• HOME
  • コラム
  • その他
  • 天龍プロジェクト・グリーンハートチャリティフェス2026「プロレスを通して臓器移植への理解を深めてもらう」

天龍プロジェクト・グリーンハートチャリティフェス2026「プロレスを通して臓器移植への理解を深めてもらう」

天龍プロジェクト『グリーンハートチャリティフェス2026~プロレスと共に繋ぐ命の輪』(以下“グリーンハートフェス”)が、8月15日に東京・北沢タウンホールで開催された。「プロレスを通して命の大切さや支え合う心を伝える」イベントには、多くのレスラーや格闘家が駆けつけ大成功に終わった。

プロレスラーは命の価値を身を持って体感している職業だからこそ、伝えられるものがある。

~ジャンボ鶴田さんの生き様が与えたインパクト

4回目を迎えた“グリーンハートフェス”は、天龍プロジェクトとNPO法人日本移植支援協会がタッグを組んで行ったチャリティイベント。プロレスや空手の試合に加え、マット界のレジェンド達によるトークショーも行われ、大いに盛り上がった。

「命への思いがあれば炎は燃え上がる。人間は生きてこそ価値がある」(天龍源一郎氏)

「人間が生き続けるためには多くの方法があるので、そういう知識を少しずつでも増やすことが大事」(川田利明氏)

「医療の進歩は目覚ましくて大きな期待が持てるので、最後まで諦めないことが大事」(小橋建太氏)

レジェンドレスラー達が語る言葉には大きな説得力がある。

天龍、川田、小橋の3氏はイベント趣旨に深く賛同、「(全日本プロレスで共に汗を流した)ジャンボ鶴田さんの存在は大きい」と語る。

「鶴田自身が『行ける』と信じてフィリピンで手術を受けた。生きることに執念を燃やし、一縷(いちる)の望みを託した行動だったと思う。『人間は“その時”になると、可能性が少しでもあることに賭けるんだな』と思った」(天龍氏)

「(強さの象徴だった)あの鶴田さんが、そこまで深刻な状況だというのを当時は知らなかった。『人間が切羽詰まった際には、ワラをも掴みたい気持ちになるんだ』と思った。そういうことも時間が経った今だからこそ理解できる」(川田氏)

「自分も大病(腎臓癌)を患ってから、本当に多くのことを考えるようになった。若くて元気な頃は、鶴田さんの気持ちも想像できなかった。『人間は家族や周囲の支えてくれる人がいるから生きていける』ということも実感しています」(小橋氏)

鶴田さんはB型肝炎が悪化して肝臓癌を患い、2000年5月にフィリピンで受けた肝臓移植手術の最中に亡くなった。日本国内では法律の問題もあって臓器移植手術に制限があるため、海外へ行くしか方法がなかった。「鶴田さんの姿を見ていたから、移植支援の必要性を痛感している」とレジェンド達は口を揃える。

小橋建太氏(写真左)、川田利明氏(同中)、天龍源一郎氏(同右)。

~プロレスの枠内で可能なことをする

「『“グリーンハートフェス”をやるのは、天龍プロジェクトしかない』と思いました」と語るのは、同団体代表・嶋田紋奈氏だ。

プロレス界と日本移植支援協会を結びつけたのは鶴田さんだった。生前に『ジャンボ鶴田基金』を設立、移植患者へ向けたサポート活動を行っていたことで良好な関係性が構築されていた。

「鶴田さんが亡くなった後は、三沢光晴さん(プロレスリング・ノア)が移植支援等の活動をサポートしてくれていました。その三沢さんも亡くなられ、『天龍プロジェクトが引き継ぐべきでは』と思いました。天龍は鶴田さん、三沢さんの2人と共に生きてきた男ですから」

三沢さんが亡くなった後、天龍プロジェクトと日本移植支援協会が共に歩み始めた。“グリーンハートフェス”は、これまでに2022年5月7日に東京・北沢タウンホール、2023年6月17日に大阪・アゼリア大正ホール、そして2024年6月29日に横浜・ラジアントホールと3度行われた。「昨年は開催できなかったので、今回への思いは強いです」と嶋田代表は続ける。

「『プロレスの枠内で可能なことしかできない』のは理解しています。だからこそ“できること”は全てやって、少しでも日本移植支援協会さんの活動を広める手助けができればと思っています。そのためにもレスラー・関係者の誰もが、『グリーンハートフェスを行う理由』を理解して欲しい。参加者全員にイベントの意味・意義を長文メールで毎回送っています(笑)」

