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第1回:<後編>世界各地に普及・拡大する人気とは? 「Capoeira」日本での20年に注目

▼第1回:<後編>

写真©bito 「カポエイラ・テンポ」の参加者たち

 

「日本では20年ほど前までマイナーであった外国の伝統的文化・スポーツが、どのように修得、輸入、運営され、発展・普及する事が出来たのだろうか?」

●上記のテーマにフォーカスしながら、第1回の<前編><中編>と展開しています。未読の方はぜひお読み下さい。

 

<後編>は東京・大久保のGENスポーツパレス内に道場を構える団体「カポエイラ・テンポ」が主催する
第17回公開入門式/昇段式(Batizado/Troca de cordas)とパフォーマンスによるイベントを取材。
そして、「日本でカポエイラが正しく修得、輸入、運営、発展、普及」を実現してきた各【ポイント】を纏めました。 

●17回目(17年目)となるこのイベントはカポエイラ・テンポの1年に1度のとても重要な日。
今年は43名が入門(洗礼式)し、昇段した。
 
これに合わせ、ブラジルの本場:サルヴァドールのカポエイラ・テンポ本部から4名のブラジル人師範が来日。
さらに日本全国各地の16の他団体(3流派)より“日本カポエイラ界の各団体を代表する顔”と言える、
指導者格の現役カポエイリスタたちが一同に会し200名ほどが参加した。
 
全員参加のパフォマンスタイムの“ジョーゴ”=組手はまさに名選手が集う“オールスター戦”の様相だった。
「カポエイラ・テンポ」には5歳~66歳が所属するそうだが、一般観戦者(入場無料)も老若男女集い、
大変な熱気と興奮に包まれた。
ちなみに「GENスポーツパレス」ビルには総合格闘技やプロレスの有名団体本部が犇めき、カポエイラ・テンポが
その中に並んで居を構えるロケーションである事もあり、臨場感も一際強く感じられた。

メストリ(師範)トニー率いる「カポエイラ・テンポ」のマーク。
カポエイラの本場バイーアにある本部と同じものが日本支部でも使われている。
https://capoeira.or.jp/

●午前中より日本代表:須田竜太しによるキビキビとしたMCで、年齢・階級別に次々とイベントは進行された。
ブラジルでは全身白が正装に使われる事が多く、カポエイラ・テンポは青のマークが目印だ。

 

●写真左のメストレ・トニー師(来日:55歳)と隣の須田竜太氏(日本代表)をはじめとした担い手の姿。
「一生の糧となる、間違いない伝統文化」を、師範から間違いなく修得する。
子供から大人まで国籍、流派、団体を越えた入門式と昇段式を共にする清々しさ。
これぞカポエイラの心意気、哲学、本質。そしてブラジルらしさで溢れていた。

●【ポイントその1】

▶「本場ブラジル(サルヴァドール・ダ・バイーア)で公式に指導者となった日本人」が両国を繋ぎ、
日本人にわかりやすく指導して来た事でカポエイラが正しく伝わり、普及する事になった事。

▶彼らは本場の師範と日本のメンバーを繋げ、日本語で解説・指導できる特別かつ重要な存在として道を切り開いて来た。
▶メンバーがリレーし続けている事も重要。
 
▶さらにその後入門したメンバーもブラジルへ次々と渡り、団体内で本場の本部との人間関係が強固な
ものとして毎年更新されていること。 

●昇段式で正式で与えられるコルダ(帯)。その色で階級別けが厳密・厳正に管理されている。
流派や団体によってその帯の色数(段位)は異なる。

●本場よりカポエイラ・テンポの創設者:メストレ・トニー(師範)氏自身が弟子の師範3名を本場サルヴァドール(ブラジル)から引き連れて今年も来日。
階級・団体の垣根を越えて分け隔てなく直接ジョーゴ(取組)をし続けた。そこに言語の壁は無く、カポエイリスタ同士の無言の交歓と感動で包まれていた。

●本場の師範とジョーゴ(取組)した経験は大きな感動と、一生の宝となるだろう。

●見本のジョーゴ(取組)を披露するのは本場ブラジルの本部から来日した師範たち(左:フラカォンと右:ヴェフメーリョ29)。それを固唾をのみ観戦する日本の各団体のカポエイリスタたち。弓形の楽器(ビリンバウ)を弾くのは同団体日本理事の須田竜太氏。 招待された他の団体を代表する指導者格のカポエイリスタたちが各々の団体名の入ったシャツを着て参加。カポエイラのジョーゴ(取組)が行われるホーダ(輪)の周りを囲む。

