車いすバスケットボール NO EXCUSE ファン感謝デー 応援の感謝と天皇杯制覇への決意

2月17日、東京・有明アリーナで車いすバスケットボールチーム「NO EXCUSE」のファン感謝デーが行われた。

120名のファンや関係者に向けて今シーズンの感謝を伝えるとともに、コートを通じて交流を深める場になった。

(協力:NO EXCUSE、写真 / 文:白石怜平)

2003年結成の車いすバスケ強豪チーム

NO EXCUSEは2003年に結成し、昨年20周年の節目を迎えた。東京都や千葉県を活動拠点とし、数々の大会で好成績を収めている。

車いすバスケ最高峰の大会である天皇杯(日本車いすバスケットボール選手権大会)でも準優勝を6回果たすなど、全国屈指の名門チームである。

選手は15人在籍し、中でも主将の香西宏昭選手は日本代表として4大会連続(北京~東京)でパラリンピックに出場。21年の東京大会では銀メダル獲得に貢献した。

地域活動にも積極的に出向いており、千葉県市川市の地域スポーツクラブ「市川スポーツガーデン国府台(ISG国府台)」で体験会を毎月一回開催し、22年からは「車いすバスケットボールフェスタ」を開始するなど、地域との関わりも深めている。

ISG国府台での車いすバスケットボールの様子(23年12月)

香西選手の『子どもたちのために』を具現化したアカデミー

冒頭の通り、この日はファン感謝デーとして1年間応援してくれたファンと共に過ごす時間になった。入場がコールされると会場からは大きな拍手に包まれた。

ちょうど2週間前には天皇杯を戦った選手たち。香西選手がチームを代表して、1年間の応援に感謝の気持ちを述べた。ここから最初のコーナーがスタート。NO EXCUSE アカデミー生によるミニゲームが行われた。

昨年5月から活動開始した同アカデミーは、小学4年生~中学3年生までの11人が在籍。コーチは香西選手をメインとしてNO EXCUSEの選手複数名が務める豪華なプログラムとなっている。

アカデミー立ち上げを企画したのは香西選手だった。香西選手は高校卒業後はアメリカの大学へ留学し、卒業後はドイツ・ブンデスリーガでプレーするなど世界を渡り歩いてきた。

アメリカでは文武両道を必要とする学生生活を送り、ドイツではプロ選手として優勝も果たすなど力をつけていった。

香西選手自らアカデミーについて紹介した

これらの経験を通じて気づいた共通点が”出会い”だったと語る。出会いを通じ、きっかけを与えてもらったからこそ今の自分がある。

そう感じた香西選手は、海外でプレーを続ける中で、「今度は自分が誰かのきっかけとなりたい」「子どもたちのために何かしたい」と考えるようになったという。

その1つとして日本でアカデミーを創ることを考えた。

「障害があったり車いす利用者だったりすると部活動で同世代と切磋琢磨する経験を得ることが難しい。アカデミーがそういった経験を積める場所になるのではないか?と思い発足しました」

この日は8名が参加。前後半4分ずつで行われたこの試合は、シュートに加えてディフェンスリバウンドでも1点加算されるルールで行われた。

軽快な動きと元気いっぱいのプレーを見せ、選手そして観客から笑顔と驚きがあふれる8分間になった。

選手に負けない迫力あるプレーを見せた

エキシビションゲームでは昨年の新入団選手が活躍

続いては、NO EXCUSEの選手によるエキシビションゲーム。及川晋平ヘッドコーチ(HC)と廣木美奈アシスタントコーチ(AC)が解説に入り、昨年入団した選手を紹介した。

新入団だったのは、山口徹朗・立川光樹・横溝俊・下村浩之の4選手と泉山仁志AC。及川HCが”個人情報”をバラす一幕に廣木ACがツッコミを入れるなど、ウォーミングアップ中は笑いに包まれた。

ただ、最後は「一年間の感謝を込めて、全力プレーを見せてくれるでしょう」と締めアップを終えた。

解説を務めた及川HC(写真右)と廣木AC(同左)

エキシビションゲームでは先に紹介のあった選手たちがパフォーマンスを発揮した。前後半5分ずつ行われたゲームで、最多の4得点をマークした立川選手。

立川選手は現在日本代表で活躍する川原凜選手(現千葉ホークス)とかつて長崎サンライズで共にプレーした。17年には日本代表の強化指定選手にも選ばれた実力者である。

日本一のシューターになりたい想いから一念発起し、上京。新天地で勝負をかけている。

この日最多得点をマークした立川光樹選手

そしてこの日シュートを決めた一人で同じく昨季入団したのが横溝選手。

障害のないプレイヤーとしてはパイオニア的存在で、車いすバスケの競技歴としては大学時代から20年以上と長いキャリアを持つ。

及川HCとは当時からの縁があり、昨年から選手と監督の関係となった。HCも「また一緒になれて嬉しい」とここで喜びを明かしていた。

シュートを決め、観客を魅了した横溝俊選手

節目の50回目を迎える天皇杯制覇へ

クイズコーナーを挟んだ最後のプログラムは特別映像の上映。シーズン通してチームを撮影し続けたビデオグラファーが制作したムービーを全員で鑑賞した。

ファンへの感謝や天皇杯で4位に終わった悔しさなど、選手・HC・スタッフが喜怒哀楽を語った様子が初めて披露された。上映後、感謝デーの締めとして及川HCが挨拶した。

みなさん、一緒に応援いただきありがとうございました。昨年は新しい選手も入り、チーム全体の底上げというテーマを掲げました。試行錯誤しながらの1年だったと思います。

昨年はコロナの影響で4年ぶりに天皇杯が開催され、全てが一からのスタートでした。

2年目の今年もコロナの影響がありながらも、しっかりと地に足つけて準備をしていた年であり、なかなか結果がでないことが多い中、行く先々でたくさんの応援いただき感動の連続でした。

選手も自分たちのためだけではなく、『応援するみんなのためにもいい試合をしよう』という気持ちも高まり、ファンの皆さんを含めた一体感が生まれました。

最後に決意を述べた及川HC

また、若い世代を対象にしたNO EXCUSEアカデミーを新たにスタートさせ、なんとチームのマスコットも新加入!

車いすバスケのチームってこうやって大きくなっていくのか、と新しい経験を楽しみながら1年間を過ごさせてもらいました。

先ほどの映像で選手たちが言ってくれたように、シーズンを通して皆さんの応援が本当に我々の背中を押してくれる、そんなことを実感させていただいた年でした。

HCの言葉とともに、選手たちの表情が段々と締まっていった

天皇杯では観客席を見て、『ここで諦められない。我々のやる事はまだまだある』ともう一度引き締めて、最後まで戦えたのは皆さんのおかげです。ありがとうございました。

来シーズンも皆さんと一緒に力を合わせて、天皇杯優勝に向けてNO EXCUSEらしい経験を作っていきたいと思います」

来年、天皇杯は50回目の節目を迎える。ファンとともに歓喜をつかみ取るための一年が始まった。

(おわり)

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