「プロレスには“受けの美学”があります。相手の攻撃を受ける、つまり自らの身体を痛めつける。いわば命の価値を身を持って体感している職業だと思います。そういう世界に生きているからこそ、移植支援活動に協力することが大事だと思います。また選手・関係者の各々が、改めて自らの仕事に“誇り”を持てるという相乗効果も生まれると信じています」

NPO法人日本移植支援協会理事長・高橋和子氏(写真左)と天龍プロジェクト代表・嶋田紋奈氏(同右)。

~ゴールはないので継続するしかない

「人間の腕は2本あります。だから、今日のイベントのことを知人2人に話してください」と来場客に語りかけたのは、日本移植支援協会理事長・高橋和子氏だ。

「鶴田さんとの縁がなければ、プロレス界との関係はなかったと思います。プロレスを観たこともなかったですから。関わって感じたのはレスラー・関係者はもちろん、ファンの方々が熱くて優しいということ。『本物の熱を見た』と思いました。その熱を、ほんの少しでも良いのでお借りして移植支援活動を広げさせてもらえればと思っています」

「我々だけで移植支援活動をやっていても限界があります。プロレス界の方々が協力してくれることで、ファンや関係者の方は興味を持ってくれる。レジェンドの方々が、『何かあった時に助かる可能性を生み出せる医療です』と語りかけてくれることで、認知度も広がります。影響力の強さを感じると共に、心から感謝しています」

同協会は1998年に有志が活動を始め、2000年にNPO法人に正式認証された。まもなく立ち上げから30年が経とうとしている中、「ゴールはなく、草の根的に地道に継続することしかありません」と付け加える。

「30年を迎えた時にはプロレス界・ファンへのお礼を込めて、多少大きいイベントを開催できればと思っています。日本武道館、もしくは両国国技館クラスで考えています。みんなが楽しみつつ、世間へ向けてメッセージを発信できれば嬉しい。もちろん、移植支援活動を多くの人に知ってもらうための通過点です」

ガールズボーカルグループ“JADE”は、美声で場内を魅了した。

~何があっても諦めず、命を繋げる

“グリーンハートフェス”第一部は、天龍氏、川田氏、小橋氏による“レジェンド・トークショー”の他、ガールズボーカルグループ“JADE”によるライブパフォーマンス。そして第二部は、男女プロレス団体による提供試合の他、フルコンタクト空手“OYAJI BATTLE 2026”も開催され場内は熱気に包まれた。

「様々な方が集まることで強い磁場ができていると感じます。“グリーンハートフェス”は『誰かが、何かしらの形で、誰かのために戦っている』という感じ。世の中には素晴らしいものがたくさんあって、それらが集まって掛け合わさることでパワーが生まれる。移植支援活動や生きる喜びに少しでも繋がっていけば嬉しいです」(嶋田代表)

「健康な身体と心がないと何も生み出せません。少しでもその手助けを、日本移植支援協会ができれば幸いです。医療も進歩しており、救える命も格段に増えています。『何があっても諦めず、命を繋げてもらいたい』という思いが伝わって欲しい。今後もプロレス界のパワーや元気をお借りしたいです」(高橋理事長)

プロレスに加え、フルコンタクト空手“OYAJI BATTLE 2026”も行われた。

プロレスが愛され、必要とされる理由がわかるようなイベントだった。己の身体1つでぶつかり合い、時に相手の技をしっかり受ける。プロレスには“命”や“人生”が凝縮されているからこそ必要とされるのだ。移植支援活動とプロレスの親和性が高いのにも納得できる。

「(父の)天龍はプロレス人生50年。戦い続ける姿からは、『継続することの重要性と困難』を教えてもらっている。どんな形でも良いので、“グリーンハートフェス”は続けないといけない。仮に天龍プロジェクトではない他の形になっても、継続していかないといけないと思います」(嶋田代表)

大会場でのビッグマッチも面白いが、“グリーンハートフェス”のようなチャリティイベントにもプロレスの素晴らしさは詰まっている。「生きる」ことの意味や素晴らしさを考えさせてくれる、素晴らしい大会(イベント)だった。まずは自分の周りにいる2人に、移植支援活動の意味・意義を少しだけ話したくなった。

(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:天龍プロジェクト、NPO法人日本移植支援協会、株式会社DEPARTURE)

関連記事