「最後のプロモーター」はフクシマニア横浜武道館大会を目指す

「ランズエンド・FUKUSHIMANIA」(以下フクシマニア)の横浜・ラジアントホール大会が6月6日に開催された。

プロレス、福祉、競馬を組み合わせた異色の大会。大会主催者の株式会社エフジー代表取締役・福島崇志氏の情熱に引き寄せられるように、多くの人々が賛同、協力して成り立っている。

「フクシマニアは、大会収益を福祉に還元したいということから命名しました。僕の名前と重なる部分もあるので、恥ずかしいことはできないという思いも強い。前進、成長させることで、小さなことでも何かができればと思います」(福島氏)

文字通りフルハウス、300人以上のお客さんで埋まった場内は大変な盛り上がりだった。

~プロレスを観るきっかけを作りたい

フクシマニアは神奈川を拠点にイベント企画やIT関連事業を行う株式会社エフジー(以下エフジー)が主催。ランズエンドプロレスリング(以下ランズエンド)とタッグを組み、2016年6月6日の横浜大会から始まった。コロナ禍もあったため、関東地方では2019年6月6日の横浜大会以来となる。

「第1回は会社設立5周年の記念でやりました。子供の頃に漫画・キン肉マンにハマり、天龍源一郎さんがいた頃の全日本プロレスが大好きだった。横浜文化体育館(現横浜武道館)には何度も行きました。大会開催はずっとやりたいと思っていました」

「僕の人生、生活には常にプロレスがあります。学生時代は空手をやっていましたが、大会時にはバッグに週刊プロレスが入っていました。試合前に気持ちを高めることができた。プロレスに関われることが何より嬉しいし誇りです」

プロレス・ファンになった頃からは状況も変化した。大手メジャー団体でもテレビ地上波での中継はなくなり、大箱会場を使用したビッグマッチは激減。昨今のZ世代の中にはプロレスの存在を知らない人も多いと言われる。

「僕らの世代はプロレスが身近にあった。今はファン向けの配信放送等は増えたが、一般の人には届いていない。大会を開催することで、観に行くきっかけを作りたかった。(プロレスを)初めて観た時に面白いと感じて好きになって欲しいです」

「フクシマニア来場者の多くはプロレス観戦未経験者でした。でも1 度足を運ぶと面白さを理解してもらえて、口コミで広がリ始めました。第1回はチケット販売に苦労しましたが、以降はリピーターも増え観客動員が伸びています」

大会主催者である株式会社エフジー代表取締役・福島崇志氏の情熱が大会を素晴らしいものにする。

~準備万端で横浜へ帰還

コロナ禍も重なり関東地区での再開催までには時間を要した。その間には沖縄大会を行うなど、地道にファンや支援者を増やしていった。2017年5月17日、2021年2月17日の平仲ボクシングスクール、2022年6月22日の那覇市ぶんかテンブス館の3大会は大盛況だった。

「本当に感謝していますし人の縁を感じました。最初は元世界ジュニアウェルター級王者・平仲明伸会長のボクシングスクールで行った。会長の奥様が学生時代の空手部の先輩。『沖縄でやりたい』と話したら、『うちでやる?』とトントン拍子で決まりました」

「沖縄で準備をして横浜へ帰ってきた感じです。その間に応援してくれる人もどんどん増えました。今回も大会1週間前にはチケット完売、当日に立ち見を数席しか出せない程の盛況。100万円のVIPシートを購入して頂いた方もいらっしゃいました」

福島氏は全選手、スタッフに感謝の言葉を述べていた。

~フクシマニアの可能性に100万円

100万円のVIPシートを購入したのは、VENTURA株式会社の代表取締役・福本光司氏。イベント企画・運営等を手掛ける実業家は、フクシマニアに大きな可能性を感じたという。

「現在35歳なのでプロレス人気は高くない世代。おばあちゃんがプロレス好きだったので子供の頃からテレビでは見ていましたが、特別なファンというわけではなかった。福島社長とはビジネス関係で知り合い、フクシマニアの話を聞いて客観的に可能性を感じました。100万円は安い金額ではないので、お付き合いだけで購入したわけではありません」

「コンテンツとしてわかりやすくて面白いことをやっている。会場へ足を運べば、面白さ、楽しさ、激しさが必ず伝わると確信しました。マーケットが広がる可能性は大きいので、その時に何らかの形でリターンが戻ってくれば。数年後を考えてVIPシートを購入しました」

