緊急アンケート、期間延長。岩手ビッグブルズのクラウドファンディングの現在地—「一緒に作り上げることが、ブルズの価値を高めてくれる」三浦取締役インタビュー
2020年11月1日、岩手ビッグブルズのクラウドファンディング第3弾がスタートした。岩手県紫波郡矢巾町が保有する体育館をチーム専用練習場として利用する『ブルズアリーナ』プロジェクト。チームとブースターがコミュニケーションを取りながら、一緒に専用練習場を作り上げていくことを目的としている。合言葉は『共につくろうぼくたちの#ブルズアリーナ』だ。
しかし、今回のクラウドファンディングは試行錯誤が続いている。昨年12月にはリターンの目玉として用意している『段ボールブースター』への緊急アンケートの実施や、クラウドファンディング期間の延長が相次いで発表された。
今回、本企画をリードする岩手ビッグブルズの三浦崇取締役(以下三浦取締役)に、第3弾のクラウドファンディングのここまでについて振り返ってもらった。今回の企画はどのような狙いがあったのか。今回のアンケートや延長に至った経緯は?アンケートやコミュニティに寄せられたブースターのコメントをどう受け止めたのか。クラウドファンディングや体育館のこれからはどうなるのか。率直な言葉で語ってもらった。
クラウドファンディングの現状をどう受け止めている?
――現状、70万円到達(2020年12月末時点)という状況です。スタートから現在についてどのように感じていらっしゃいますか。
三浦取締役:多くのご協力を頂けていることに非常に感謝しています、というのが率直な感想です。今回は(経営難を助けてもらう、という)過去二回のクラウドファンディングとは異なり、今回はより強いブルズになっていく為に、ブースターの皆様と一緒に作り上げたい、という形で実施させていただいています。なので、お応え頂いているのが非常に嬉しいですし、こういう動きをもっと広めていければと思っています。
――一方で、過去二回よりも少し苦戦しているようにも感じています。プロジェクト自体の手応え、という部分についてはいかがでしょうか。
三浦取締役:様々な方に取り組み自体は知ってもらえている、という実感はあります。一方で、なかなかご支援までには繋がってない、とも感じています。まだまだ共感を頂ける状態になっていない。一緒に作っていく、という部分をしっかり伝えられていないし、アプローチもまだまだ不足しているな、と力不足を実感しました。
段ボールブースターの狙いとは?緊急アンケートを受けて
――なかなか伝わっていない、という部分で、今回、リターン品の『段ボールブースター』に関する緊急アンケートを実施されました。実施されてみて、率直な感想はいかがでしたか。
三浦取締役:まず、素直な、率直なコメントを沢山いただけて本当にありがたい、と感じました。
――印象に残ったコメントなどはなにかありますか?
三浦取締役:例えば、『段ボールブースターを作成するお金があるのであればそれを選手のために使って欲しい』というものもありました。(手厳しい言葉にも聞こえますが)ブルズのことを本当によく考えていただいて、色々コメントしていただいているのだ、というのを一つひとつのコメントから感じました。凄く嬉しかったですね。
――『リターンの魅力が薄い』『段ボール?』など、段ボールブースターについては賛否両論のコメントが並んでいました。
三浦取締役:元々は、コロナ禍で観戦しに行きづらい状況の中、段ボールブースターに想いを寄せていただく、というコンセプトでした。『自分は応援に行けないけど、自分の分身を置いていく』というイメージです。しかし、企画に対する面白みを感じてもらえていないか、あるいは共感を充分得られなかったのではないか、と反省をしております。
――自分の顔を載せるのに抵抗がある、という方も複数いらっしゃったようです。
三浦取締役:そこは想像以上でした。そのお声を受けて、好きな選手や(マスコットキャラクターである)BULLZO(ぶるぞー)の写真も改めて選択頂けるように準備をさせていただきました。
――ブースター自身のお写真を載せる、というリターンにした背景などはあったのでしょうか。
三浦取締役:一つは、先ほどあった、ブースターの皆様の分身、という部分です。ただ、もう一つは、選手に、応援している人たち一人ひとりを感じてもらいたい、というのがありました。
――選手に感じてもらう、とは?
三浦取締役:こういう人たちが応援してくれている、見ている、というのを感じてこそ、プレイヤーがプロの選手になることができる、という風に私たちは考えています。
選手は、(給料をもらった上で)『自分はプロだ』と主張するだけでプロになれる訳ではありません。周りの人たちが、見てくれて、プロだ、と感じてくれて、認めてくれる。そうやって初めて、プロになれます。
――プロである為には、周りから常に見られている、と意識することが大切だ、と。
三浦取締役:はい。ブルズで最も大事にしていることに「オンコートだけでなく、オフコートでもしっかりとプロとしての行動をしていかなくてはいけない」というのがあります。選手は、「自分たちはこういう人たちに見られている、見てもらっている。そして、(こんな状況でも)応援があるからこそ支えられている」、というのを感じなくてはならないと思っています。今の(バスケットボールができる)環境が当たり前じゃないんだな、ということについて、選手自身が自分に常に矢印を向けられるように。感謝と自省、自覚をし続ける為に。ブースターの皆様の顔が見える、というのは非常に大切だと感じています。
――試合会場での設置だけでなく、ブルズアリーナに貼る、というのもその辺りの想いがあって、ということでしょうか。
三浦取締役:はい、その通りです。日々の練習の中でも、選手たちが(視線や応援を)感じることはものすごく大きなことだと思っています。
期間延長の背景~『実物を見て、ワクワクしてほしい』
――今回、クラウドファンディングの期間延長も発表になりました。正直、支援の伸び悩みが原因なのかな、とも感じたのですが、実際のところ、延長を決断した背景は。
三浦取締役:もちろん、目標金額に達していない、というのはやはり大きかったです。が、もう一つあります。(間もなく改修を終える)体育館を実際に目にしてから、クラウドファンディングに参加するかどうか、一緒に作っていきたいかを検討してもらいたい、と改めて思ったことです。
――なぜそう思われたのでしょう?
