全日本大学駅伝 東海地区選考会 ~代表1校をめぐる熾烈な戦い 名古屋大が制し11年ぶり出場 ~

第55回全日本大学駅伝東海地区選考会が6月24日(土)、愛知県岡崎市龍北スタジアムで行われた。毎組で順位が入れ替わる接戦を名古屋大が制し11月5日に行われる全日本大学駅伝(熱田神宮~伊勢神宮 8区間106.8km)の出場を決めた。名古屋大は11年ぶり16回目の出場。九州地区の鹿児島大に続き、2校目となる国立大学の出場校が誕生した。

全日本大学駅伝は全国8地区(北海道・東北・北信越・関東・東海・関西・中四国・九州)で行われる選考会を勝ち抜いた17校と前年8位に入ったシード校で争う大会だ。

戦前の予想は皇學館大 選手の厚さで一歩リード

昨年の全日本大学駅伝の成績により2校だった出場枠が1校となり、熾烈な戦いが予想された。最有力は6年連続出場の皇學館大。昨年2位で全日本大学駅伝出場の愛知工業大、昨年3位の名古屋大、力のある新入生が入部した岐阜協立大が続く存在と見られていた。

4校とも東海インカレ(5月27日~29日 岐阜メモリアルセンター長良川陸上競技場)では主力の一部が出場を見送っていたが、それでも大量得点を獲得し選手層の厚さで皇學館大が一歩リード。愛知工業大は育成力に定評があり、今年も新戦力の活躍が見られるか。名古屋大は東海インカレ10000mで圧勝した森川陽之(修士2年・近大東広島)を擁し、最終4組は優位と見られていた。

選考会はトラックの10000mを8名が走りその合計タイムを競う。レースは各校2名ずつ4組に分かれて行われる。選手がどの組で走るかは出場大学が決めるため、選手配置も戦略の一つとなる。

前半にリードを奪えば、後半はライバル校の後ろについて落ち着いてレースを進められるが、1組・2組では気温が高くタイムが出にくく、エース級を配置しづらい。気温が下がりタイムを稼ぎやすい4組にエースを温存するチームが多く、エース対決で逆転劇が起こる可能性もある。各チームのメンバー配置にも注目しながら1組スタートの号砲を待った。

1組目 ~皇學館大がリード 代表争いは2校に~

昨年より1時間早い16時30分スタート。蒸し暑さが残る時間帯、1時間の違いがコンディションに大きく影響する。レースは岐阜協立大・伊澤葵(4年・浜松商)が飛び出して始まった。その後ろで愛知工業大、皇學館大、名古屋大、岐阜協立大、中京大の9名の選手が牽制しながらスローペースの集団でレースが進んだ。

1組目の序盤はスローペースとなり、集団でレースが進んだ

5000mから皇學館大の毛利昂太(3年・神港学園)、新間圭(1年・天竜)が一気にペースを上げ先頭に立った。それを名古屋大の重田直賢(修士1年・生野)、村瀬稜治(4年・桃山)が追う展開。その後村瀬が追い付き先頭に立つと新間が付いたが毛利は遅れた。重田は毛利を追うが差が縮まらない。

最後は新間が村瀬に僅差で先着。そして3着毛利、4着重田の順でゴールした。皇學館大が2位名古屋大に13秒89差の首位。3位中京大と2位の差は2分。1枠の代表争いは皇學館大と名古屋大の2校に絞られた。

1組目終了時の順位・記録
—————————————————–
1位 皇學館大 1時間02分51秒90
2位 名古屋大 1時間03分05秒79
3位 中京大 1時間05分09秒68
—————————————————–

2組目~スローペースの混戦 名大が首位浮上~

愛知工業大・加藤晨(1年・豊田大谷)が飛び出し独走。後続は牽制して1000m 3分20秒を超えるスローペース、大集団でレースが進んだ。レースが大きく動いたのが5000m過ぎ。名古屋大学の小川海里(3年・津西)と阿部祥典(3年・基町)が一気にペースを上げ、皇學館大の浦瀬晃太朗(3年・鎮西学院) 、上杉泰伸(3年・名経大高蔵)を含む後続を引き離した。

ペースを上げ後続を離す名古屋大・小川(右)、阿部(左)

その後阿部が離れ、先頭は小川と加藤の勝負となった。最後は加藤が抜け出し、1着でゴール。2着小川、3着阿部の順でゴール。皇學館大は浦瀬が5着、上杉が9着。名古屋大が皇學館大を逆転し総合タイム1位に浮上、1分13秒19の差をつけた。3位には2組のタイムではトップだった愛知工業大が浮上した。

2組1着でゴールした愛知工業大 加藤晨

2組目終了時の順位・記録
—————————————————–
1位 名古屋大 2時間08分19秒35
2位 皇學館大 2時間09分32秒54
3位 愛知工業大 2時間11分46秒06
—————————————————–

3組目~皇學館大が逆転 そのわずか0.07秒差~

スタート時刻は18時。また日差しが残る時間だが曇っていたこともあり、気温が下がってきた。皇學館大の岩島昇汰(3年・益田清風)は10000m29分台の記録を持つ。名古屋大の加藤太一(2年・千種)と寺島青(4年・明和)は自己記録がチーム7番目・8番目の選手。関係者の多くは皇學館大が大きく差を詰めることは確実、逆転も可能と見ていた。