100万円のVIPシートを購入したVENTURA株式会社の代表取締役・福本光司氏は、タイトル戦プレゼンターを務めた。

~未来に何かを残すために動く

フクシマニアでプロレスを行うのは、崔領二が代表を務めるランズエンド。世界遺産、国宝プロレスを開催するなど、従来の枠にとらわれない自由な発想が有名な団体だ。

「(福島氏とは)プロレスが心底好きな者同士で考え方が一致した。プロレス人気は右肩下がり、世間的にも明るい話題が少ない。そんな時代だからこそ何かできないか?利益は後で考えれば良いので、まずは動こうとなった」

2015年に知人の紹介で知り合って食事をする仲になった。「何のためにプロレス大会を行うのか?」を話し合った末、福祉に還元することで考えが一致した。

「世界中で埋もれているレスラーを呼びたい。イキの良い海外のレスラーが参戦することで、大会が活気付きます。エフジーさんはイベントのノウハウや人材をお持ちなので、大会運営が円滑化します。お互いがタッグを組むことで良いことしかありません」

「大会収益を福祉に還元しようという意見も一致しました。大会を数多く行い利益を出すのもビジネス的には素晴らしい。でもそれだけでは後に残るものがない。未来のために少しでも何かを残したい。そこの部分のベクトルが福島氏と同じでした」

ランズエンドプロレスリング代表・崔領二はプロレスへの思いを福島氏と共有している。

~プロレスと福祉と競馬

フクシマニアは「プロレスを通じて福祉への還元」が大きなテーマだ。大会前には会場周辺の老人ホームや放課後デイサービスを訪れるなど交流を欠かさない。

「時間の許す限り崔さんと共に慰問訪問をします。また皆さんを大会へ招待してプロレスを楽しんでもらっています。福祉というと色々な意見もありますが、まずは動くことが大事。『やらない善よりやる偽善』です。プロレスを通じて何かが伝わればと思います」

福祉と共にもう1つのウリは、大会と同名の競走馬フクシマニアを保有していること。2022年9月22日に大井競馬場所属の競走馬登録、同11月18日の大井競馬場第3レース新馬戦でデビューを果たした。惜しくも結果は出せなかったが、5月22日の東京ダービートライアルでも走ったばかりだった。

「浪漫の部分があります。競馬が好きで馬主になりたかった中で縁がありました。名前には様々な案がありましたが、大会と直結させたいということでフクシマニアにしました。競馬媒体に加えプロレス媒体も取り上げてくれるので、知名度が高まっています。大会のマスコット的な存在、業界関係なく注目して欲しいです」

~プロモーターとして選ばれし人間

4年ぶりの横浜大会は掛け値なしの超満員札止め。笑いに包まれる楽しい試合もあれば、力道山時代から存在するオールアジアヘビー級王座決定戦もあった。大会を通じて誰もが楽しめる素晴らしいパッケージだった。

「来た人が心から楽しんでリピーターになってもらうことが大事。観客動員が増えつつある今だからこそ、人との繋がりを大事にして謙虚に進みたいと思います」

プロレス人気の低下や時代の変化もあり、大会を手掛けるプロモーター自体が激減しているという。福島氏のような存在は貴重であり、業界の未来を担っていると言っても良いだろう。

「プロレスが大好きで世間に何かを残したい。しっかりとしたビジョンがあり、ビジネス的なセンスや体力もある。まさにプロモーターとして選ばれし人間と言えます。プロレスに携わる人間として感謝しかないです」(崔領二)

「プロレスを通じて何かを残したい」と語るその先には、横浜武道館大会開催という夢がある。

プロレスの力を誰よりも信じている福島氏だからこそ、進むべき道ははっきりしている。

「大会が大きくなれば福祉への還元を増やすことができる。世界的に見ても戦争など、暗い話題が多い。プロレスを通じて少しでも明るい世の中になり笑顔の人が増えれば。キレイごとと言われるかもしれないが、プロレスにはそれだけの力がある」

「関西の有名プロモーターさんとお会いした時に、『最後のプロモーターだな』と言われた。恐縮したのと同時に責任感を感じました。フクシマニアをもっと面白くして、みんなにとって大事な大会にして行きたいです」

「今後3年くらいで横浜武道館でやりたいです」と最後に力強く語ってくれた言葉に説得力を感じた。大会が終わり家路につく観客の笑顔がそれを証明しているようだった。

(取材・文/山岡則夫 取材協力・写真提供/LAND’S END プロレスリング、株式会社エフジー)

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