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仙台六大学野球春季リーグ戦がまもなく開幕 仙台大、東北福祉大、東北学院大の戦力をチェック~開幕直前展望(前編)

 4月8日、仙台六大学野球春季リーグ戦が開幕する。会場はすべて仙台市の東北福祉大野球場で、仙台大、東北福祉大、東北学院大、東北大、宮城教育大、東北工業大の6校が5月下旬まで熱戦を繰り広げる。今回は開幕を前に、6校の春の戦いを展望。前編では、新型コロナの影響で中止となった2020年春を除き6季連続でAクラス入り(3位以内)している仙台大、東北福祉大、東北学院大の注目ポイントを紹介する。

経験豊富な最上級生が投打の軸に(仙台大)

 昨秋のリーグ戦で全勝優勝を果たした仙台大は、同大初の2季連続優勝に挑む。鍵を握るのは投手陣。リーグ戦通算19勝をマークした絶対的エース・長久保滉成投手(現・NTT東日本)が卒業した直後とあって、先発投手の起用法に注目が集まる。ただ森本吉謙監督はオフ期間の取材時、「長久保の穴を埋める、という考え方はしていない」と話していた。それだけエースの座を狙えるレベルの投手が次々と育ってきているということだ。

 筆頭は高い奪三振能力と強靭なスタミナを持つ右腕・川和田悠太投手(4年=八千代松陰)。2年春から先発として結果を残しており、昨秋は自身初のベストナインに輝いた。仙台大の投手陣に「参考にしている投手」を尋ねると、川和田の名前が頻繁に挙がる。特に試合をつくる能力や野球と向き合う姿勢はチームメイトからも一目置かれている印象だ。今春も投手陣を牽引する存在となるだろう。

昨秋のリーグ戦で力投する川和田

 右では先発転向を視野にスタミナ強化に努めてきた武者倫太郎投手(3年=帝京)、新入生ながら早くも実戦でアピールしている佐藤幻瑛投手(1年=柏木農)らが台頭。左では1年次から明治神宮大会のマウンドを踏んだ渡邉一生投手(2年=日本航空/BBCスカイホークス)、樫本旺亮投手(2年=淡路三原)をはじめとした下級生に期待がかかる。また最上級生にはジャクソン海投手(4年=エピングボーイズ)、須崎雄大投手(4年=東海大市原望洋)ら経験豊富な実力者が名を連ねており、先発、中継ぎ問わず安定感のある投球を見せてくれるはずだ。

正捕手として攻守の要を担う坂口(右)

 野手は昨秋のレギュラー陣が多く残っており、主将の正遊撃手・辻本倫太郎内野手(4年=北海)、ベストナインに選出された坂口雅哉捕手(4年=八王子学園八王子)、三原力亞外野手(4年=聖光学院)は引き続き打線の中軸を担う。森本監督が打線の流れを考える上で重視する1、2、9番については、昨秋主に1、2番を打った川島優外野手(4年=山村学園)、平野裕亮外野手(3年=山村学園)を筆頭に、オープン戦で出場機会を得ている平川蓮内野手(2年=札幌国際情報)ら候補を挙げれば枚挙にいとまがない。昨秋同様、下位打線からでも得点できる打線を構築する。

強力先発陣と新クリーンアップに注目(東北福祉大)

 東北福祉大は昨秋、仙台大に連敗し優勝を逃した。ただ、実績と選手層の厚さはリーグ随一。今春は8年ぶりに監督復帰した山路哲生監督のもと、王座奪還を目指す。

 先発投手陣の中心を担うのは、最速152キロ右腕の後藤凌寿投手(4年=四日市商)。昨秋のリーグ戦では5試合に先発し、29回を投げ防御率0.00とブレイクを果たしたが、ドラフトを見据える大学ラストイヤーはさらなる飛躍を誓う。同じく最上級生の最速149キロ右腕・北畑玲央投手(4年=佐久長聖)も先発候補の一人。今オフは2年秋以降伸び悩んでいた球速が戻りつつあり、手応えを感じている一方、「日本一のピースになれればどこでもいい。任されたポジションでしっかり投げたい」とフル回転する覚悟で臨む。

開幕前最後のオープン戦で6回2失点と好投した北畑

 下級生では、昨年12月の自主トレ期間中に162キロを計測したことで話題となった堀越啓太投手(2年=花咲徳栄)の進化に注目。大学1年目は中継ぎ、抑えが主だったが、山路監督は「先発も抑えも両方できる投手にならなければいけない」と考えており、2年目は先発登板も見られるかもしれない。2年生は堀越以外にも、150キロ近い直球と多彩な変化球が光る櫻井頼之介投手(2年=聖カタリナ学園)やアンダースローの森優太投手(2年=八戸学院光星)が先発候補に浮上しており、今春はより一層、投手陣を引っ張る世代となる。

昨秋は2本塁打を放った竹中

 野手陣はプロに進んだ杉澤龍外野手(現・オリックス)、甲斐生海外野手(現・ソフトバンク)が抜けたが、打線の怖さは健在。リーグ戦通算7本塁打を誇る竹中研人内野手(4年=駒大苫小牧)、昨秋5番に座ることもあった和田康平内野手(4年=埼玉栄)はともに恵まれた体格を持つスラッガーで、クリーンアップ候補に挙がる。また野手は3年生が豊富で、すでに経験値を積んでいる山路将太郎外野手(3年=鶴岡東)、西村彰浩外野手(3年=聖望学園)、大内海斗内野手(3年=高川学園)らが重要な打順を任されることとなりそうだ。

元プロ新監督のもと21季ぶり歓喜へ(東北学院大)

 東北学院大は近年、優勝争いに絡めないシーズンが続いていたが、今春は同大OBで巨人、西武でプレーした星孝典氏を新監督に迎え、2012年秋以来の頂点を狙う。投打ともに昨年からリーグ戦で活躍している選手も多く、上位2校に土をつける可能性は十分にある。

 投手陣では、すでに先発のマウンドを何度も踏んでいる古谷龍之介投手(4年=北星学園大付)が最終学年を迎える。力のある直球とスライダーが武器で、昨秋は仙台大戦で8回3失点、東北福祉大戦で8回無失点と上位2校相手にも好投した。4年生は他にも野中大輔投手(4年=花巻東)、佐藤真敬投手(4年=仙台育英)、山田恵太投手(4年=湯沢)とポテンシャルの高い右投手が揃っており、最上級生を中心に試合をつくりたい。

昨秋はリーグ2位の11盗塁をマークし、3割を超える打率も残した石川原

 昨秋の仙台大戦、東北福祉大戦は投手陣の奮闘で接戦に持ち込んだものの、4試合で計4得点と打線が振るわず、白星には届かなかった。上位打線を打った猪俣俊介外野手(4年=健大高崎)、石川原太陽内野手(4年=東北)は俊足で、高い打率も残せる好打者。小林三邦内野手(3年=鶴岡東)、井上裕策内野手(3年=仙台南)は、昨秋ともに2年生ながらベストナインを受賞した。タレントは揃っているだけに、あとはどう噛み合わせるか。星監督の手腕に期待が高まる。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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