伝統ある強豪校・都城商業高校卓球部。努力の先にある目標。男子はインターハイベスト8を目指す

宮崎県都城市上東町に位置する宮崎県立都城商業高校は、1904年に設立された約120年もの伝統を持つ商業高校。
運動部と文化部を合わせて計25の部活動があり、そのなかでも特に優れた成績を残しているものの1つが卓球部だ。インターハイ(全国高等学校総合体育大会)2023では男子が宮崎県予選男子学校対抗で優勝するとともに、全国でもベスト16まで進出。

男子ダブルスで宮崎県優勝を飾った

ベスト4まで進んだ兵庫県の育英高校に敗れたものの、女子と合わせて今後のさらなる上位進出が期待されている。
今回は男子部員3人、女子部員3人から話を伺った。

男子卓球部の活躍

都城商業男子卓球部は「令和5年度 宮崎県高等学校競技力強化指定校」。これは毎年一定以上の成績を残し、全国の舞台でも結果を残している部が選ばれるもの。そのために宮崎県内はもちろん、県外からも卓球を上手くなりたい生徒が集まる循環ができている。

過去の実績も豊富

現在7人いる部員のうち、今回話を伺った3人はいずれも小学4年生で卓球を始めており、卓球歴は約7年を数える。
そのなかの1人、2年生ながら男子学校対抗と男子シングルスでこの夏のインターハイに出場した宇地泊友陽さんは、学校対抗で惜しくもベスト16で敗れたことを悔しがり「僕たちがこの壁を越えたい」と語る。
取材の約1週間前に新キャプテンに就任したばかりの岡崎颯空さんは「九州でベスト4に入って、全国でベスト8に入ること」、東蓮太郎さんも「全国大会の団体戦での目標はベスト8で、シングルスとダブルス両方で勝てるようになりたいです」と同様に全国でのベスト8進出を目標に掲げた。
一方で、意識が高いながらもピリピリした雰囲気ではない。
「仲が良くて、自分の意見を主張できるチームです。普段はトランプが流行っています(岡崎さん)」と、積極的にコミュニケーションを取りながら練習を積み重ねている。
また、伝統のある強豪校だけにOBやOGも実力者が多く、練習相手としてアドバイスをもらうだけでなく合宿時の食事の準備をしてくれる方がいるなど、多くの協力をしてもらっている。ただ、「OG・OBの方にどういう高校生活を送っていたのかだったり、卓球の技術だったりを教えてもらいたいなと思います」と、部員たちは先輩方との交流をより多く望んでいるようだ。

1日の流れと間近の目標

強豪校らしく、1日は朝練から始まる。7時15分から7時50分まで練習に励み、8時までの10分間は卓球場の掃除。使った場所の清掃も怠らない。
そこからは学生らしく、勉学に励む時間。授業が終わると、16時30分から練習スタート。20時30分頃まで、約4時間の練習に打ち込む。
1日の練習時間は平日で4時間30分~5時間、土曜日・日曜日は9~10時間。年間では約2,000時間にも及ぶ。それでも、指導する側の妥協が一切なく、部員にも明確な目標があるため高い集中力を維持できている。
前述のように、都城商業はインターハイ2023の学校対抗においてベスト16で敗退した。全員の口から「ベスト8」を発せられたのは、自分たちの代で今年達成できなかったベスト8に到達するという意思表示でもある。
そのためにも「10月の後半に新人戦があるので、そこでシングルスとダブルスで県のベスト4に入れるように頑張りたいです(岡崎さん)」と目標を1つずつクリアしていく構え。
強豪校だけに、他県から進学する生徒も多い。卓球部専用の寮も完備されている。
東さんは、福岡県から都城商業に進学した。
「先生が卓球の指導に熱心で、強くなれる環境があると思ったからです。寮生活ははじめは怖かったですけど、生活に慣れていくうちに楽しくなりました」
同様に、沖縄県から進学した宇地泊さんも「呼んでくれた先生に恩返しできるように、インターハイでも、全国選抜でもベスト8に入りたい」と恩返しを誓う。

