Spportunity Special Presents 【第1回】「マニアック野球座談会」~野球博学の求道者が大集結!~
野球博学の求道者が大集結!
2018年12月某日。世界各国のブティックが並ぶ日本有数の繫華街「銀座」。ここで日本屈指の野球有識者が集まり、「マニアックな野球座談会」が開かれた。
野球博学の求道者3名、「アスリートの夢を本気で応援したい」スポチュニティスタッフ1名、やや読売贔屓な太鼓持ちスタッフ1名の計5名による「マニアックな野球座談会」。
座談会では、球団組織や移籍から見る海外と日本のスポーツビジネスの熟成度、応援や引退セレモニーから見る海外と日本の文化の違い、今話題の岩手大船渡高校の「大谷二世」など有望な若手選手について、優秀なGM・監督について、メジャーリーグの新潮流「オープナー」について、今年の各球団のドラフト指名選手について、ソフトバンク甲斐以上の強肩捕手について等々、マニアックな野球ファン垂涎の熱い議論が交わされた。
野球博学の求道者3名のご紹介
西尾典文(略称:西)
野球ライター。筑波大学大学院体育研究科卒(スポーツの動作解析専攻)。
愛知県生まれで大学まで選手としてプレー。アマチュア野球を中心に年間約300試合を観戦。取材の為に全国に足を運び、ほとんどのプロ野球選手のアマチュア時代を生で目撃。日本ハム吉田輝星を甲子園前から「高校№1投手」と推す等、百戦錬磨・スカウト顔負けの審美眼を持つ。
梶原駿(略称:梶)
株式会社ミクシィのスポーツ事業推進室にてスポーツマーケティングを担当。前職ではプロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグのリーグ事業統括としてスポンサーセールス、マーケティング、イベント運営、広報など幅広く担当。
現在もミクシィに所属しながら、BCリーグの他女子ソフトボールリーグ活性化のアドバイザー、東京都社会人サッカー2部に所属する「TOKYO CITY F.C.」の運営メンバーにも携わっている経験から、国内外のスポーツビジネスにおける経営やマーケティングを中心とした知見や深い洞察を持つ。また、プレイヤーとしても大学卒業まで野球に取り組む。
山本祐香(略称:山)
野球タレント、野球ライター。「楽しみまSHOW!野球女士」、「スワいち!(http://swa1.net )アシスタントMC」などで活躍中。
三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間120試合以上観戦し観戦記録をつける日々。最近の楽しみは、大学野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”。面白いのに日の当たりづらいリーグを太陽の下に引っ張り出すべく、世の中に向けて発信をしていく。
(注目コラム①:https://www.spportunity.com/column/114/column_detail/)
(注目コラム②:https://www.spportunity.com/column/115/column_detail/)
他スポチュニティスタッフ2名(A、B)
この5人のメンバーの座談会。話が熱を帯びてきた「球団組織や移籍から見る海外と日本のスポーツ熟成度の違い」についてからご覧いただきたい。
球団組織や移籍から見る海外と日本のスポーツビジネスの熟成度
(話はNPBの球団の話へ)
西:両方に所属した選手に聞いた話では、西武とDeNAでも体質は全然違うようです。西武は昔ながらで、DeNAの方がビジネスライク。
山:西武は選手の要望などが球団になかなか通りにくい…という話は聞いたことがあります。
梶:記事かなんかで清宮選手が、寮が汚いから西武は…と言ってましたよね。
一同:(笑)
西:多分直しますよね。今後かなり投資する予定のようですから。若獅子寮って、清原が入った前の年あたりにできたと聞いたので、もう30年も前ですね。
梶:梶:環境としては面白いのが西武ドームですね。所沢にありますが、西武ドームの横に2軍の球場があって、隣に室内や寮があるという環境です。一軍からファームまであるのは日本で西武だけですね。
新スタジアムの外周エリアの完成予想図(上図)/ 室内練習場、若獅子寮の完成予想図(下図)
(出典:埼玉西武ライオンズ公式HPより https://sp.seibulions.jp/dome_renewal/)
A:実は西武ドームって理想的なんじゃないですか?
