甲子園決勝の日に『LIGAベースボールフェスタ in 千葉 真夏のグッドゲーム』行われる
2023年の夏の甲子園は、8月23日、慶應義塾高(神奈川)と、仙台育英高(宮城)の決勝戦となり、慶應義塾高の優勝で幕を下ろしたが、同じ日に、千葉商科大学付属高等学校・秋山グラウンドと松戸向陽高校グラウンドでは『LIGAベースボールフェスタ in 千葉 真夏のグッドゲーム』が行われた。
Ligaの理念を共有する仲間の集まり
高校野球のリーグ戦である「Liga Agresiva」は、地域の高校によるリーグ戦だが、それだけでなく、低反発バットを使用したり、球数制限を導入している。また原則としてベンチ入り全員が出場。さらに「スポーツマンシップ講座」を学ぶことが前提になっている。
今夏の甲子園優勝校の慶應義塾高もLiga Agresiva神奈川の参加校であり、Ligaの理念を共有する「仲間」だったのだ。
今回は、Liga千葉の参加校が集まって、勝敗を抜きにした「野球の楽しさ」を実感し、各校の選手がチームを越えて交流すると言うイベントだ。
朝、このイベントを催した千葉商大付の吉原拓監督が、
「千葉県でこういう形でいろんな学校が集まって、フェスティバルをすることになりました。ぜひ、今日の体験を今後の活動につなげてほしいと思います」
と開会のあいさつをした。
即席の4チームによる試合を楽しむ
この日集まったのは、千葉商大付、県立船橋、松戸向陽、白井、君津商業、四街道の6校の野球部員。学校別の対抗戦ではなく、各校の選手がポジション別にABCDの4つのチームに分かれて、即席のチームで試合をした。各校の監督がチームの監督になるが、作戦は選手自身が立てる。
試合では850gの木製バットを使用する。来年以降、高校野球では低反発の金属バットの使用が決まっているが、今までの高反発金属バットとは異なる低反発のバットの打撃の感触を確かめると言う意味合いもあった。
状況に応じてリエントリーも採用。投手は速球をどんどん投げ込んでいき、打者はどんどん打っていく。
今日一日は、野球の愉しみの原点である「投げる、打つ、走る」を、存分に楽しもうと言うものだ。
午前中、2つの会場に分かれて試合が行われた。昼、6校の選手たちは千葉商大付の教室に集まった。
中村聡宏先生による「スポーツマンシップ講座」
2つ目のプログラムは、日本スポーツマンシップ協会代表理事で、立教大学准教授の中村聡宏先生による「スポーツマンシップ講座」だ。
Liga Agresivaでは、参加校の選手は単に試合をするだけではなく、座学でスポーツマンシップについて学ぶことになっている。
コロナ禍の期間中、スポーツマンシップ講座はリモートで行われていたが、今回は、リアルな講座となった。
実は中村聡宏先生は、慶應義塾高野球部の森林貴彦監督とは、中学のクラスメート。中村先生はラグビー、森林監督は野球で切磋琢磨した間柄だ。
準決勝まで、中村先生は甲子園に駆け付け、慶應義塾高を応援していたが、決勝のこの日は千葉県でスポーツマンシップの講座を選手に行っていたのだ。
中村先生は「君たちはなぜスポーツをするのか?」「スポーツをするうえで大事なことは何か?」を高校生にも分かりやすく紹介。時折クイズを投げかけるなどして、1時間でスポーツマンシップについての基本を説明した。
午後は再び、4チームに分かれての試合が行われた。
今回、フェスタに参加した高校の監督に、Liga Agresivaに参加する意義について聞いた。
野球界に新しい風を吹かせることができたら
千葉県立船橋高校 日暮剛平監督
Liga Agresivaに参加して3年目になります。
全国にLigaの考え方を普及しておられる阪長友仁さんの講演を聞いて、高校野球のリーグ戦が大阪や新潟など他の都道府県でも広がっているのを知りました。その取り組み、理念が凄く新鮮だと思ったんですね。
それ以前から、私は高校野球は今のままじゃまずいんじゃないかという危機感を持っていました。Ligaの取り組みを通じて生徒を成長させるとともに、野球界に新しい風を吹かせることができたらいいなと思って参加することにしたんです。
