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今、首都大学野球リーグが面白い! 開幕8連勝で優勝、日体大の野球とは!?(後編)

スタンドから投げ込まれた紙テープが舞う中、マウンドに立つ松本航投手の元へ駆け寄る選手たち。
突き上げた腕。指の先には高い空。

俺たちがナンバーワン。

首都大学野球秋季リーグでは、日本体育大学が開幕から8連勝し、3季ぶり23回目の優勝を決めました。春は優勝争いに絡みながらも、最終的には4位だった日体大。東海大戦を残しながらすでに優勝を決めた今季の強さの秘密はどこにあるのか、筆者が見たこの秋の日体大を綴ります。
 

優勝をかけた戦い

7連勝で迎えた10月1日の対武蔵大2回戦。エース本田健一郎投手(4年・日大鶴ヶ丘)を擁する武蔵大は、春の入替戦で2部より昇格、積極的なバッティングをするチームです。そんな武蔵大に、前日先勝した日体大。
 

この日の先発は松本航投手(3年・明石商)。初回、4人に対し3三振を奪う上々の立ち上がりを見せます。そして3回裏、1アウト1.2塁から4番エドポロ・ジョセフ選手(2年・日体大柏)が左中間へ適時2塁打を放ち、日体大が先制。優勝がかかった試合ということで、スタンドの応援団も試合開始前から感情の高ぶりが見て取れ、先制したときの盛り上がりはもう! しかし、4回表に武蔵大の松本一将選手(4年・日大鶴ヶ丘)の1点本塁打、5回表には山北泰輝選手(3年・雪谷)の犠飛で失点し、逆転を許してしまいます。
 

先発は松本航投手(3年・明石商)

 

エドポロ・ジョセフ選手(2年・日体大柏)のタイムリーツーベースで先制
 

2-1で迎えた6回裏。リードしていた武蔵大は、万全を期して継投に入りました。前日も先発し完投したエース、本田投手をマウンドへ送ります。しかし、ここで日体大に大きなチャンスが訪れます。先頭バッター船山選手の打球をショートがトンネルし出塁、ジョセフ選手が四球を選び、冨里優馬選手(4年・日体荏原)の犠打の処理をピッチャーが手間取り、ノーアウト満塁に。大木惇司選手(2年・東福岡)の中前適時打で同点としてから、さらに一気に攻めたてます。この回3安打2四球2敵失で、一挙5点と逆転に成功。
 

 

ノーアウト満塁で大木惇司選手(2年・東福岡)がバッターボックスへ、一塁ランナーは冨里優馬選手(4年・日体荏原)

その後1点を加え7-2で迎えた9回表、武蔵大の攻撃。ここを抑えれば3季ぶりの優勝が決まります。マウンドにはなおも松本航投手。気合いの入った投球で2者連続三振とします。

そして、いよいよ最後のバッター。高く上がった打球はこの回からレフトを守っていた知念佑哉選手(4年・沖縄尚学)のグローブに吸い込まれ、その瞬間日体大は首都大学野球リーグの頂点に立ちました!
 

開幕8連勝は1993年秋以来4度目、そして春季リーグ優勝はここ数年で何度もあるものの、秋季リーグを制覇したのは2004年秋以来13年ぶり。13年前は優勝すれば全国大会の「明治神宮野球大会」への出場が決定したのですが、翌年から関東5連盟代表が「明治神宮野球大会」出場2枠をかけてトーナメントで戦う、「関東地区大学野球大学野球選手権大会」が創設されました。日体大はこの大会で勝ち抜き、13年ぶりの「明治神宮野球大会」出場を目指すことになります。

この日、日体大の優勝を見ようとたくさんの人が訪れていましたが、その中のひとりが日体大野球部OBの竹内さんです。古城隆利監督の一学年上でプレーしていた竹内さん、当時を懐かしみながら後輩たちの頑張りを称えました。

「よくここまで頑張ってきた。チームとしては、タイブレークを制したり、サヨナラ勝ちをしたりと勝つべきところを勝っていい戦い方をしていた。監督も学生のころから真面目なヤツだったので、周りからの期待が大きい分、様々な葛藤もありストレスも多くて大変だったのではないか。春4位だったこともあり、「秋は絶対優勝するぞ」と学生、自分に言い聞かせながら頑張ってきたと思う」

 

古城隆利監督
 

 

また、竹内さんから見た注目選手も聞いてみました。

「やっぱり上西かな。打順も1番でキーマンだと思うし、オープン戦のときからよく打っていた。首都リーグのシーズン最多安打記録を持ち、アトランタ五輪で主将を務めた中村大伸さん(横浜商業→日体大→NTT東京)を彷彿とさせるアベレージヒッターだね」

8連勝で迎える最後のカード、東海大戦に向けても一言いただきました。

「残り2試合、全勝優勝をしてほしいとは思うけど、1ファンからすると勝敗よりも新しい力を試してほしいという気持ちもある。でも古城監督なら、やっぱり勝てるメンバーを揃えて全勝を狙ってくるかな(笑)」

残りの試合どんな戦い方をするのか、注目です。

そして、以前取材した際に「どうしたら選手、野球部の力になれるかいつも試行錯誤している」と話してくれた応援団長の難波大二郎さんにも、今の気持ちを聞いてみました。

「優勝できたのは本当に嬉しいことで、野球部の選手たちと応援してくれた野球部員の力があってこそだと思います。まだあと1週残っているので、ここで満足することなく、全勝優勝で関東大会に出場したいと思います」

今後に向けて意気込みをお願いします。

「我々が目指しているのは日本一なので、野球部を日本一に導けるような応援をこれからもしていきたいと思います!」
 

仲間への想いを乗せて

 

日体大野球部にとって、今回の優勝には強い思いがありました。今季開幕直前におたふくかぜを患った1年生部員の相曽幸宏さんが、髄膜炎を発症し9月25日に急死したのです。

その悲しみを胸に、迎えた武蔵大2連戦。「優勝してこのチームに所属したことを誇りに思ってほしかった」と、9回を投げぬいた松本航投手。「絶対勝ちを届けようと思った」と、古城監督。ベンチには相曽さんの写真を置き、共に戦いました。

悲しみを乗り越えてつかんだ勝利。リーグ優勝。
 

次に見る景色は、全国の頂。

そんな日体大が優勝を決めた10月1日の、試合から優勝の瞬間、優勝を祝うエッサッサまでをまとめた動画をご覧ください。

https://youtu.be/pvYlc0m4RT8
 

伝統の応援スタイル「エッサッサ」で優勝を祝う

今後、どんな野球を見せてくれるのか。日体大の快進撃に注目です。

前編はこちらから:http://3.112.198.14/?p=452

 

首都大学野球リーグの試合も残りわずか。首都大学野球連盟のHPで日程をチェックして、ぜひ球場へ足を運んでください。
http://tmubl.jp/

日本体育大学硬式野球部HP
http://nittaibaseball.com/

 

 

山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

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