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仙台大に東北の大学で初の「スポーツチャンバラ同好会」発足 “武道の精神”と“福祉”を学びながら競技力向上目指す

 仙台大学(宮城県柴田町)に東北の大学では初となるスポーツチャンバラ同好会(仙台大学スポーツチャンバラ剣和会)が発足した。6月上旬、関東の大学のスポーツチャンバラ部・同好会に所属する学生ら約20人を招いて交流体験会を開催。同好会の部員を含む仙台大の学生約70人がルールなどを教わりながらスポーツチャンバラに親しんだ。

「遊び」だったスポーツチャンバラが競技に

 公益財団法人日本スポーツチャンバラ協会の公式ホームページには、「スポーツチャンバラは、自由奔放に神社の境内や野山を駆け回って遊んだ『チャンバラごっこ』を新しい安全な用具を開発することで『安全と公平そして自由』を担保し、体育館で行う現代的なチャンバラごっこ『スポーツ』の土俵に引っ張り上げた」とある。

安全性の高いエアーソフト剣を使用する

 元々は「遊び」の一種だったスポーツチャンバラが競技化されたのは1970年代。使用する武器(通称「得物」)は空気の入っているエアーソフト剣で、全長60センチ以下の「小太刀」を使う「小太刀の部」、全長100センチ以下の「長剣」を使う「長剣の部」など、得物の種類別にさまざまな種目がある。「合戦の部」(20人対20人、50人対50人)や「乱戦の部」(1人対2~3人、2人対3~5人)といった複数人で戦う種目が実施されるのも特徴の一つだ。

 また空手の「型」のように体の動きや所作の美しさ、迫力などで競い合う「基本動作」という種目もあり、「面」「小手」「右からの胴」「左からの足」「突き」の動作を流れるように行う。

学生約70人が体験、部員も面白さと難しさを認識

 全国各地で大会が実施されており、大学生は日本スポーツチャンバラ学生連盟が主催する全日本学生大会を目指す。九州から北海道まで、あらゆる大学にスポーツチャンバラ部・同好会が創部される中、これまで東北の大学にはなく、今年度、仙台大に初めて発足。スポーツチャンバラ経験者の清野正哉教授が部長、剣道経験者で他大学では剣道部監督を務めていた南條正人准教授が監督に就任して部員を集め、1~4年生の男女12人が入部した(7月2日時点)。

 6月の交流体験会では、東京女子大学、國學院大學など関東の大学でスポーツチャンバラに打ち込む学生が競技のルールやコツを伝授。仙台大の学生は説明を受けたのち、実際にエアーソフト剣を使いながら基本動作や防御技を習得し、最後は実戦を体験した。学生たちは当初、慣れない用具や動きに戸惑いながらも、終始笑顔でスポーツチャンバラを楽しんでいた。

関東の学生が丁寧に指導

 仙台大の部員もスポーツチャンバラに本格的に触れるのはこの日が初めて。主将の須藤かさねさん(3年)は「自分は元々剣道をやっていたんですけど、(剣道と)同じように見えて全然違っていた。シンプルで自由だからこそ自分で考えないといけないので、面白い反面、難しかったです」と率直な感想を口にした。

 スポーツチャンバラは打つ場所に制限がなく、足から面まで、相手の全身のどこかに有効打を打ち込めば「一本」が成立する。打突部位の決まっている剣道とは似て非なるスポーツだ。剣道経験者であってもフットワークや視野の広さを身につけるのは必須で、須藤は「今回教えてもらったことがすごくためになったので、忘れずにこれから練習していく」と意気込んだ。

「教える」活動にも取り組み将来につなげる

 中学、高校と剣道部だった須藤は、仙台大ではダンスと大学祭の企画、運営などを行う「学友会」の活動に精を出していた。それらと並行して、「ニュースポーツ」の授業で知ったスポーツチャンバラを新たに始めることになった。12月開催予定の全日本学生大会などで結果を残すことはもちろん、須藤には競技面以外にも思い描いていることがある。

主将を務める須藤(右)

 「スポーツチャンバラは障害の有無や年齢、性別に関係なく、誰もが自由にできるスポーツ。『競技』の面だけでなく『福祉』の面も持っていて、子どもやお年寄りの方に教えるといろいろな効果が得られる」

 スポーツチャンバラはレクリエーションの一環として行われることもあり、仙台大も今後、子どもらにスポーツチャンバラを教えるボランティア活動などの実施を予定している。須藤には「特別支援学校の教員になる」との目標があり、経験を将来に生かそうと考えている。同好会が発足したばかりの現段階では「楽しく、自由に」をテーマに掲げ、その魅力を老若男女に伝えるつもりだ。

監督の狙い「礼儀作法や人間形成を大事に」

 当面は週1回程度の練習で実力を磨き、実績や活動期間を積み重ねて部への昇格を目指す。「原則として3年以上継続して活動していること」「定期的に活動が認められ、競技実績または活動実績が顕著なこと」「昇格後も安定した活動が見込まれること」などが昇格の条件だという。

 南條監督は「剣道経験者かどうかは関係なく、誰でも楽しくやれるスポーツ。和やかな雰囲気で練習できるのではないか」と話す一方、「武道の精神に基づいて指導するので、礼儀作法や人間形成を大事にしたい。ただ勝てばいいというわけではない」と力を込めた。

体験交流会で学生たちを見守る南條監督(中央)

 「武道の精神」を育みつつ、競技を楽しみ、福祉を学べるスポーツチャンバラが、仙台大の活動を機に東北でどのような広がりを見せるか、今後に注目だ。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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