●【ポイントその2】

<前編>でも触れたが、

▶カポエイラは「格闘技」であり、「スポーツ」であり、「音楽演奏と合わせた舞踏的」であり、
▶鍛錬した肉体と精神が競い表す、強くしなやかな動きによる「芸術」でもある。
▶「心・技・体」が揃うことは勿論、ジョーゴ(取組)のマナーや団体の中での人間関係も大きなポイントとなる。
▶そしてアフロ系ブラジル文化ならではの精神、遊び心と本能的センスも重要だ。
▶昇段にはカポエイラと取り巻くブラジル史への理解や心意気も問われる。

●メストリ・トニーの姿。愛弟子である日本人、須田竜太氏が率いる日本支部とのこの緊密な関係性が数々の実績を築き上げて来た。
現場レベルで、共に戦い、踊り、芸術性を競うことでリアルな「日伯関係」=日本とブラジルを盛り上げる大きな橋となってきた。
そして日本のカポエイラ界にも具体的な体現・指導から刺激を与えて来た。

● 「師弟対決」もあった。創設者:メストリ・トニーと日本支部創設者:須田竜太氏。

カポエイラに評論家は要らない。何故なら“実際に体現あるのみ”だからだ。

▶ちなみブラジルに数あるアフロ・ブラジレイラ文化体系の中で、
カポエイラ(Capoeira)、サンバ(Samba)、ジョンゴ(Jongo)など輪になり、
その中に1対1(ヘソを向け合う間合い)で行うものを総称して「ウンビガーダ」Umbigadaと呼ぶ。

 
▶「Samba文化」を日本ではカルナヴァルの時に派手な衣装を来た、
またはパーティーミュージック位に勘違いされている人が多いがそれは違う。
リオデジャネイロのSambaもバイーアのCapoeiraと同じく、
バイーアの「サンバ・ヂ・ホーダ」Samba de Roda(ユネススコ世界無形遺産)がルーツであり原型だ。

 


動画●こちらの動画は本場のカポエイラ団体によるカポエイラとそのルーツ、サンバ・ヂ・ホーダとカポエイラの近親性について体現している。Samba de Rodaは本来全身白色の服装で行う。
  

● 別のカポエイラの流派や各団体から招待参加していた指導者たちの背中には各団体の印が。この交流と、切磋琢磨のシナジーの継続が日本のカポエイラ・シーンを過去20年あまりの時間をかけて間違いないものにし続け、急速な普及と進歩に繋がって来た。実に眩しい光景だった。

●他団体の指導者たちの中には竜太氏の最初の師匠、矢部良氏(写真中央で帯を両手で持つ)の姿もあった。
「カポエイラ・ヘジョナル・ジャパンを率いる同氏は日本カポエイラ界の先駆者だ。

●「親子対決」もあった。須田竜太氏と実の息子、カポエイラ歴6年の貫太くんの勇姿。
カポエイラは人を繋ぎ、仲間を作り、互いを育て合う文化だ。写真©bito

●須田竜太氏と共に、カポエイラ・テンポを日本支部立ち上げ時から支えて来た「林雅之」先生(写真右端)はこの日、お子さんがバチザード(入門洗礼)を受けた。

 

写真●カポエイラ・テンポの五反田・蒲田支部長:林雅之氏はこう語ってくれた。

「カポエイラは、ダンスあり、アクロバットあり、音楽あり、格闘技あり、何よりとてもかっこいいので、
是非いろんな方にチャレンジしてもらいたいです」

▼【みんなのカポエイラ・テンポBlog】

カポエイラ・テンポの素晴しさの1つは入門者・各段の人がブログを書いている事。
色々なレベルのメンバーの声がきけるのでぜひ。
http://capoeiratempo.blog121.fc2.com/

 
 ●写真は他団体の公式指導者に帯を正式に巻いてもらう昇段した子供。他団体の指導者たちも、この日は入門や昇段に携わった。

竜太氏は「一緒に日本のカポエイラ・シーンを作っている仲間達な感じですね。彼らにうちの生徒達の昇段を祝って欲しい」と語ってくれた。

▶この様に、お互いの団体が入門・昇段式を祝い、駆けつける素晴しい交流ができているのもカポエイラの素晴しい点だ。
入門者は最初に帯を巻いてもらった指導者を生涯忘れないだろう。

