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松井大輔 フットサル挑戦。競技転向の決断を語る「サッカーの経験を活かしながら今後のヒントを得たい」

9月10日、元サッカー日本代表の松井大輔選手が「Y.S.C.C.横浜フットサル」に入団することが発表され、14日に記者会見が行われた。

昨年は横浜FCに在籍していたが、年末にサイゴンFCへ移籍。今年に入り、日本含む6カ国目となるベトナムでプレーしていた。

そんな中で、サッカー界そしてフットサル界を揺るがせた電撃発表。クラブから発表された前日9日、決断した新たな挑戦の真意を松井本人に伺った。2編にわたりその模様をお送りする。(以降、敬称略)

ロックダウンの最中、8月にオファー

新型コロナウイルス感染拡大の収束が見えない中迎えた2021年、松井大輔はベトナムの地にいた。18年から3シーズン在籍した横浜FCを離れ、新天地サイゴンFCでプレー。

コロナ禍で一度は中断しながらも3月下旬に再開し、順調に試合を消化していった。しかし、6月にベトナム国内で再度感染が拡大したためロックダウンとなってしまう。活動中断に伴い、松井も自宅から出れない生活が始まった。

いつリーグ戦が開始されるかも見えない中、状況が好転したらすぐに合流できるようにしなければならなかった。

自宅の中でのエクササイズそしてアパート内の非常階段を登り降りするのが当時できる精一杯のトレーニングだった。

ロックダウンから約2ヶ月となった8月初旬、松井の元にあるチームからオファーが届いた。

記者会見の5日前、インタビューに応じた松井

そのチームは「Y.S.C.C.横浜フットサル」。

競技の垣根を超えたフットサルチームからの入団オファーだった。Jリーグのチームからもオファーがある中、松井はフットサル挑戦を決断した。

「”遊び心”がフットサルでも掻き立てられる」

松井は小学3年からサッカーを始め、鹿児島実業高校卒業後に地元の京都パープルサンガ(現:京都サンガF.C)に入団。

その後フランス、ロシア、ブルガリア、ポーランド、ベトナムと海外5カ国を渡り歩き、日本代表としても04年のアテネ五輪・10年の南アフリカW杯を戦うなど、日本のトップ選手として世界の舞台で輝きを放って来た。

そんな中で来たフットサルチームへの入団を決めた理由は何だったのか。最初にオファーが来た時の心境をこう答えた。

「”面白いな”と思いました。ベトナムに行く時も『楽しそうだし、面白そうだし、いろいろな挑戦ができるな』と思い、行きました。自分にとっても違うものが見えてくる。今後のプラスになることをイメージして、”すごくいいな”と感じました」

ただ、松井は今年の5月で40歳。さらに芝生から体育館に、人数も11人から5人へ、ルールも異なる部分が多くあるなど、サッカーとは似て非なるもの。

競技を転向することになるが、そこについての抵抗はなかったのか。

松井は「不安はあります。今まで芝生の上でやってきましたし、35歳を超えるとたいてい膝・足・首腰に故障を持っているので」と、肉体的な不安を吐露しながらもこう続けた。

「ただ、そんなに(抵抗は)なかったですね。自分の性格として、面白いと思ったら突き進みたいタイプ。ドリブルもしたいし、”遊び心”がフットサルでも掻き立てられると思いました。どういうふうにしたら順応できるのか。これも挑戦だし、結果を残しながら楽しんでやりたいです」

チームに合流し、本格的に練習を開始している(クラブ提供)

続いてサッカーへの未練について質問があった際、「ずっと憧れ」と話すある選手とのやりとりを明かした。

「カズさん(三浦知良)にも、フットサル含めて考えている時に連絡したんですけども、『フットサルも面白い。サッカーに戻れる可能性もある。何が起こるかわからない。どこかでまた一緒にプレーできるかもしれないし』と言っていただきました」

松井と三浦は京都、そして昨年まで在籍していた横浜FCでともにプレーし、自主トレも長く共に行ってきた。

さらに、三浦は2012年にタイで行われたFIFAフットサルW杯日本代表に選出。フットサルを経験したからこそできた会話であった。

また、サッカーへの未練については以下のように語り、質問の最後を締めた。

「僕の場合は挑戦なので、深く考えていないです。コートのサイズが変わったのだと考えています」

培ったテクニックとコンビネーションを活用

松井のプレースタイルといえば高いテクニック。柔軟に身体を使ったドリブルで相手をかわし、時には華麗なヒールシュートでゴールを決めるなど、創造性あふれるプレーでサッカーファンを魅了してきた。

フットサルのコートは約20m×約40mとサッカーの約1/3、人数も5名ずつでプレーするため、1人がボールに触れる機会が多くなる。

なので、松井の持つテクニックがより発揮されるのではないかという期待が高い。また、己にも期待をしている。

「自分も楽しみです。フットサルでもテクニックを活かしながら、子どもの時に戻ったようなワクワクする感覚を得られるんじゃないかなとも思っています」

またフットサルについては、松井自身も「バスケやハンドボールなどと一緒でブロックやサインプレーで崩すイメージ」と語る通り、緻密さが必要な競技。

「攻撃でのコンビネーションはサッカーの経験を活かせるなと。(フットサルで攻撃する)3人の動き方は面白いです。コンビネーションでシュートまで持っていけますし、サインプレーもある。今後、サッカーもシステム的な時代が来るのではないかと感じているので、フットサルからも勉強していいヒントが見つかればこれからに活かせます」と語った。

持ち前のテクニックをフットサルでどう活かすか注目である(クラブ提供)

フットサルの戦い方をサッカーにも活かす。それはプレイヤーとしてだけではない。松井は将来、指導者にもなりたいと言う。その点においてもこれからの経験が役に立つのではないかと考えている。

「”どんなコンビネーションが使えるのか”を学ぶことができるし、それをサッカーに繋げられるためのヒントになる。アレンジして使うことで、攻撃のパターンを提供できたらと。

Jリーグでも攻撃のパターンで斬新なことをするのは外国人の監督が多いです。今後は日本人の監督でも色々なものを取り入れることで個性が生まれると思っています」

(取材 / 文:白石怜平)

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