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東北アマチュア野球界に「球春到来」 社会人VS大学生の熱戦が春の風物詩に

社会人と大学生が東北の地でぶつかり合う春の恒例行事――。3月28、29日、仙台市民球場で第9回東北地区社会人・大学野球対抗戦が開催された。JABA東北地区連盟に加盟する6つの企業チームと仙台六大学野球連盟、北東北大学野球連盟、南東北大学野球連盟の2校ずつが参加。6試合行って社会人が5勝1分と圧倒した。

社会人1年目の注目選手が続々デビュー

社会人の新人選手が多くお披露目されるのがこの大会の醍醐味の一つ。今年も各チームが積極的にルーキーを起用した。

中でも鮮烈なデビューを果たしたのが、七十七銀行の最速151キロ右腕・丸山陽太投手(23=法政大)だ。東日本国際大戦の7回に登板すると、雄叫びを上げながら140キロ代中盤~後半の速球と鋭いスライダーを投げ込み、三者連続三振。持ち味を存分に発揮した。

千葉県立の成東高から1浪を経て一般入試で法政大に進学。2年秋に150キロの大台を突破し、早々に強豪企業チームから声がかかったが、その後右肘を痛めトミー・ジョン手術を余儀なくされた。進路が決まらず途方に暮れる中、手を差し伸べてくれたのが七十七銀行だった。

気迫溢れる投球で球場を沸かせた丸山

マウンド上での雄叫びについて聞くと、「本当は黙って投げたいのですが、(復帰後に)声を出しながら投げると肘が痛くないことに気づいて…」と笑った丸山。「怪我をしない投げ方を見つけつつ、球速は152、153キロと出して過去の自分を超えたい。変化球を増やして投球の幅も広げたい」と意欲をのぞかせた。

日本製紙石巻の川上巧巳外野手(23=筑波大)も旭川実高から1浪して大学に進んだ経歴を持つ。「頭を使った緻密な野球をする」印象のあった筑波大を志し、野球の練習や体作りと勉強を両立させて見事合格。大学では徐々に出場機会を増やし、4年秋には首位打者とベストナインを獲得してリーグ優勝に貢献した。

最大の武器は50m5秒8の俊足だ。今大会は八戸学院大戦に「9番・左翼」でスタメン出場し、3回に足を生かしたバント安打をマーク。「1死二塁の場面でセーフティバントは高校時代からの鉄板です」と胸を張る一本が、社会人での初安打となった。さらに、好機で打席に立った8回は快足を飛ばして逆方向への2点適時三塁打を放った。

バットと足で存在感を示した川上

阪神タイガースのドラフト3位ルーキーで開幕一軍に抜擢された岡城快生外野手は、筑波大の同期。ポジションが同じで打順も近かったことから「相棒」と認識していたという。切磋琢磨した相棒から刺激を受けている川上は「自分の現時点のレベルでは(プロは)見えていないのですが、2年後に狙えるくらいまで成長したいと思うようになりました」と意気込みを口にした。

新人に負けじと力の差を見せた社会人選手たち

2年目以降の選手も社会人の“技”をいかんなく発揮した。JR東日本東北の工藤波音内野手(23=駒澤大)は東北学院大戦で3番に座り、得点に絡む2安打をマーク。自身が「小技を使ったり、塁に出てかき乱したりするタイプの3番です」と話す通り、初回は犠打で好機を広げて先制につなげ、4回には盗塁を決めた。

ルーキーイヤーの昨年は二塁や三塁を守ったが、今年は大学以来の遊撃を任されている。守備面でも「どこであろうと守備範囲の広さや俊足を生かして違和感なく守れるよう練習しています」と頼もしい。

