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「『日本一?何を言ってるんだ?』と言われても諦めない」アメフト・アサヒ飲料クラブチャレンジャーズの2023年

アメフトXリーグ・アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ(以下チャレンジャーズ)が掲げた目標は「日本一」。

X1SUPER(=1部)昇格2年目、頂点までは長い道のりだが一歩ずつ歩む決意を固めている。

3月4日の今季始動日、全選手、スタッフに対して発表された目標は明確だった。

日本アメフト界は、2年連続日本一の富士通、パナソニック、オービックの3強時代。企業やオーナー所有形態のチームで予算規模も大きく、チャレンジャーズのようなクラブチームにとっては並大抵の相手ではない。しかし敢えて高い目標を掲げ、強者たちに挑むことにした。

チャレンジャーズのチーム規模は決して大きくないが、「絶対にやれる」と信じている。

~自己満足のためのアメフトではない(キャプテン・亀山暉)

X1SUPER復帰を果たした昨年からキャプテンを務めるのがWR亀山暉(あきら)。3強との対戦はいずれも大差で敗れたものの手応えは掴んでおり、日本一は無理物語ではないと信じている。

(2022年はレギュラーシーズンで富士通に7対40、オービックに17対35、ライスボウル・トーナメントでパナソニックに28対38で敗戦)

「昨年は3強には結果的に大差で負けました。しかし『あと数プレー成功したら、向こうが失敗したら』という試合だった。勝てそうで勝てなかった。そういった部分が結果的に大きな差となっているので、埋める努力をしたいです。だからこそ日本一を掲げてしっかり追い込んでいきます」

「日本一になるという気持ちと取り組みが重要です。今は絵に描いた餅かもしれません。半信半疑の選手、スタッフもいるはず。『何を言ってるんだ?』と言われてもしょうがないです。でも本気で取り組めば可能性はある。実際にフィールド上で肌を合わせてみて、できないことはないと思いました」

「『絶対日本一になる、勝つんや』という気持ちが必要。普段からそうじゃないと試合でも自分を信じきれないと思います。そのためには『試合や練習でうまくいったプレーが3強相手にも同じようにできるか?』を考え続ける。常に競合チームを意識して上のレベルを目指す。自己満足でアメフトをしているわけではないですから」

キャプテン2年目の亀山暉は「自己満足のためのアメフト」を許さない。

~チャレンジャーズでプレーする意味を持たせる(事務局長・桂雄史郎氏)

チーム運営全般を任される事務局長・桂雄史郎氏は、2000-01年に社会人連覇した時のQB(00年は日本一)。その後のチームが下降線を辿ってきた姿も見てきた男は、現状を誰よりも理解している。

「環境は全く異なります。日本一当時は、選手は関西在住者がほとんどでした。最近は大手企業の本社が東京に多いので、就職後は東京へ行く人も多い。本人の人生設計もある中、関西のチャレンジャーズでやる理由、やりがいを提示しないといけません」

他チームにはプロ契約選手がいるチームもある。勝利した際にはオーナーのポケットマネーで勝利報酬を与えたり、旅行をプレゼントしたりする場合もあるという。

「外国人選手以外はプロ選手ではないので報酬や勝利給はありません。しかし関西以外から通っている選手たちの交通費は負担します。交通費部分は経費ではなく人件費です。現状では全予算の30%くらいがかかっていますが、人を集めるためには大事な部分です」

「最終的にはチャレンジャーズでやる明確な理由がないと、続かないし良いチームもできない。だから選手たちが自主的にミーティングをして、自分たちで話し合って決めた日本一の目標が心強いです」

事務局長・桂雄史郎氏は「チャレンジャーズでプレーすることでのやりがい」を重要視する。

~チャレンジャーズの得意技を作る(代表兼GM・鍜次茂氏)

チーム方針を決定してリクルート面での決定権を持つのがチーム代表兼GMの鍜次茂氏。「大きく選手が入れ替わった今季は故障者も多く厳しい状況」と認めつつも、今後へ向けては大きな希望があると語る。

「昨年から27名いなくなりましたが、これは今までの最高数。チームが大幅に変わるのは間違いないが、新しく作り上げることができる部分では楽しみです。選手がクラブ理念として日本一を掲げてくれたので、本気で目指す仲間を増やすことが大事。まずはチームの基礎力を増やすことを考えています」

