大分トリニータの挑戦!クラブ強化につながる環境改善を~梅崎&町田選手に聞く~
2023年、大分トリニータは「今年こそ」の思いでJ1復帰を目指すとともに、課題のひとつであった施設の環境改善にも取り組む。
特にクラブハウスは全体的に狭く、老朽化も進んでいることから、選手から改善を求める声があがっていた。
しかしながら、クラブハウスやレゾナックドーム大分のある「大分スポーツ公園」は、国から認可を受けている都市公園。民間企業の大分トリニータが、その中に単独で新しい施設を建てたり、既存の施設を増改築したりすることができないため、これまでなかなか改善を進められずにいた。
それでも今回この難題に取り組むのは、選手や現場スタッフの環境を整えることで、クラブ強化につなげたいと考えているからだ。
制度の範囲内で必要なスペースを確保するにはどうしたらよいか。そこで打ち出されたのがトレーラーハウスの設置。この案には公的団体の大分県サッカー協会と大分県も前向きで、トリニータとしてもぜひ実現させたいプロジェクトとなる。
今回は、クラブハウスの現状と、環境改善されることでどんな効果が生まれるのかについて、梅崎司選手と町田也真人選手にお話をうかがった。
ウォーミングアップのスペースを毎回探している現状
――クラブハウスについては、以前から改善の声が上がっているとお聞きしました。現状について、率直なところを聞かせてもらえますか。
町田選手「そうですね、まずクラブハウスがあること自体、ありがたいと感じる選手もいます。Jリーグでも、クラブハウスがないところもありますので。ただ、ビッグクラブから移籍してきた選手だと、落差に驚くこともあります」
梅崎選手「全体的に狭く、なんとか動線を作ってはいますが、もう少し広ければ、必要な道具やモノを置くスペースができると思います。あと、トレーニングルームがクラブハウスから少し離れているんです」
――具体的には、どのような状態になれば選手としてありがたいと思いますか。
町田選手「みんなが集まって、しっかりアップできるような広い場所があればと思います。今はみんながバラバラでやっている状態ですので」
梅崎選手「ウォーミングアップをするときは、各自でスペースを探してますね。空いているところがあれば、ここでやろうかなという感じで。そのスペースを見つけるのもなかなか大変です」
――みんなでまとまってウォーミングアップができると、選手にとってどのような利点がありますか。
町田選手「たとえば若い選手が、先輩たちがどんなふうに準備しているのかを見られる。練習前の準備はすごく大事で、僕も先輩たちのやり方を見て育ってきました。他の選手を見ているだけで勉強になることもあり、自分もやらなきゃと思えます」
梅崎選手「みんなでできるスペースがあれば、コミュニケーションの場にもなります。でも今のような、空いているスペースで散り散りにやっていると、そういう機会もなくなってしまい、本当にもったいないと思います」
町田選手「トリニータがこれからもっと上を目指していくために、環境面の整備もしていけたらいいな、とすごく思いますね」
施設を充実させることは将来を担う世代にも好影響
――先ほど「クラブハウスとトレーニングルームが離れている」とおっしゃっていましたが、近くにあるとどんな効果があるのでしょうか。
町田選手「アップ中に『ちょっとこの部分だけ筋トレしたいな』と思うときがあるんですが、近くに筋トレの場所があればすぐできます。トレーニングルームが広ければ、筋トレの器具を周りに配置して、真ん中にできたスペースでストレッチとかができるんですよね。
あと、誰かが筋トレしているのが目に入ったら、刺激を受けて自分もやろうと思う選手もいるかもしれない。そういう相乗効果も生まれると思います」
梅崎選手「離れているとはいっても1~2分ぐらいの距離なんです。それでも、クラブハウスにいるときに、ちょっと筋トレ行きたいなと思った場合、たとえばクラブハウスでトレーナーからケアを受ける順番を待つときも、トレーニングルームがすぐそばにあれば、待っている間に筋トレとかをすることができます。両方の施設がつながっていれば、それだけでもすごく便利になると思います」
――梅崎選手はトリニータアカデミーのご出身ですが、クラブハウスは当時と比べて変わったのでしょうか。
梅崎選手「僕がアカデミーにいたころは、クラブハウスはまだなかったんです。今はグラウンドも人工芝ですし、トップチームとの練習参加の機会も増えて、そういう意味では、昔より環境は良くなってますね」
――クラブハウスも含めた環境を整えることで、アカデミーの選手たちにはどんな好影響があると思いますか。
梅崎選手「トップチームの施設が充実していれば、これから上を目指す世代にとっても夢が広がります。『やっぱりプロってすごいな』とか『ああいうところで自分もやれるようになりたい』とか、そういう憧れが強くなって、より頑張ろうと思えるんじゃないでしょうか」
どんなときも後押ししてくれる温かいサポーター
――ここからは、サポーターについてお聞きします。トリニータのサポーターはとても温かく、ホーム・アウェー問わず熱心な方が多いと聞きました。お二人はどのような印象を持っていますか。
町田選手「そうですね、街中でもよく声をかけていただいたりして。本当にクラブを支えたいと思ってくださってる方が多いな、っていう印象はあります」
梅崎選手「アウェーでも、正直、大分からだとアクセスがいいとは決して言えないのに、たくさん応援に来てくれます。本当にトリニータを心底愛してくれてるんだな、っていうのはめちゃくちゃ感じます。あと、敗戦したときのブーイングが少ないですね。どんなときでも後押しをしたいという思いが、すごく伝わります」
――スタンドのサポーターは、声援を送りながらたくさんの応援グッズも掲げてますよね。お二人は自分に向けてくれているグッズを探したりするのでしょうか。
梅崎選手「はい。試合後とかにサポーターのところへ行ったときには探しますね」
町田選手「僕もいつも見てます。自分の背番号のゲーフラやタオルとかを見つけたら、絶対手を振るようにしています」
梅崎選手「ユニフォームを掲げてくれてる人もいますし、着たまま背中を見せてアピールしてくれる人もいますね」
――今年はコロナ関連の規制もほぼなくなり、サポーターも以前のような応援スタイルに戻ってきているのでしょうか。
梅崎選手「制限がなくなって、普通の状態に戻っているように感じます。やはり声を出して応援してもらえるのが、選手にとってはいちばんなので、すごく嬉しいですね」
町田選手「さっき梅崎選手が『ブーイングが少ない』と言ってましたが、むしろ、ブーイングしてもいいのにな、と思うこともあります。でも、負けたときでも『選手にとって何がいいんだろう』と、すごく考えてくれてるみたいで。そういうことをひしひしと感じるので、ともに戦ってくれているんだなあと思えますね」
サポーターにとっていちばん嬉しいのは、やはり大分トリニータの勝利のはず。選手たちのパフォーマンスを高めることにつながる環境改善は、応援している人たちにとっても望ましいことだろう。
すべてを整えるのには時間がかかるかもしれないが、さらに上を目指し、これからも愛されるクラブであり続けるために、トリニータは難しい課題にも積極的に取り組んでいく。
(取材・文/三葉紗代、写真提供/大分トリニータ)