レースは岩島が独走、1000m3分を少し超えるペースでレースを進めた。皇學館大・藤川創(3年・伊賀白鳳)と名古屋大の2名は後続の集団でレースを進める。

岩島は後半ペースを落とすがそのまま独走でゴール。2位とは30秒以上の差をつけた。藤川が4着に入り、名古屋大の2選手に先着。皇學館大が逆転し、わずか0.07秒差だが再度首位に立った。

3組で独走、先頭でゴールする皇學館大・岩島昇汰

3組目終了時の順位・記録
—————————————————–
1位 皇學館大 3時間12分05秒36
2位 名古屋大 3時間12分05秒43
3位 愛知工業大 3時間16分03秒55
—————————————————–

4組目 ~名古屋大が再逆転 11年ぶり出場を決める~

東海インカレ10000m2位・5000m優勝の岐阜大・小渕稜央(4年・津)が出走。日本学生個人選手権では1500m7位。全国クラスの実力を持つ選手だ。レースは予想通り、小渕が飛び出す。名古屋大の森川、河﨑憲祐(4年・大津緑洋)は躊躇なく付き、400m70秒を切るペースでレースが始まった。小渕と森川が交互に先頭に立ちながら3000mの通過は8分49秒。選手の自己記録や気温・湿度を考えると速いペースだ。

4組序盤は小渕(右から2番目)と森川(右)が交互に先頭に立ち速いペースで進んだ

皇學館大の松野颯斗(4年・瓊浦) 、畠山大輔(3年・豊川工科)も先頭集団に付くが4000m付近で徐々に遅れ出す。だが勝負は何があるかわからない。大きく崩れることはなく前を追った。

先頭争いは小渕と河﨑が抜け出し、森川と岐阜協立大・中嶋希(1年・美濃加茂)が離れる。最後は小渕が29分台でゴール。河﨑が2着。3着争いは中嶋が森川にわずかに先着した。2名とも皇學館大に先着した名古屋大が11年ぶりの全日本大学駅伝出場を決めた。

両手を広げてゴールに飛び込む名古屋大学・森川と迎える河﨑(No.38)

最終順位・記録

1位 名古屋大 4時間12分52秒62
—————————————————–
2位皇學館大 4時間14分21秒16
3位 愛知工業大 4時間17分48秒27
4位 岐阜協立大 4時間18分03秒33
5位 中京大 4時間21分28秒40
6位 三重大 4時間30分09秒86

組ごとに首位が入れ替わる見応えのあるレース

記録だけ見れば昨年から5分以上遅い。1組・2組の牽制によるスローペースの影響は大きかった。3組目も昨年と比べれば記録は低調だった。代表枠が1校になったこと、1時間早まったレース時刻の影響もあっただろう。出場校争いは1組目で2校に絞られたが、組ごとに首位が入れ替わる熾烈な代表校争いだった。最終組を迎えた時点でエースを擁する名古屋大が有利な展開。ほとんど差がない状況ならペースを抑え、安全策を取る選択肢もあったはずだ。それでもなお果敢に高速レースに挑み、見せ場を作った。

最終4組では岐阜大・小渕が存在感を示した。2位だった東海インカレ10000mの雪辱を果たすとともに自身初の29分台を達成。2週間前の日体大長距離競技会では5000mで自己記録更新(14分06秒07)、1週間前の西日本インカレでは5000m・10000mの2冠を達成。連戦で結果を残しタフさを見せた。スピードもあり、実業団に進めば大きく飛躍する可能性を秘めた選手だ。

4組トップでゴールへ飛び込む岐阜大・小渕

1組トップの皇學館大・新間、2組トップの愛知工業大・加藤、4組3着の岐阜協立大・中嶋ら1年生が活躍したのも今大会の特徴だ。中嶋は昨年の岐阜県高校駅伝で1区区間賞、10kmを29分台で走っている選手。今回は代表校争いに絡めなかった愛知工業大、岐阜協立大だが、新入生の活躍もあり、存在感を示した。

関西勢との出場枠争い、出場枠2校を取り戻せるか

関東地区代表との差は大きい。6月17日に行われた関東地区選考会では出場校ボーダーラインだった7位・国士舘大の記録は3時間59分45秒19。記録差は13分近くある。現実的な目標は関西地区代表に先着すること。選考会の記録だけを見ればその差も大きい。6月12日に行われた関西地区選考会ではボーダーラインの4位関西学院大が4時間06秒29秒52、その差は6分以上だ。

全日本大学駅伝では各地区代表の成績に応じて出場枠が割り振られる「成績枠」がある。詳細なルールは割愛するが、近年は関東地区が上位を独占し、残りの成績枠を関西地区・東海地区で争っている。昨年2校だった出場枠が1校に減ったのは関西地区代表3校が東海地区代表2校に先着したからだ。来年の出場枠を再び2校とするには名古屋大が関西地区代表4校のうち2校に先着する必要がある。もちろん関西勢も出場枠争いは意識して大会に臨むだろう。

東海学連選抜にも注目

代表校以外から選手を選抜する東海学連選抜、9月の選考レースで選手がほぼ決まる。全日本大学駅伝を目指す大学は来年の代表を目指す上で経験を積んでおきたい。また全日本大学駅伝を目指すことが難しい大学の選手にとっても東海学連選抜の存在は大きなモチベーションになっている。出場枠が1校になったことで東海学連選抜の選手争いも激化する。こちらも注目したい。

残るは北信越、北海道、中四国、東北の4地区。7月15日には北信越で選考会が行われ、新潟大、信州大が3校目の国立大出場校を目指して戦う。残り4地区はいずれも代表枠は1校。各地区で繰り広げられる熱い出場校争いにも注目だ。

関連記事