「現場としては即戦力が欲しい。しかし目先の1勝だけを考えていては日本一など難しい。中長期のスパンも大事にして本気の選手を揃えたい。ハートというかモノの考え方が大事。しっかり仕事をしながらフットボールも成長する、という意欲が強い選手を集めたい。面談をしっかりして選んでいます」

9月のリーグ戦開幕へ向けてチーム状況を把握することを重要視する。補強ポイントを明確にして新戦力獲得にも動きつつ、魅力的なチーム作りを心掛ける。

「春の時点では良い点、悪い点が多々出てくる。冷静に分析して秋のシーズン開幕までに修正と積み上げが必要。その間に外国人を含めた補強も必要です。今後に向けてチームとしての得意技、チャレンジャーズ・カラーを作りたい。戦い方が明確になることで、見ている人へも魅力を発信できるはずです」

代表兼GM・鍜次茂氏はチャレンジャーズ・カラーの構築を目指す。

~最後まで戦い抜くことがチームカラー(ヘッドコーチ・正重高志)

素材となる選手を料理するのがヘッドコーチの正重(しょうじゅう)高志。関西学院大時代から主にQBとしてプレー、現役引退後はW杯韓国代表コーチを務めるなど豊富な経験を誇る百戦錬磨の指揮官だ。

「日本一を掲げましたが取り組み方は変わりません。昨年までは一戦必勝を目指していましたが、明確な目標設定がなくて中途半端になってしまった反省がありました。富士通、パナソニック、オービックの3強を倒して日本一になる。そのためには中途半端な取り組み方では絶対にダメなことは一目瞭然です」

春段階ではチームを新しく作り上げている最中で、今まで以上に細部への確認作業も必要になっている。しかしベースとして普遍であり、より重要度が増しているのが「最後までやり抜く」ということだ。

「戦術面は変化も出てきますが、フィジカル面での踏ん張りは変わりません。4Q最後まで自分たちの力を出し切れる強さです。後半になったらバテている、力が出せないでは話にならない。強豪チームはそういった部分を見逃してくれません。最後まで戦い抜くことをチームとしてやりきる。これがチャレンジャーズのチームカラーになるかもしれません」

ヘッドコーチ・正重高志は「最後まで戦い抜く」ことを最重要視する。

~やり切ることで日本一の可能性がある(キャプテン・川淵将紀)

RB川淵将紀は今季から亀山と共にキャプテンの重責を担う。熱いハートを持つ男は思ったことを明確に口に出し、チームを鼓舞し続ける。「一発勝負の積み重ねであるXリーグでは日本一は不可能ではない」と信じている。

「『日本一が叶うか?』は自分ではコントロールできない。でもそのための準備をしておけば、可能性はゼロではない。準備に関しては自分をコントロールすればできます。3強が強いのはわかりきっていることで、勝とうと思ったら並大抵では無理。覚悟を決めて『やると決めたことはやり切る』ことが重要です」

「冷静に考えて全勝しての日本一は無理だと思います。でもXリーグは一発勝負のトーナメント要素が強い。レギュラーシーズンを通じて成長して、勢いに乗った状態でライスボウル・トーナメントへ挑めばチャンスはある。普段からチーム全員がやり切る能力をつけておけば、勝負時にチームが1つになってガッと行けるはずです」

「チームが強くなるのはもちろん、人間、社会人としても高い目標をやり切る人になれるはずです。何となくアメフトだけしていても意味がないと思います。せっかくチャレンジャーズでプレーするのならば、そこまでを求めたい。個人的にもそうですがチーム全員がその思いを共有して戦っていきたいです」

新キャプテン・川淵将紀はチームと人間、両方での成長を目指す。

「日本一」が簡単でないことは理解している。しかしフロント、現場ともに気後れすることなく明確な目標として設定している。やるべきことは山ほどあるが、1つずつクリアすることで次の世界が広がることを信じている。

「常に4Qまでもつれ込むようなゲームになるはず。1つずつ競い勝って行くことで実力を高めるしかない」(川淵)

最終クォーターでの接戦がアメフトの醍醐味。そこを粘り強く戦い、勝利を挙げることが見ている人を興奮させる。

戦う前から負けることを考える者はいない。「日本一」は挑戦者たちの壮大なる決意表明だ。前進しか考えない、チャレンジャーズの有言実行に期待せずにはいられない。チームと競技の魅力を高め、頂点を目指す。

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ)

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