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霞ヶ浦の甲子園初勝利「誇りに思う」 前主将・新保玖和は仙台大で“動ける大型ショート”目指し奮闘中

 京都国際(京都)の初優勝で幕を閉じた第106回全国高校野球選手権大会。さまざまな「初」が生まれた今大会だが、霞ヶ浦(茨城)は初戦で強豪・智弁和歌山(和歌山)を破り、春夏通算4度目の出場で「甲子園初勝利」を挙げた。

 今春2年連続で全日本大学野球選手権に出場した仙台大には、主将の小田倉啓介内野手(4年)をはじめ霞ヶ浦OBが多数在籍している。そのうちの一人で、1年生ながら早くも遊撃の定位置をつかみつつあるのが、霞ヶ浦の前主将である新保玖和(しんぽ・くお)内野手だ。

“快挙”成し遂げた後輩たちに見た「団結力」

 母校の「快挙」を寮のテレビで見届けたという新保。「智弁和歌山という強豪校相手に激戦を勝ち切ってくれたことを誇りに思います」と後輩たちを労った。

 主将を務めた昨年は茨城県大会の決勝で逆転負けを喫し、惜しくも甲子園切符を逃した。同期にはエースの木村優人投手(現・千葉ロッテマリーンズ)ら能力の高い選手がそろっていたため、「技術面やメンタル面は一個下の代よりも自分たちの代の方が上だったと思う」と振り返る一方、今年のチームを見て得た気づきもあった。

高校では甲子園出場を果たせなかった

 「自分たちには団結力があともう一つ足りなかった。一個下の代は一致団結していて、一つになって戦っているのがすごいなと感じました」

 個人としては高校野球をやり切ったつもりだったが、「去年の県大会決勝で主将としてやれることは全然やれていなかった」。大学では個の力ではなくチームの団結力を高めることを第一に考え、「自分にできることは嫌なことでも率先してやろう」と肝に銘じている。

「成長できる」環境求め大阪→茨城→宮城と北上

 新保は大阪府藤井寺市出身。中学まで地元で過ごし、関西の強豪高校からも声がかかる中、練習を見学して「自分に合っていて、ここだったら成長できる」と直感した霞ヶ浦を進学先に選んだ。野球部のモットーは「人間的な成長なくして技術の進歩なし」。真剣に野球と向き合ううちに、攻守ともに技術は自然と磨かれていった。

 大学も高校を選んだ時と同じく練習会に参加して自らの目で見極めた上で、「自分たちで考えてプレーし、かつ中身のある野球ができる」との印象を受けた仙台大に進学。距離的には地元からさらに離れたが、霞ヶ浦の先輩や同期が多いこともあり、寮生活や練習にはすぐに溶け込めたという。

霞ヶ浦のコーチに勧められ仙台大の練習会に参加した

 仙台大は昨年まで、大学日本代表でも活躍し「世代ナンバーワン遊撃手」と称された辻本倫太郎内野手(現・中日ドラゴンズ)が遊撃を守っていた。2年生以上にも遊撃の定位置奪取を狙う内野手が多数いる中、今春はオープン戦からアピールしたルーキーの新保がその座を奪った。

1年春からリーグ戦全試合出場、全日本では“洗礼”も

 最大の武器は落ち着いたグラブ捌きと軽快な足捌きを生かした堅守。「常に誰かをイメージして守っている」といい、高校時代は小園海斗内野手(広島東洋カープ)、体格やスタイルが変わった現在は宗山塁内野手(明治大)を主にイメージして守備についている。

 今春のリーグ戦は全10試合に出場。うち9試合は遊撃でスタメン出場し無失策と守備力の高さを発揮したものの、本人は「リーグ戦でノーエラーでも、大舞台でエラーしてしまっていてはまだまだダメ」と口にする。

 「大舞台」とは全日本大学野球選手権のこと。初戦の星槎道都大戦、初めて立った東京ドームのグラウンドで2失策を喫した。「緊張しすぎて普段の自分のプレーができなかった」。リーグ戦の結果に満足せず、大舞台での反省を糧に日々長所を伸ばしている。

全日本の九州産業大戦では7回に同点のホームを踏んだ

 打撃面でもタイミングの取り方を工夫したり、速球対策をしたりして徐々に大学生投手に対応してきている。リーグ戦は打率.240(25打数6安打)ながら、全日本では2試合ともマルチ安打を記録し7打数4安打と躍動。その後の新人戦も2試合で7打数5安打と打ちまくった。

 新保が「先輩たちのおかげで自分の思うままに、気軽にプレーできている」と話すように、下級生だからと臆することなく、グラウンドやベンチで自分以外のプレーに対しても喜んだり、悔しがったりと感情を爆発させられるのも強みの一つ。そのプレースタイルを貫くのは、個ではなくチームで戦うことの大切さを知っているからこそだ。

ライバルであり憧れの兄二人を超えてプロ野球選手に

 5歳上と2歳上に兄がおり、兄二人は瀬戸内(広島)から大学に進んで野球を続けた。5歳上の兄は競技を退き、2歳上の兄・茉良(まお)はライバル校である東北福祉大でプレーしている。

 兄弟3人そろってメインポジションは遊撃。3人とも、幼少期から父に守備の極意を教わった。中学生の頃までは「お兄ちゃんにはかなわない」と遠い存在に感じていたが、高校生になって実力を伸ばしてからは「お兄ちゃんには負けられない。憧れですけど、超えてプロ野球選手になって、同じ土俵ではなく一つ上のランクで野球をしたい」とライバル心を燃やすようになった。

二人の兄と同じ遊撃手としてプロを目指す

 大卒でのプロ入りを見据え、「まずは体を大きくして、動ける大型ショートを目指して頑張る」と新保。母校の後輩たちから刺激を受けた夏を越え、秋は攻守にわたってさらに進化した姿を見せてくれるはずだ。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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