参加して3年、まだ目に見えて変化したと言うのは、それほどないんですが、低反発バットだったり、球数制限などのルールで野球をして、私自身三塁コーチをしたりもして、ベンチにいたらわからない部分が見えてきたように思います。
部員数は26人です。今まではどうしても勝ちが第一優先ということで、出られない選手がいたんですけども、Ligaでは全員が背番号をつけて出場することができ、価値のあることだなと思っています。
Ligaの野球でも勝ちを求めているのですが、それが第一優先ではない、いわゆる「勝利至上主義」ではありません。生徒の成長とともに勝利も見据えていくと言うことだと思います。
今までちょっと光が当てられなかったような選手にも活躍の機会を与えることができるのがいいですね。
野球部の活動って、競技を通じて選手に成長してもらうのが一番大事だと思います。その成長には技術的なものだけじゃなくて、人間的な成長も含まれます。今回のフェスタでは、他チームの選手と交流をしますが、それによって多様性なども身に着けることができるのではないでしょうか。
野球を楽しみ、成長につなげる
千葉県立君津商業高校 金城歩睦監督
Ligaに参加して2年です。うちの高校が所属している第8ブロックには木更津総合と拓大江陵と言う強豪私学がいるんですが、一方で野球競技人口が本当に減っています。
そんな中で、うちに入学して野球を続けようと思った子たちが、トーナメントの公式戦でしか戦えないというのは、どうなのかなと思っていました。やはり高校野球を少しでも楽しんでもらいたい、また自分の成長につなげてもらいたいと思いました。
昨年参加して、真剣勝負ができたことも収穫でしたし、中村聡宏先生のスポーツマンシップ講座を学んで、相手チームがいいプレーをしたときに「ナイスプレー」と自然に声をかけることができ、逆にこちらも声援を貰えて幸せでした。
そういう姿勢がどんどん自然になっていったのが、本当に良かったと思います。
私自身、もともと地元君津の中学校の教員だったので、地元の子供たちの成長した姿を見続けていきたいなと思っています。
甲子園だけでない目標の大事さ
千葉県立松戸向陽高校 栗原光監督
2018年だと思いますが、Liga Agresiva千葉は、四街道高校の古谷健先生が立ち上げられたんです。6,7校から始めたと思いますが、今は10校くらいになっています。参加校の選手たちに、高校野球は甲子園だけじゃないよって、真剣勝負の場を増やして、目標を持たせるのはいいなと思いました。
当初は県立高校ばかりだったのですが、私学が参加するようになって嬉しかったですね。
今回、千葉商大付の吉原先生のご提案で、中村聡宏先生の講義を受講できて、本当に勉強になりました。スポーツマンシップは生徒に理解させるのは難しいテーマでしたが、こうして直接お話を伺って、本当に良い機会になりました。また、指導者にとっても勉強になりました。
Liga Agresivaの考え方をこれからも広めていき、選手たちの成長を促したいですね。
試合ができることとスポーツマンシップの学び
千葉県立白井高校 菅谷謙監督
松戸向陽高校の栗原先生からお誘いいただいて、今年から参加します。
うちは選手数が3人と少ないので、合同チームを組むことが前提となっています。
そのためになかなか他の学校と巡り合うことも少ないので、いろんな学校の選手と会うのも一つの経験かなと思っています。
そもそも試合をすることも難しいので、試合ができるのが大きな魅力です。
それから、スポーツマンシップを学んだり、テーマをもって試合に臨むことができるのも大きいですね。
連合チームが前提となりますので、練習もままならない状態でしたから、とにかく試合ができるのはありがたいですね。選手の中には中学時代に軟式野球をやっていた選手もいます。
とにかく試合をする中で、コミュニケーションを大事にしてほしいと思いますね。
中村先生のスポーツマンシップの講義も初めて聞きますので、大変期待しています。
高校野球の仲間が集まって、ともに切磋琢磨し、学び合う。Liga Agresivaの「輪」はここ千葉でも広がっている。