三浦取締役:実物を目にして、自分自身がワクワクしたことが大きいです。構想段階から関わっていたので、私自身はどのような練習場になるかはイメージできていました。それでも、実際に出来上がったものを見ると、『うわあ、すごい、かっこいい』と。一方で、ブースターの皆様にはちゃんとイメージいただけるような機会をこれまで提供できていませんでした。
――具体的には、どのあたりを見てそう思われましたか?
三浦取締役:例えば、体育館内の器具庫を改修したトレーニングジムです。ブルズカラーに合わせて床や壁を黒にして、トレーニング機器も黒と赤を基調としたものを揃えました。実際に設置されたところを見ると、ものすごくかっこいいんですよね。こういった実物を見ていただいて、『あ、こういう体育館なんだ、こんなかっこいい体育館になら自分もなにかしら(支援することで)参画してみてもいいな』と興味を持った方がいらっしゃったら、ぜひ(クラウドファンディングに)参加してもらいたい、と思っています。
――今(2020年12月末時点)の改修具合はどのような状況なのでしょう?
三浦取締役:建物としての改修は、配管工事も終わり、ほぼ完了しています。床などもチームのカラーに変わり、いよいよプロの練習場だな、と。年末にはチームの引っ越しをし、選手たちの練習利用は1月2日から開始します。
――ブースターの皆様が実際に目にする機会はありますか?
三浦取締役:1月8日に矢巾町と一緒に開所式を行います。そこでは、報道も入り、施設内のすべてを公開します。『こういった体育館なんだ』というのが、世の中に初めてしっかりとお見せする機会となります。本当はブースターの皆様も呼んでお披露目したかったのですが、新型コロナ感染拡大状況も踏まえ、それはしないことにしました。落ち着いたタイミングでは、皆様の目でぜひ実物を見てもらいたいなと思っています。それまではカメラ越しになってしまいますが、ぜひ一度ご覧いただきたい、と思います。
――ありがとうございます。1月8日の発表、楽しみにしたいと思います。
新シーズンはグッズも楽しみにしていてほしい
――その他、支援の際のコメントなどで、チームに向けてのご意見やご要望も色々と届いています。試合会場の環境やグッズなどへのコメントも目立つようです。
三浦取締役:コメント、ありがとうございます。グッズについては今年、しっかりと力をいれていますので、新シーズン、ぜひ楽しみにしていただければ、と思っています。
――新しいグッズなども展開されるのですね!それは楽しみです。そちらをクラウドファンディングのリターンにすることなども検討されたのでしょうか?
三浦取締役:もちろん検討しました。が、今回は敢えて外しています。その背景は、試合会場で試合を見ながらグッズも楽しんでいただく、試合会場でグッズを見て選ぶ、という体験自体を、ブルズでは一つの価値として大切にしたい、というところからです。
――確かに、試合会場でグッズを選ぶのは不思議なワクワクがある気がします。それで、リターンはグッズそのものではなく、割引券、という形にされたのですね。
三浦取締役: その体験を皆様にもぜひ引き続きお届けしたいと思っています。(新型コロナ感染症の状況もあり、落ち着いてからになりますが)ぜひ会場に来ていただいて、購入して頂ければ非常に嬉しいな、と思っています。
一緒に作り上げたい
――最後に、ブースターの皆様に、一言お願い致します。
三浦取締役:いつもご支援、ご協力、応援していただきまして、本当にありがとうございます。今回、練習専用体育館を矢巾町の協力の元、利用開始できます。これは、チームとしても、クラブとしても非常に大きな一歩となります。
今回、(合言葉にもあるとおり)『一緒に作り上げていく』というのを大事にしています。
岩手ビッグブルズは、ファンの皆様、地域の皆様あってこその存在です。なので、ファンの方々、地域の方々と一緒にこの練習場を作り上げることが、ブルズの価値を一番引き上げるのだ、と私たちは思っています。
選手達の練習場としてはもちろんですが、放課後の時間帯には、子どもたちの育成・教育の場ともなります。こういった場を成り立たせてくれるのは、本当に皆様のご協力があってこそ、です。
ぜひ一緒に作り上げていければと思います。皆様のご協力をお願いしたい、と思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
新年、新シーズンに向けて
1月2日、専用練習場となった体育館でも選手のトレーニングが開始された。
『選手たちは、これまでは写真でしか(体育館を)見ていなかったので、反応が楽しみです』と三浦氏は語っていた。きっと、充実した練習と笑顔にあふれた時間になっていたのではと思う。
新型コロナ感染症拡大が予断を許さない状況での新年開始となった。今年も不安定な状況の中、いつもとは違うシーズンになっていくのだろう。
専用練習場の利用開始で、またひとつ、クラブとしての強みを得たブルズ。しかし、本当のブルズの強みは、プロジェクトのやりとりの中でも垣間見えた、ブースターとの関係性にあるのかもしれない。
『共につくろうぼくたちの#ビッグブルズ』
ブルズ年。一丸となって、突破だ。