相模原プロセス・吉澤響介氏ー3×3バスケットボールで地域密着のチームを作るためにー

 2年前の東京オリンピックで正式種目だった3×3バスケットボール(以下3×3 と省略)。ストリートバスケと呼ばれることもあるこの競技は、スピーディーな動きと試合展開が魅力のスポーツである。

 日本では3×3 EXE PREMIERというプロリーグが2014年に誕生し、2023年8月時点で42もの日本のチームが所属している。リーグの所属チームの数の多さからわかるように、非常に人気のあるスポーツである。

 今回は、かつて相模原プロセスで3×3のプレーヤーとして活躍し、現在は同チームの執行役員である吉澤響介氏に、相模原プロセスの目指すチーム像などを聞くことができた。

セカンドキャリアで裏方に

吉澤さんは、かつて相模原プロセスで3×3の選手としてプレーし、現在は同じチームで執行役員として活動されています。同じチームで選手から執行役員に転向した経緯とは、どのようなものだったのでしょうか。

吉澤響介氏(以下敬称略)「かつて私は相模原プロセスでプレーしていたのですが、ケガのために2020年に引退しました。引退した直後はバスケットボールからも離れ、パーソナルジムでバイトしたり個人でトレーナーとして活動していました。

 パーソナルジムで働いていた時も、そして個人でトレーナーの仕事をしていた時も、仕事自体は真剣にしていたのですが、『選手時代と同じくらい頑張れる仕事をしてみたいな』と思うようになっていたんです。

 その後、保険の代理店業務をすることになったんですが、その時に異業種交流会のようなものがあって、そこで相模原プロセスの関係者の方に偶然お会いしたんです。そこで名刺交換しながら、その方に『僕、以前は相模原プロセスでプレーしてたんですよ』って自己紹介したら後日ご連絡を頂いて、今度は相模原プロセスで裏方という形で働くことになりました。

 今は執行役員という形で、チームに関わっています。私の主な業務は、チームのためのスポンサー様を探すことです。」

吉澤さんは、相模原プロセスを地域密着型の3×3のチームにしたいと考えていると伺いました。そのアイデアは、選手として相模原プロセスにいた頃からお持ちだったのでしょうか。

吉澤「はい。外国のバスケットボールチームって、そのチームがある地域の皆さんに愛されて、支持されているところがほとんどなんですね。そして、その地域の子供達が将来なりたい職業の一つとして『地元のプロチームでプレーする選手になりたい』というものが、必ず挙がってくるんです。

 そうしたことを見たり聞いたりするうちに、そんなバスケットボールチームが日本にもあってもいいよなぁ、と思うようになりました。

 実は、現状の日本の3×3は、参入条件が他のスポーツと比べても比較的低いこともあり、多くのチームが存在しています。でも同時にたった1シーズンで解散してしまうチームも多いのが実情なんです。採算の取れないチームはすぐになくなってしまうので、長い目で見てチームを作るということができないんですね。

 また、そのようにチームが生まれてはすぐ消える状況では、いくら強いチームがあっても、そのチームのある地元の皆さんにチームの存在や活躍をアピールしにくいという問題もあります。多分、日本国内の3×3でスポーツビジネスとして採算を取り長期的なスパンで地元密着を目指しているチームは、相模原プロセスが最初になると思います。」

現役時代の吉澤氏

相模原だからできること

今、相模原プロセスが地域密着型のチームを作ろうとしている最中だと伺いました。そんな中で、吉澤さんが感じている一番の難点というか、難しいこととはどのようなことでしょうか。

吉澤「強いチームは大きな規模のスポンサーがついていることが多いですよね。地域密着型のチームを作る場合、その地域を地元としている大きな企業様がスポンサーになってくだされば一番理想的なのですが、それはなかなか難しいですよね。すべての市町村に、大きな企業様があるわけでもないですし。そういったことが、地域密着のチームを作るときに一番難しい点になるかと思います。

 でも、相模原プロセスの場合、こちらでお店を経営している方がチームを支えてくださる事が多いんです。例えば、相模原の不動産屋さんが新しく加入した選手の住まいを手配してくださったりとか、地元の美容室が選手のヘアセットをしてくださるなどの、とてもきめ細やかなバックアップをしていただいています。

 そうした形で、チームに関わっていただける相模原の企業様と連携しながら、チームを作っていけたらよいですね。」

実は、相模原には日本国内でもトップクラスの選手が集まる自転車チームがあって、そのチームもやはり相模原との地域密着を目指すと表明していました。相模原は地域とスポーツチームをつなぐことに積極的な街なのでしょうか。

吉澤「東京都心では子供の数が減って、小中学校も統廃合される傾向にあります。でも相模原は子供の数も多く、学校も数多く存在する地域なんです。そうした学校にスポーツ選手が訪れる機会も多くあります。その結果として、子どもたちがスポーツに触れやすい環境はあるはと思います。

 また、相模原市自体が広い土地を持つ自治体ということもあり、スポーツ施設も広くて充実しています。そのため近隣の街から相模原を訪れてスポーツをする人もたくさんいるんです。そうした点を見ると、スポーツが根付きやすい環境にある街なのではないかと思います。

 また、相模原自体が東京からみても神奈川県から見ても端にあるせいか、相模原で生まれ育ってそのまま相模原で働いている、という人が多い印象があります。その分、地元意識が強い傾向がある気がします。

 こうした要素が重なった結果として、相模原では地域密着型のスポーツチームを作ることがイメージしやすくなっているのかもしれません。」

相模原プロセスを相模原に根付いたチームにするために、こんなことを相模原でしてみたいという吉澤さんのアイデアは何かありますか。

吉澤「3×3の国際大会を相模原で開催できたらよいな、と思っています。その試合会場も、相模原の主要駅である相模大野の駅前のようにとにかく人の集まるところに3×3の会場を作って、たくさんの人に見に来てほしいですね。

 おそらく、3×3という競技は知っていても、この競技を生で見たことがない人は本当に多いと思うんです。そんな初めて3×3を見る人が、気軽に集まり楽しむ機会を作る必要があるかなと思います。相模原の方にも3×3をより知ってもらうこで、相模原プロセスの活動にも関心を持っていただけるでしょうし、そのときには同時に様々なイベントも一緒に開催することで、相模原を盛り上げることができれば嬉しいですね。

 ただ、こうしたことは相模原プロセスが、様々な人があつまる企業様や団体と連携をとり、双方がwin-winの関係を作ることで、可能になるとも思います。」

相模原プロセスの練習を見守る吉澤氏。

日本の3×3のチームとしてはまだまだハードルの高い「地域密着」を目標に掲げる相模原プロセス。そして、チームの入れ替わりの多い3×3のリーグの中で、長い目で見たチーム運営のためにも、地元である相模原に根を下ろし、地元に愛されるチームを作って行こうと考えている吉澤氏。

 若くパワーのある吉澤氏のような人材が、これから地域とプロスポーツの新しいあり方を作っていくことになるのだろうと強く感じたインタビューとなった。

(インタビュー・文 對馬由佳理) (写真 相模原プロセス吉澤響介)

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