佐藤琢磨が慶応義塾大学で特別講義を開催。学生たちに伝えた『挑戦』することの大切さ
(出典:Sports Japan GATHER「佐藤琢磨が慶応義塾大学で特別講義を開催。学生たちに伝えた『挑戦』することの大切さ」2017年3月8日)
インディカードライバーの佐藤琢磨が、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで特別講義を行った。
テーマは『レースの世界からみた交通安全』。佐藤は、最高速度380キロが出るインディカーレースで戦っている。交通安全とは、一見かけ離れていそうだが“車を運転”するということでは共通しており、その中で大事なのは『シートベルト』だという。
「レースでは、衝突時の重力加速度が70Gを超える大きなクラッシュを何度も経験していますが、1度も骨折したことは無いです。その理由の1つがシートベルト。衝突したときに、体がマシンから放り出される可能性がありますが、シートベルトはそれを防ぎ守ってくれます。一般道で運転していても万が一ということが数多くあります。だから、サーキットでも一般道でも安全に走行するためには、シートベルトが必要です」
一般道での事故が、どれほど恐ろしいものなのかを説明しながら、海外で流れているコマーシャル(CM)を紹介。シートベルトをしていないとどうなるのか。走行中の時速5キロの差が、衝突時にどれ程の大きな違いを生むのかなど、もちろんフィクションだが、人を轢いてしまった場合などの生々しい凄惨な事故の現場を再現したものがいくつか流され、講義を聞いていた大学生の中には、目を覆う人もいた。
「背筋が凍るというか、ドキッとましたよね。日本のCMだと事故の怖さを伝える手段が中々ないけど、欧米では安全に対するCMがすごく多い。交通事故を起こすのは、こういう事なんだということが、分かってもらえたと思います」
学生時代1つの行動からチャンスを掴む
大学生の時にレーシングドライバーを目指した佐藤。挑戦することの大切さを話した
授業の最後には、佐藤がレーサーになったきっかけを話した。10歳の時に、F1グランプリを鈴鹿で初観戦したときに衝撃を受けたが、興味をもったところでレースを始めることはできなかった。
中高では、自転車にその情熱を捧げ、高校生の時にはインターハイに出場し優勝するなど、輝かしい成績を残した。大学に入ってからも自転車競技を続けていたが、あるとき鈴鹿サーキットでレーシングスクール生を募集しているということを知った。
説明会には70人が集結、その中から合格するのはわずか7人。幼少期から英才教育を受け、レース歴10年以上のキャリアをもった選手がほとんどという中で、佐藤はこの時、数カ月カートを経験した程度、合格することは不可能といっても過言ではない状況だった。しかし、1つの行動がきっかけとなり、見事、合格を手にすることができたのだ。
「説明会では、履歴書から書類審査するといわれました。しかし、それでは経歴も無く、年齢制限上限の自分に合格は困難だと判断。質疑応答の場で『1分でもいいから話を聞いてほしい』と嘆願し、運営側が協議した結果、希望者は全員面接できることになったんです。そこで「レーシングドライバーになりたい」という意志が通じ、合格することができました。挑戦してアクションを起こすから道が開ける、それが僕の原点です。好きなことあればとことん挑戦してほしいし、一生懸命に続けていれば、見てくれている人は必ずいる。今日はみんなに「NO ATTACK NO CHANCE」という言葉を贈りたい。これから、社会に出ていくにあたって、何事にも『失敗を恐れないで挑戦してもらいたい』。夢や目標に向かって頑張って下さい」
4年間所属したAJフォイトを離れ、アンドレッティ・オートスポーツへの移籍が決定した佐藤。2017年のインディカーシリーズは、3月12日セントピーターズバーグ・グランプリから開幕し、全17レースを戦う。講義を受けた学生たちも彼の新たな挑戦を見て、1歩踏み出す勇気を持ってくれるだろう。
※データは2017年3月8日時点
記事提供:アスリートのための、応援メディア Sport Japan GATHER
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