●須田竜太氏の勇姿
 

▼【須田竜太氏の今後への抱負】 

Q:現在プロフェソール(師範)帯である竜太先生。
今年も本場サルヴァドール・ダ・バイーア(ブラジル)の本部に行かれるということですが、今後について教えて下さい。

竜太氏:「プロフェソール(師範)・ニーヴェウ1(レベル1)カポエィラ・テンポ(アソシアサォン・ジ・カポエイラ・メストレ・ビンバ系列)はプロフェソールの段階が3つあります。ニーヴェウ1から3まで。その次はコントゥラ・メストゥレ。そしてメストゥレです。何故かプロフェソールから先の段階が多いのが特徴です。一般的にはプロフェソール、コントゥラ・メストゥレ(メストゥランド)、メストゥレです。今年はなんとかニーヴェウ2にならせて貰う予定ですが、現地で周りを納得させる闘いをしないといけません。カポエイラは結局格闘技なので。自分は死ぬまでにメストゥレになる事はないと思っています。バイーアで全てのカポエイリスタに認められてカポエイラの上の階級に上がると言う事はハードルが高いのです。自分が去年現地で怪我をさせられたのはその現れです。外国人で上位の階級にいるとわかりやすく狙われますね。強くないとどうにもなりません。いつか自分の後からメストゥレが生まれたら嬉しいですし、そうできる様に生きるのが自分の使命だと思っています。」

▼筆者は“リオのカルナヴァル”に限らず「サンバ文化」の本場リオデジャネイロで(時にサルアヴァドールで)1997年から取組み、外国人初のバチザードを受けTVニュース沙汰・新聞沙汰ともなって来た。また外国人初の名門の公式指導者証を得る迄20年近くがかかった。より素晴しい実績のある竜太氏とは比べられないが、本場バイーアのカポエイラ界では例えれば昔の相撲界の外国人力士の様な立ち位置かもしれない。その奥義に近づけば近づく程、優秀であっても中々認めてもらえない。外国人であればなおさらだ。後続のために「前例自体を作らなければならない先駆者」の苦心は計り知れない。今後の竜太氏とカポエイラ・テンポ指導者諸兄の昇段と活躍にも注目したい。

●【ポイントその3】

◎カポエイラには間違いない入門と昇段式がある事。
◎皆の前で、1人で間違いない事を正々堂々と体現できる事。
◎ 常に心技体が問われる事。
◎ 自己満足に埋没するレクレーションではない事。
 
そして恐れ多くも、カポエイラは外国の他人様の尊厳のある伝統文化だ。

書道、茶道、料理人、技術者、医師etc.何れも昇段・階級・免許制であるが、
カポエイラも間違いなく運営されている世界的な存在だ。

<前編><中編>でも触れたが、これも20年間に日本に普及した理由の大きな理由の1つだ。

▶日本における柔道や空手の様に、ブラジルのカポエイラにも明確な入門(洗礼バチザード)と
帯色に定義された昇段制がある(流派によって帯色数と規定に違いはある)。
 
▶初心者〜上級者まで、目的・内容・メソッドが明確化されている。
▶カポエイラ自体のメソッドが間違いなく明確に流派と団体の尊厳をかけて統制・共有化されているのだ。

▶竜太氏に訊くと「カポエイラは格闘技ですから、半端な事しているとやられますからね」とも語ってくれた。

▶ジョーゴ(取組)は1対1で、しかも師範や皆の前で行われる。
だからドサクサな事や、出来ていないのに出来ているつもりになっていたり、本場直系の入門・会得・昇段も
せずにメストレを名乗る事など、間違った事が発生する事はない。

この点も<前編>にあるような日本のアマチュア・レクレーションのサンバ団体とは一線を画する。
半端な事、間違った事が起きない運営がされているのだ。

 

●【ポイントその4】

◎「そこから、社会一線で通用する・知られる人材が輩出されているか?」

この点においても、カポエイラ界は多数の優秀な人材を集め、育て、輩出する循環が出来ている。
優秀な人材がいる場所には優秀な人材が集まる。良い心が集まるところには良い心が集まるという現象だ。
 
▶カポエイラ・テンポといえば、まず須田竜太氏自身が、日本で数多くの番組・TVCF・作品に出演し、
ゲームや漫画のモデルとなっている。そして指導者たちの育成も順調に進んでいる。
有名タレントがカポエイラ・テンポに所属している事例もあるが、カポエイラ・テンポで心技体を育て、
社会で活躍している人も数多くいる。

▼ごく最近では10代の学生、カポエイラ・テンポの青帯の佐藤瑠生亮くんが
フィンスイミングで豊島区のスポーツ栄誉賞を受賞した。
https://ameblo.jp/ruiruiruiki/entry-12524661519.html

 
 

●【活躍するプロ人材の一例】

今回1人あげればと訊くと、カポエイラ・テンポの指導者の1人、笹森智之氏を紹介してくださった。
同氏はバンダイナムコスタジオのクリエイターでゲームデザイン(企画)を担当。作っているゲーム内容は
アクション系のゲーム開発が多く、「ソウルキャリバー」、「ポッ拳」、「鉄拳」、「スマブラ」などに
携わってきたそうだ。カポエイラを使うキャラクターのポーズなどのアドバイス・ムービーのポルトガル語の
チェックと仮アフレコ・モーションキャプチャのアクターや、アクロバットなどの知見を活かしたモーション
監督を務めているという。
 
▼その他「多数の実績」は詳しくは公式サイトやブログを是非覗いてみて欲しい。
https://capoeira.or.jp/
 

●【第1回のおわりに】

 
カポエイラを紹介するシリーズ【第一回】はここまで。
如何でしたでしょうか?長くてすみません! 
ぜひ、カポエイラ・テンポやお近くの各団体に体験しに行って下さい!
 
