• HOME
  • コラム
  • 野球
  • 東北福祉大の強打者・和田康平はドラフト見据え三塁挑戦中 決死の覚悟で大学ラストイヤーに臨む

東北福祉大の強打者・和田康平はドラフト見据え三塁挑戦中 決死の覚悟で大学ラストイヤーに臨む

 毎年のようにプロ野球選手を輩出している名門・東北福祉大。昨年のドラフトでは、甲斐生海外野手(ソフトバンク3位)、杉澤龍外野手(オリックス4位)の野手2名が支配下指名を受けた。今年の新4年生もポテンシャルの高い野手が複数おり、そのうちの一人である和田康平内野手(埼玉栄)は強いプロ志望を抱いている。  

 身長187センチ、体重95キロと恵まれた体格の右打者で、長打力はチーム屈指。3年次まではファースト一本だったが、今オフはドラフトを見据えサードの守備にも挑戦している。大学ラストイヤーに懸ける男の決意に迫った。

リーグ戦デビューもブレイクはならず…「気づけば最後の年に」

 昨年、強靭な体とパワーを持つ右のスラッガーがベールを脱いだ。秋の東北大1回戦でリーグ戦初安打となる左前への2点適時打を放つと、7番から5番に昇格した翌日の東北大2回戦でも適時内野安打をマーク。確かな一歩を踏み出したものの、飛び出した安打はこの2本にとどまった。

昨秋のリーグ戦で打席に立つ和田

 春秋合わせて15打数2安打、長打なし。リーグ戦の大一番である秋の仙台大戦2試合と、明治神宮大会の出場権を争う東北地区大学野球代表決定戦の東日本国際大戦は代打で起用されたが、いずれも外野フライに倒れた。本人は「全然ダメでした。リーグ戦の出だしでつまずいてスタメンに定着できないというのを繰り返して、気づけば最後の年になってしまった」と危機感を隠さない。  

 一方、オープン戦や紅白戦では150キロ前後の速球を持つ好投手相手にも結果を残しており、「当たらないし、前に飛ばなかった」という1、2年次からの成長は実感した。ラストイヤーこそは、リーグ戦や全国の舞台で「和田康平」の名を知らしめたい。

高校時代の恩師が落としたカミナリ…減量のち増量で不動の4番へ

 群馬県出身の和田は、父の影響で小学2年の頃に野球を始めた。当時から背が高く、小中は主に投手として活躍。その後、東北高、九州国際大付高を率いて甲子園に春夏計11回出場した名将・若生正廣監督の指導を受けるべく、埼玉栄高に進学した。  

 高校入学当初、若生監督にカミナリを落とされた。当時体重が100キロあり、「どうして絞ってこないんだ」と指摘されたのだ。和田は「食べるのが好きで、とにかく食べていた」という食生活を省み、ジュースや菓子など「3食」以外の間食を断つことで約3ヶ月で20キロの減量に成功した。

バットを手に笑顔を浮かべる和田

 すると今度は「痩せすぎだ」と叱られ、埼玉栄の強豪部活である相撲部の部員とともに食事を摂るなどし再び増量。88キロという「ベストな体重」にたどり着き、体のキレが出るようになってきた。

 中学3年次に肩を痛め、高校1年の夏に手術を経験したことから、復帰後は野手に専念した。すぐに頭角を現し、2年春の埼玉県大会で放ったバックスクリーン弾がきっかけで県内の注目選手として名前が挙がり始めると、2年夏からは4番に定着した。  

 高校通算本塁打は11本。好機で打ち、チームの勝利に貢献する場面は多々あったが、長距離打者としては物足りない数字だった。「ホームランが少なくて、プロの目に留まらなかった」と自己分析し、プロ志望届は出さず若生監督に勧められた東北福祉大に進むことを決めた。

長距離打者の先輩・甲斐生海から授かった金言

 大学入学直後、いきなり紅白戦などで4番を任されるも、打球が思うように伸びなかった。最大の武器である長打力を伸ばすため、再度体重を増やすことに。ウエイトトレーニングを中心とした増量で、脂肪ではなく筋肉量が増えたことから、体のキレを保ちつつパワーアップすることに成功した。

試合ではフルスイングで長打を狙う和田

 同タイプの先輩から吸収することも多かった。1学年上の甲斐生海はその一人だ。甲斐からは「練習では気持ちよく引っ張って打っても自己満足にしかならない。センターから逆方向に強い打球を飛ばすことを意識して、窮屈なかたちでも打てるようにした方がいい」との助言を受けた。  

 助言の通り打撃の試行錯誤に励む一方、試合では甲斐を真似て全球フルスイングを心がけている。練習では打撃の幅が広がるようあえて自分自身に厳しい課題を与え、試合では思いきり遠くに飛ばす。プロに進んだ長距離打者の姿を目に焼き付け、実践に移している。

“人生初”の三塁守備で汗、打撃では「圧倒的な数字」を求める

 2月上旬、東北福祉大の室内練習場を訪れると、サードの守備位置でノックを受け走り回る和田の姿があった。大塚光二前監督の提案で、新チームからは人生初のサード守備に挑戦中だ。「取ってから投げる動作が難しい。投げることを意識しすぎると取ることが疎かになってしまう」と苦戦中で、ひたすら練習に明け暮れる日々を送っている。  

 守備の重要性は大学で学んだ。高校生の頃まで抱いていた「体が大きい=打てるけど守備は疎か」とのイメージが、体の大きい先輩たちが打撃と同等に守備も磨いている事実を目の当たりにすることで、払拭されたのだ。守備力が向上し、さらに複数ポジションを守れるようになれば、選手としての可能性は大きく広がる。

大きな声を出しながら三塁の守備練習に取り組む和田

 ただ、最もアピールしたいのはやはり打撃だ。「自分は実績がないので、4年春は圧倒的な数字を残したい」と力を込める。目標は仙台六大学野球連盟のシーズン最多本塁打記録である8本塁打(1974年春、東北学院大・菅原清氏)を超えること。高校時代に数字でインパクトを与えることができなかったからこそ、高い目標値を設定している。

 「『和田が4番なら大丈夫だろう』と言われるくらいの選手になる」。今春、圧倒的な数字を残すためにも、まずは首脳陣の絶対的な信頼をつかみたい。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

関連記事