緊張感漂う大会の風景

ただし、盤石なようにみえる卓球部にも課題がないわけではない。女子卓球部の人数が十分ではないのだ。

女子部員が少ない現状と、懸命に取り組む3人

女子部員は現在3人のみで、2年生がおらず全員が1年生。卓球の学校対抗はシングルスが4戦とダブルスが1戦行われるため、出場するには最低でも4人が必要となる。現在の人数では、学校対抗に出場することができない。
それぞれの部員が卓球経験者や友人に声をかけているが、取材時点で部員増の見通しは立っていない。
もしかすると、強豪ゆえに初心者にはハードルが高いと考えている生徒もいるかもしれないが、初心者でも大歓迎。実際に女子部員の1人、上村玲奈さんは高校から卓球を始めた。
「部活動見学のときに、先輩たちが優しく接してくれたり、先生も話しかけたりしてくれたので、3年間続けられると思ったから入部しました。中学生の時はテニス部に入っていて、テニスでは回転をかけることはあまりないけど、卓球は回転を考えながら打たないといけないので難しいです。でも、皆優しくて、少しずつラリーが続くようになってきたので楽しいです」と充実感を感じている。
人数は少ないが、だからこそ関係性が築きやすく、小学5年生で卓球を始めた永吉柚結さんは「女子卓球部の魅力は仲が良いところ。このメンバーを中心に、県大会で団体優勝したいです」と語った。実力者も初心者も含む3人が旗振り役となり、女子も男子に負けない活躍を見せてくれるかもしれない。

正式な部員は少なくとも、宮崎県女子団体で3位入賞を果たした

都城商業高校卓球部員3人のこれまで

卓球に真剣に打ち込む、男女合わせて10人の部員たち。そのうち3人の卓球人生を少し覗いてみよう。
1人目は男子卓球部の2年生、宇地泊友陽さん。沖縄出身の彼は、小学4年生で卓球を始めた。
「近くに児童館みたいなところがあり、そこで卓球をしたら楽しかったのでクラブに入りました」
より卓球が上手くなれる環境を求めて、沖縄を飛び出し都城商業高校卓球部へと進学。2年生にして学校対抗とシングルスでインターハイに出場したが、学校対抗はベスト16、シングルスは1回戦で敗れた。この悔しさを残り1年で晴らすつもりだ。
「あまり勝てなかったなという感想です。学校対抗はベスト8を決める試合で負けてしまったので、僕らがこの壁を越えたいなと思っています。インターハイでも、全国選抜(全国高等学校選抜卓球大会)でもベスト8に入りたいです」
高校卒業後は大学進学を目指しており、大学でも卓球を続けたいと考えている。

2人目は女子卓球部の1年生、木脇紬久美さん。
姉の影響で、小学校6年生で卓球を始めた。宮崎県出身の彼女は、自宅から近く卓球の強い都城商業高校を選択した。
現在は「学校対抗で県大会優勝」を目標に、部活に励んでいる。
「小さいときから髪の毛を見ることが好きで、最近は髪を染めることも好きだと感じたため」将来の目標は美容師。2つの目標を叶えるために、現在は卓球と勉強を両立させている。

3人目は女子卓球部の1年生、上村玲奈さん。今回話を伺った6人のなかで、唯一高校から卓球を始めた。中学校ではテニス部に所属していたが、入学後実施される部活動見学を経験して卓球部へ。
勉強と部活の両立は大変とのことだが、目標があるから頑張れている。
「私は将来医療事務の仕事に就きたいと思っているので、この学校で商業について学んで、将来に活かせたらいいなと思っています」

強豪校でありながら、初心者も入部しやすい環境が揃う都城商業高校卓球部。寮生の間ではトランプが流行するなど仲が良く、練習への高い意欲も合わせ持つ。卓球という共通点を軸に、それぞれの目標に向かって進んでいる。

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