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春の大学選手権で準優勝の上武大、進藤勇也主将を中心に秋こそ明治神宮大会で日本一を目指す

 春の第71回全日本大学野球選手権大会(以下、大学選手権)で準優勝した上武大が、第53回明治神宮野球大会(以下、明治神宮大会)への出場を決めた。「日本一」にあと一歩届かなかった悔しさを胸に、春に続きこの秋も関甲新学生野球リーグ戦で優勝。関東五連盟の上位2校、計10校で明治神宮大会出場2枠を争う横浜市長杯争奪第18回関東地区大学野球選手権大会(以下、関東大会)に出場し、8年ぶり5回目の優勝を果たした。 

 関東大会の常連で15回の出場回数を誇る上武大だが、明治神宮大会への出場を決めたのは意外にも6年ぶりだ。春の雪辱を果たすために、再び神宮球場の土を踏む。 

「2位ではなく1位で」6年ぶり9回目の明治神宮大会出場 

 最後の打者のバットが空を切ると、マウンドの新谷晴投手(4年・日本文理)は高々と両手を突き上げた。次々とナインが集まり、関東一となったことを喜び合った。 

 関東大会では、2位までに入れば明治神宮大会に出場できる。すでに前日、明治神宮大会への切符は手に入れていたが「しっかり明日勝って、優勝して神宮に乗り込もう」と主将の進藤(しんとう)勇也捕手(3年・筑陽学園)を中心に、心をひとつにして決勝に臨んだ。 

決勝で先発した1年生の山田

 国際武道大(千葉県大学野球連盟1位)との決勝戦、先発マウンドに上がったのは1年生の山田俊介投手(九州学院)だった。今大会、MVPに輝いた門叶(とがの)直己外野手(4年・瀬戸内)は 「先発が1年生の山田で(今大会)初登板というのもあったので、先輩の自分たちが点をとって安心させて、あいつ自身が自分のピッチングをできるようにと思いました」と、初回から安打を放ち、2回には先制の右犠飛を打った荒巻悠内野手(2年・祐誠)に続き、2点適時打で勝利を呼び寄せた。 

 山田は3回無失点でマウンドを降り、続く3人の投手がゼロを守り抜いた。谷口英規監督は「春の選手権の決勝で投げたときは、1アウトも取れないで交代したピッチャー。あれから成長をしていますね。バラつきはありますけど球の力はホンモノ。結果を残せたので神宮大会でもいいところで使ってみたいですね」と、山田の投球を評価した。 

日体大戦では初球をライトスタンドに運んだ門叶

 試合は10-0と快勝。明治神宮大会へと弾みをつけた。この試合でも活躍した門叶が初戦の日体大戦で打った2点本塁打、準決勝の中央学院大戦で打った左前適時打は、いずれも初球打ち。それが決勝打となった。門叶は「打てた打席は初球から振りにいっているので、その積極性が結果に繋がっていると思います」と話す。二番を打つ門叶だけではなく、打線全体が好調を維持している。明治神宮大会に向けて、指揮官はこう語った。 

「今年は(明治神宮大会で)勝ちたいですね。しかしながら、各地区の代表チームですからレベルは高くなると思います。バッターはこのままでいいですが、もう一度投手陣をしっかり調整して臨みたいと思います」 

 選手たちは、春の大学選手権決勝で味わった気持ちを忘れていない。「春に悔しい思いをして、みんな日本一をとるという気持ちは強くなったと思います。そのために秋ここまでやってきたので、メンバーがメンバー外の思いもくみ取って、絶対日本一になるんだという思いです」。そう、主将の進藤はまっすぐな目で話した。  

3年生の主将、進藤勇也捕手 

 進藤勇也が上武大の主将となったのは、今年の大学日本代表としての活動が終わった8月頃だった。3年生が主将になるのは異例のこと。「監督さんからの指名と、4年生の話し合いで決まりました。自分自身、4年生が納得してくれた方がやりやすいという気持ちもあったので、そこはしっかり話し合ってもらいました。いずれはキャプテンをやるという覚悟はあったので、それが少し早くなったという感じです」。 

主将として、キャッチャーとして、チームを引っ張る進藤

 協力的な4年生に助けられながら「本当にチームに必要である、絶対に欠けてはいけない存在になれるようやっていきたい」と覚悟を持って主将を務める。そんな進藤について谷口監督はこう話す。「キャプテンとして、4年生を使いながら全員を束ねています。いいところは4年生に譲って、汚れ役と言いますか、チームを締めるような嫌がられるところは自分がいく。進藤中心に、チームがまとまっています」。 

 進藤は、福岡県福岡市で小3からソフトボールを始めた。右投げ右打ちで捕手は小4から。中1からは、強豪硬式野球チームの糸島ボーイズでプレー。友人が2次まである厳しいセレクションを受けると聞き、自身も力試しで参加し合格した。筑陽学園高校では、3年時に春夏連続で甲子園に出場。上武大入学後は、1年秋からベンチ入りしていたが、全国区で注目されるようになったのは2年春の大学選手権だった。1.8秒台のセカンド送球は華があり、見る者を魅了した。 

 打撃においてもクリーンアップに定着し、大学では公式戦通算10本塁打(※1年春の関甲新リーグ戦は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止)。今大会は、初戦の日体大戦で二番手投手の初球を叩き、特大の2点本塁打を放った。ボールがバットに弾かれた瞬間の音は大学野球ではなかなか聞くことのない強さで、空高く上がった打球がゆっくりとレフトスタンド中段に落ちていく様子は圧巻だった。 

進藤はバッティングでも存在感を見せる

 3試合で13打数5安打 打率.385という成績を残し、本塁打以外にも、三塁打、二塁打と打った長打はいずれもライナー性の鋭い打球ではなく滞空時間の長い打球だったことが印象的だった。 

「バッティングで今意識しているのが、力を抜くことです。調子が悪いときはどうしてもガチガチになって、ボールが見えなくなってしまうので、力はゼロくらいの感じで打席に入っています。(バットをボールに入れる)角度までは意識していないのですが、バットがボールの下から入ってしまうとドライブ回転のかかった打球になってしまうので、上からボールを打ってスピンをかけるというのは練習のときから意識しています」 

 春の大学選手権では、最後の最後で亜細亜大の前に力尽きた。日本一になった亜細亜大から学んだことは「チーム力」だ。「個々でやる野球よりもチームでまとまって戦うことが大切で、決まり事をもう一度きっちりやっていこうと話しています。部員も200人近くと多いので、その200人の力がまとまり、繋がって、勢いがあれば、どこにも負けないだろうという自信は持っています」。進藤主将はそう力強く話した。 

日本一になって再び笑顔で集合写真を

 11月18日に開幕する明治神宮大会。上武大は、21日に九州共立大(九州三連盟代表)と名城大(北陸・東海三連盟代表)の勝者と初戦を戦う。今秋の関甲新リーグ戦では全勝で優勝を決め、関東大会でもトーナメント戦を3戦全勝。あと3勝すれば大学野球の頂点だ。より強固となった「チーム力」で日本一を目指す。 

好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。 面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

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