梶:そうですね。ただ、西武ドームって夏暑くて春先は寒いんです。改修するようなんですが、今までそれができなかった背景にあるが親会社や株主の問題だと言われてます。今回株式再上場や株主構成の変更によって、「じゃあ投資できるよね」となったようです。
梶:球団を所有し売買するといったビジネスの話は、日本で興味関心のある人は少ないですよね。どうしても選手ばかり見てしまいますよね。だけど、よく話に上がる契約年俸など何億円もの金額なのに「どこからそのお金が出ているか?」、「支払っている球団社長が誰なのか?」とか殆どの人が知らないですよね。
梶:一方で、アメリカやヨーロッパでは、そういうのもファンに当たり前のように知られています。わかりやすいのが、NFLやMLBで優勝した時、誰に最初にインタビューするかと言ったら、オーナーなんですよ。オーナー、社長、GM、監督、選手みたいな順番です。言い方は良くないですが、選手はチームの駒の一つでしかない。逆に日本ではよくインタビューするのが監督、選手という順番。球団社長はあまり見かけないですよね。そういうとこから海外と日本のスポーツビジネスの文化は違います。
梶:サッカーの話になりますが、昨年プレミアリーグに所属するレスターの会長が乗っていたヘリが墜落し亡くなられた事故あがりました。その葬儀にチームが皆タイまで行ったんですよね。「チームは会長のおかげで存在している」。そういったマインドが日本人にはあまり無いので、選手からチームに対する不満がたまに出てしまったりします。
海外の場合、「だったら、お前はクビだ」と言われるのが普通なんです。だって競技をして、ファンサービスをしてはじめてお金を貰える人たちが、その仕事をしなかったなら“価値が無い”っていう世界なんです。そういう考え方は残念ながらまだあまり日本には無いですし、選手もそういう教育を受けているケースは少ないため、分からないんです。
梶:また移籍の話を例えば、一般の社会人の方が転職において、より良い環境や、良い給料求めて外資の企業に転職するのと同じような事なんですよね。だから、カープにいた丸選手が良い環境と良い給料を求めてジャイアンツに行くということは、本当は当たり前の世界なんです。同じように田中将大選手がヤンキースに行くのも当たり前の世界です。
常に現場に足を運び、チームをサポートし続ける熱心な姿勢が、選手やファンから愛されたヴィチャイ会長。この名物オーナーなくして奇跡の優勝は成し得なかった。2018年10月27日にヘリコプター墜落により事故死。 (出典:https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=49475)
山:サッカーの場合はどうですか?
梶:サッカーはよりドライじゃないですか。面白かった話として、日本では引退セレモニーとか結構するじゃないですか。セレモニーとかは、ヨーロッパの文化からすると非常にクレイジーだと言われてるそうで。なぜかと言うと、海外だとたった1日で移籍とかあるので。「一人の選手に肩入れする」みたいなのは、日本独自の文化かも知れませんね。
山:私がサッカーより野球が好きになる理由の一つに、サッカーは移籍がありすぎて新しい背番号を覚えたりするのが面倒くさい、というのがあります。今も(アマチュア野球の取材のために)プロ野球を見る機会が減って、移籍した選手の背番号とか新人の背番号を覚えるのがどんどん遅くなっていて、なんなら覚えないうちにいなくなっちゃう選手もいます。ただ、サッカーは本当にアレッという間に選手がいなくなっているんですよね。
西:ずっと同じチームに居る選手は、殆どいないですよね。
山:サッカーを見る機会が少ないので、次に見に行った時にはもうその選手がいないということがあります。例えば中島翔哉を初めて見て、すごいと思って応援しようと思ったのに気づいたら(東京ヴェルディから)いなくなっていて(笑)FC東京にいると思ったら、いつのまにかヨーロッパにいたりして。
西:今はポルトガルですよね。