走攻守にわたって躍動した工藤

野球強豪校とは言えない青森県立の弘前南高出身で、指定校推薦で入学した駒澤大で成長を遂げた。JR東日本東北から真っ先に声がかかり、「正直、自分が社会人でプレーできるとは思っていなかった。地元の東北を盛り上げたい気持ちもある」と即決した。「1年目は先輩たちにがむしゃらについていって、たくさん経験をさせてもらった。今年はチームの中心選手になりたい」。2年目はさらなる飛躍を期す。

マルハン北日本カンパニーの強打者・柄澤壮太郎外野手(23=日本大)は、東北公益文科大戦で初回にソロ本塁打を放った。身長186cm、体重101kgの恵まれた体格から繰り出すフルスイングは大きな魅力だ。昨年は社会人投手への対応に苦戦したが、都市対抗東北二次予選では今大会と同じ仙台市民球場で本塁打を飛ばした。柄澤は「あそこで一本出たことが成長につながった。今日の一本も自信に変えたい」と充実した表情を浮かべる。

幼少期、地元球団である中日ドラゴンズの試合を観戦するうちにプロ野球への憧れを抱いた。夢を追って進学した日本大ではレギュラーの座を奪えず、4年春を前に野球を辞めようと考えていた矢先、館山昌平監督から誘いを受けた。

自慢の長打力をアピールした柄澤

「心が折れかけていましたが、ずっと野球をしてきたので夢を諦めきれませんでした」。希望を胸に選んだ社会人野球の道。ドラフト解禁の2年目は勝負の年になる。昨年9月に最新機器を揃えた室内練習場が完成したとあって、柄澤は「もう環境のせいにはできない。後は自分次第」と語気を強めた。

大学生投手が社会人打者を封じて得た「自信」

大学生も社会人相手に奮闘した。Bチームで臨んだ東北福祉大はトヨタ自動車東日本と対戦し、4-4で引き分け。大学で唯一黒星を免れた。立役者となったのが、先発して5回2失点と試合を作った右腕の清家準投手(2年=英明)だ。

140キロ前後の直球と4種類の変化球(カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ)を駆使し、4回までは0を連ねた。企業チームとの対戦は初めてで、「一巡目は抑えられても二巡目、三巡目からは相手の『三振しない』という徹底がすごかった。5回を投げ切れて自信になりました」と収穫を得た様子だった。

社会人相手に臆することなく投げ込んだ清家

英明高でエースナンバーを背負って甲子園のマウンドに立った清家は、「人として尊敬している」という兄・優一を追って東北福祉大に進学した。武器のカットボールを教えてくれたのも兄だった。目標はそんな兄の仲の良い大学同期である櫻井頼之介。中日ドラゴンズでルーキーながら早くも先発ローテーションに入っている右腕のような、全球種でストライクを取れる「ザ・エース」を理想に掲げる。

青森大はTDKに0-3で敗れたが、4年生5人によるリレーで投手力を見せつけた。中でも、2番手の斉藤主眞投手(4年=北星学園大付)は140キロ台後半の直球と多彩な変化球が冴え、2回無安打無失点とほぼ完璧な投球を披露した。

今オフは制球難克服のため、足の上げ方を変えるなど投球スタイルの変更に着手。この日は球が荒れることなく経験豊富なTDKの主力打者を封じ込み、「社会人相手にも十分通用すると分かったので、次につなげたい」と手応えをつかんだ。

3つ目の三振を奪い笑顔を浮かべる斉藤

以前はプロ志望も胸に秘めていたが、「右のオーバーで150キロ超を投げるピッチャーはたくさんいる。今の自分のレベルでは厳しい」と社会人経由でのプロ入りを目指す方向性に切り替えた。大卒でのプロ入りを狙う同期の小金井凌生投手(4年=日体大荏原)、木村駿介投手(4年=東奥義塾)には「『すごいな』と思いますが、ライバルなので絶対に負けたくない」。ラストイヤーに向け「激しい先発争いを制して、春秋通じて先発で投げ続けたい」と闘志を燃やした。

間もなく本格化するアマチュア野球シーズン。今年も東北の地で、熱戦の火蓋が切って落とされる。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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