首をかしげるが、仲の良さは十二分に伝わってくる。

地元で再出発「また一緒に野球できるのが嬉しい

本間兄弟は山形県朝日町出身。秀真が小学1年生の頃に地元のスポーツ少年団に入団し、3歳だった樹真も兄の練習についていくかたちで野球を始めた。

スポ少では3年間一緒にプレーし、当時は秀真が投手、樹真が捕手でバッテリーを組んだ。とある大会で秀真が1日4試合を投げ抜き、樹真がすべての球を受けて準優勝したのが二人の一番の思い出。樹真は「3年間楽しかった。もう同じチームになることはないと思っていたので、また一緒に野球できるのが嬉しいです」と目を輝かせる。

スタメン定着が期待される樹真

中学は秀真が軟式野球部、樹真が硬式のボーイズ。高校は秀真が山形学院高、樹真が東海大山形高。小学校卒業後はそれぞれの進路を歩んだ。

秀真は怪我の影響で高校野球が不完全燃焼に終わったことから、仙台大の硬式野球部で競技を継続した。樹真は昨年、兄と同じ仙台大に進学するも、部活には入らずB-net/yamagataに入団。「野球は高校で一区切り」のつもりだったというが、高校時代から親交の深かった同期・木村祐葵外野手(19、山形中央高出身)に触発され地元のチームで続ける道を選んだ。そして秀真は大学を卒業した今年、1年遅れでB-net/yamagataの一員となった。

選んだ道での出会いが財産に、示したい“成長”の証

仙台大硬式野球部は200人以上の部員を抱える大所帯。特に150キロ前後の速球を投げる逸材が次々と育つ投手陣は全国トップクラスの層を誇り、秀真は4年間で一度もAチームに上がれなかった。

それでも、秀真は「毎日が発見の連続で、すごく楽しかったです。もともと『一番へたくそ』という立ち位置からスタートしたので、『自分がうまくなるしかない』と捉えて野球を勉強しました」と振り返る。Aチームの練習に打撃投手として参加した際などに速球派のチームメイトを質問攻めにし、その回答を参考にトレーニングを積むと、120キロ台前半だった球速が4年間で15キロアップした。

「仙台大の4年間があったから、B-netでも野球をやろうと思いました」。公式戦出場はなくとも、間違いなく成長した4年間。それを真剣勝負の場で証明したい。仙台大の同期では小田倉啓介内野手、小野寺唯人投手(いずれも日本製紙石巻)、篠塚太稀投手(七十七銀行)、浦野冬聖投手(JR東日本東北)、小松優都投手(マルハン北日本カンパニー)、山上遼馬投手(エフコムBC)と多くが東北の企業チームやクラブチームに進んだ。秀真は「大学時代は足元にも及ばなかったけど、東北で対戦するのを楽しみに頑張りたいです」と闘志を燃やす。

仙台大で得た経験を今後の野球に生かす

一方、樹真も1年目から先輩たちと密度の濃い時間を過ごした。B-net/yamagataは2022年9月に無期限休部を発表したきらやか銀行硬式野球部のメンバーが中心となって発足したチームで、経験値の高いベテラン選手が多数在籍する。樹真は昨年、木製バットや社会人投手の球質への対応に苦しんだものの、今年は「きらやか銀行戦士」の一人である新井諒内野手(29)に打撃のコツを教わり、早くも打席でその成果を発揮している。

「山形の方々に期待されているチームなので、期待に応えて野球で山形を盛り上げたい」とは樹真。明るい笑顔が印象的な二人の胸の内には、熱い思いが宿っている。

経験豊富な先輩たちから多くのことを学んでいる

兄弟間で意識「自分も頑張らなきゃ」「負けたくない」

「お互いどんな存在か」――。難しい質問を投げかけると、二人は熟考しつつ次のように答えてくれた。

「兄には努力する才能があるので、そこはすごく尊敬しています。野球が大好きで、夜遅くなっても練習する姿を小さい頃から見てきた。自分も頑張らなきゃと思わせてくれる存在です」(樹真)

「弟は自分にないもの、一言で言えばセンスを持っている。投げること以外では勝てないと思います。ポジションは違うけど負けたくないというか、ライバルのような存在です」(秀真)

ポジションは違えどライバル心を燃やす本間兄弟

互いにリスペクトし合う本間兄弟は再び同じユニホームに袖を通し、白球を追う。そして創立3年目を迎えたB-net/yamagataを全国の舞台へと導く。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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