山:「いつ私は今度、中島翔哉を見られるのか・・・」となりますよね。
応援や引退セレモニーから見る海外と日本の文化の違い
梶:日本のスポーツ観戦文化で面白いのが、パーソナルの応援をする傾向がありますよね。
一同:(うなずき)確かに。
梶:海外はチームを応援しているので、誤解を恐れずに言うと、選手個人よりクラブが優先です。そうしたマインドのため、セレモニーみたいなことはしないんですよね。自分のチームを勝たせてくれる選手には賞賛は送るけど、そうじゃない選手にはブーイングをするというシーンがあるじゃないですか。あれは「俺のチームをどうしてくれるんだ!」って気持ちから来ているんです。選手個人の応援じゃないんです。
梶:アメリカでは、地域で生まれ育って、基本的にはその地域から出ないじゃないですか。わざわざシアトルからニューヨークに出るような人は、あんまり居ないですよね。「俺はシアトルで生まれたから、シアトルのチームを応援する!」、それで「その時、頑張ってる選手だったら応援してやる!」って感じです。だから例えば、ベッカムがマンチェスターから出て行った時に、ほとんどのファンはベッカムの応援をしなくなったと聞きました。「俺らはマンチェスターの応援をしてるわけで、ベッカムを応援している訳じゃない」って。
西:例えば、巨人ファンもそれに近いかも知れませんね。例えば、小笠原やラミレスが来て勝ったとき時は喜びましたよね。
B:(巨人ファンとしては)そうですね、「よく来てくれた!」って感じでした。
一同:(笑)
西:そうですよね。ただ、昔から日本は育てて勝つという方が称賛されやすいですよね。
梶:ブランドコミットメントの考え方なんで、やっぱり文化が海外と違うんですよね。
A:どっちがいい悪いとかじゃないですよね。
梶:勿論そうですね。
西:文化の違いですよね。
梶:ビジネスよりにするとそういう形になるんですよね。
A:さっきの丸選手の話で、移籍するのは権利なんだから条件の良い所くのは当たり前で、そうした点は海外の文化の方が良いと思います。一方で、個人的にはさっきの引退セレモニーみたいな話は、あれはあれでなんか日本のすごく良いところではあるのなぁと思いますね。
引退セレモニーはファンから愛されていた証。しかし、これは日本独自の文化だった
B:引退セレモニーは、いちファンとしてはすごく面白いですよね。
山:そうですね。功労者を称えるみたいで。
A:あれは何か日本の良き文化みたいなところを感じるなぁと。ただ問題なのは、どの選手には引退セレモニーをやって、どの選手にはしないかという線引きをどうするかってのが難しいですよね。
梶:あれ気分らしいですよ(笑)
西:それは勿論それまでの貢献とかもあるでしょうね。
A:明確な線引きって無いですよね?
梶:タイミングにもよりますよね。
山:例えば、チームがクライマックスシリーズに行くと引退セレモニーができなかったりとかしますよね。
梶:例えば、本人が希望しなかったからやらないとかもあるそうです。
A:ぶっちゃけ球団的には引退セレモニーはやった方が、ちょっとお金が入ってくるからやりたいんでしょうかね?
梶:そうですね。色々準備するのが大変ですけど。
B:引退試合と言えば、(DeNAや巨人に居た)村田選手って、引退試合でなぜか重要な場面に遭遇してしまいますよね(笑)
西:村田選手は、なぜか結構そういう場面ありますね。
山:例えば、ホームラン打ったことありますよね。
西:矢野選手の出番無くしたとかとか。あれは本気でプレーして欲しい人にとっては、しっかりプレーして欲しいでしょうね。
山:鈴木健さんのファウルボールをわざと落としたこともありましたね。
B:あれは空気読みましたよね。
山:私は良いことだと思いましたが、批判もあったみたいで毎回大変だなと思いました。
B:なぜか村田のところへボールが行くんですよね。そういうのって(笑)
(次回に続く…)
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