第2回は別流派・別団体のカポエイリスタをご紹介いたします!お楽しみに!

 
 

●【今回、指導者が参加した他団体】

 首都圏〜日本全国にカポエイラの各流派・各団体があります。
何はともあれ実際にお試しに行ってみてください!

○ アソシアサォン・ジ・カポエイラ・メストレ・ビンバ
https://www.capoeira-regional.net/
 
○ カポエイラ・バトゥーキ
https://www.capoeirabatuquejapao.com/
 
○ ゲト・カポエイラ
http://guetojp.com/
 
○ カポエイラ・メストレ・アラバマ
http://wwwcma-japaohachioji.blogspot.com/2015/03/blog-post.html
 
○ カポエイラ・アライエ
 
○ フィーリョス・ダ・テーハ
  http://www.filhos.net/
 
○ カポエイラ・センザーラ
 
○ ナゴアス・カポエイラ
http://www.nagoas-shizuoka.com/
 
○ カポエイラ・ナラハリ
https://www.capoeira-n.com/
 
○ カプー・ジャポン
http://www.capu.jp/
 
○ カポエイラ・ジェライス
http://capoeira.kyoto/
 
○ コハダン・ジ・コンタス
http://accc-jp.org/
 
○ ラゴア・ド・アバエテー
http://www.capoeira-west.com/
 
○ カポエイラ・ナチーヴァ
https://capoeiranativajapan.wixsite.com/nativa
 
○ モヴィメント・シンプレス
 
○ アヴェ・ブランカ

KTa☆brasil(ケイタブラジル)
KTa☆brasil(ケイタブラジル) https://keita-brasil.themedia.jp/    東京うまれ、神奈川育ち。日本、ブラジル、ポルトガル、スペインでの長年の現場活動と人間関係による一次情報と文化交流、語学力から・・・TBSスーパーサッカー、スポナビ、NIKE FOOTBALL、SONY FOOTBALL、JTB、excite公式ブログ、NHKテレビでスペイン語、MTV Japan、MUSIC ON! TV、J-WAVE、TOKYO FM・・・様々な現場とメディアでレポーター、MC、コラム寄稿、連載を歴任。Newsweek誌が「世界が尊敬する日本人100」に、UNIQLO初の世界同時展開広告「FROM TOKYO TO THE WORLD」に選出。F1GP・サッカー:コンフェデ杯/W杯・リオデジャネイロ五輪・パラリンピック、パリコレ、本場リオのカルナヴァル1部リーグ採点対象奏者他、世界各地で活躍するミュージシャン、MC、レポーター、サッカー関係者、公式打楽器指導者資格保持者。 ブラジル代表ユニフォームのマークでおなじみの“CBF”=ブラジルサッカー連盟による公式番組“CBF TV”が、“外国人でありながら“80年代前半以来、ブラジルの歴代サッカー選手やクラブチーム、サッカー界と長く深く関わる人生”を番組特集した(現在唯一の日本人)。南米リベルタドーレス杯番組や、CBFブラジル杯公式プロジェクトに招集されている。 ブラジルとのご縁は幼少より約35年。10代より両国を往復し続ける活動は2019年で23年目。ブラジル政府各省/リオ市観光局事業公式実績者。サンバ応援の本場:リオの名門クラブチームC.R.Vasco da Gamaの名物応援団サンバ打楽器隊員を経て、スタヂアム殿堂刻名の現上級会員。同クラブの様々な公式プロジェクトに招集され、東日本大震災発生時には南米で一番早く企画・実行された救援プロジェクトの一員でもある。 日本でもTV/FM/新聞/雑誌/WEBなどのメディアではサッカーをはじめスポーツや音楽を中心にブラジルや欧米ラテン諸国のプレゼンター・ライターとして活躍。Jリーグ、Fリーグの選手や関係者との関わりも深い。リオ五輪では日本政府のパビリオンJAPAN HOUSEでの音楽イベントを11本プロデユース。命名した共著書「リオデジャネイロという生き方」(双葉社)他、寄稿も数多い。


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