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ハナマウイ・ベースボールクラブに求められるチームの存在価値とは

野球クラブチーム・ハナマウイの立ち位置に変化が生まれている。「勝ち負け」といった結果はもちろん、親会社や地元との関係性も今まで以上に求められるようになっていた。

ハナマウイは2020年に創部2年で第91回都市対抗野球(東京ドーム)出場を果たし旋風を巻き起こした。以後は予選で企業チームの厚い壁に跳ね返され本戦出場はできていないが、地道に力を蓄えつつ活動を続けている。

チームの勝利と共に、野球教室開催など地域貢献等も求められるようになった。

~東京ドーム(都市対抗野球大会)と京セラドーム(社会人野球日本選手権)

「都市対抗出場は奇跡でした。創設2年目で地固めの時期と考えていましたが運良く出場できた。企業チームに跳ね返される今の状態が当たり前で、もっと強くならないといけません」

2019年のチーム創設時から指揮を取る本西厚博監督(元オリックス他)が現状について説明してくれる。

「根本的な部分で実力が足りない。企業チームとは練習量に圧倒的な差があります。野球は正直なのでハナマウイの今の実力がそのまま結果に表れている。全日本クラブ野球選手権へ出場しても日本一に届かないのは同様です」

都市対抗野球は南関東大会での敗退が続いている。またクラブチーム日本一を決める全日本クラブ野球選手権には過去2回出場(2021、22年)してベスト4進出経験はあるものの、昨年は関東予選で敗れた。

「都市対抗出場はもちろん、クラブ日本一になることが大きな目標。もう一息というところまではきているが何かが足りない」

今季は第34回JABA一関市長旗争奪クラブ野球大会、第16回関東連盟クラブ選手権で優勝を果たした。しかし目指すは全国の舞台へ出場して結果を出すことだ。

「初心に戻ってがむしゃらにやらないといけない。クラブ日本一になれば社会人野球日本選手権(京セラドーム)へ出場できる。もちろん企業を倒して都市対抗出場を果たすのも諦めていない。全国の舞台へ出ることで会社への恩返しをしたい」

本西厚博監督(写真左)とチーム代表の森賢司氏(同右)。

~野球、地域貢献、デイサービス業のバランス

ハナマウイはクラブチーム形態だが、デイサービス会社・株式会社ハナマウイが母体となっている。男子と女子の硬式野球チームがあり、同社の介護施設で働く社員選手と他の仕事をしているクラブ生選手で構成されたチームだ。

ハナマウイ代表の森賢司氏は2017年に女子、19年に男子チームを立ち上げた。チームの現状に関して冷静かつ思いやりを持って語ってくれる。

「冷静に振り返れば上出来かもしれません。創設1年目は部員数もギリギリでやっていて、投手が一度も守ったことない外野をやったことも多々あった。大会参加のために野球部以外の社員の名前を借りて形だけを整えたこともありました」

「都市対抗出場で知名度や注目度が急激に高まった。企業チームからも常に厳しい戦いを挑まれるのは素晴らしい経験になっています。関係各所から『千葉野球のレベルを上げてくれた』と言われるのは嬉しいですが、重圧に感じることもあります」

千葉県富里市のチームとして地域貢献活動を依頼されることも増えた。もちろん社業のデイサービスと野球の両立も忘れてはならない。

「大会開催時には行政を含め、各方面から多くの激動をいただきます。試合時には応援にもたくさん来てもらえるようになりました。地域の少年野球等から野球教室を依頼されることもあります」

「本業と野球のバランスを常に考えます。本当なら全員を社員選手として雇いたいですが、デイサービスという仕事に対する適正も必要です。社員選手の採用に関しては慎重にならざるを得ないので、クラブ生選手との両方が混在する形です」

長冨浩志コーチは対話を重視して投手陣のレベルアップを図る。

~都市対抗予選で勝てるチームを作る

グラウンド上で結果を出すために常にレベルアップを図る。本西監督を支えるのは元プロ選手の長冨浩志コーチと清家政和コーチだ。

長冨コーチは広島、日本ハム、ダイエーでプロ通算16年間プレー、1986年セ・リーグ新人王に輝いた右腕。笑顔を忘れずコミュニケーションを取り続ける指導は投手陣の技術向上に貢献している。

「この環境で都市対抗本戦出場を果たしたことがすごい。企業に比べて練習量が圧倒的に少ないので、そこを何でカバーするのかを常に考えています。投手に関しては長所を少しでも磨くしかない。今季はチーム全体が噛み合わず結果に繋がらないことも多かった。戦力や環境もあるけど巡り合わせも影響しました。気持ちを切り替えてチームを作り上げていきます」

清家政和コーチは勝利に直結する細かい野球を伝える。

清家コーチは阪神、西武、ヤクルトで主に内野手でプレー、現役引退後はNPBや韓国球界でも多くのコーチ経験を積んだ。西武黄金期や野村克也氏直伝の細かい野球をチーム内に広めている。

「自分自身が身体が大きい方ではなく、細かい野球を覚えたことで生き残れたと思います。そういう部分をチームに少しでも還元できればとやっています。まずは投手を中心とした守備を固めて失点を抑えること。今はまだ不完全な部分が多いので1つずつ確認しながらやっています。伸び代がかなりあるので、どこまで固いチームになれるか楽しみです」

プロ経験者の本西監督、長冨コーチ、清家コーチに加え、チームOBの捕手でチームを知り尽くす渡邊由樹コーチ、身体のメカニズムに精通した中山慎太郎コーチの5人体制でチーム立て直しを目指している真っ最中だ。

「来年の3月頃までに骨格を作り上げ、5月の都市対抗予選で勝てるチームへ固めていこうと考えています」(本西監督)

クラブ日本一、そして都市対抗、社会人日本選手権での全国大会出場を目指す。

~ハナマウイ野球部には大きな責任がある

「所属選手が難しいことを求められているのも確か」と本西監督は続ける。通常のクラブチームなら自己責任で野球をして勝利を目指せば良い。しかしハナマウイは社員選手とクラブ生選手が混在する特別な形態であり求められるものも異なる。

「社員選手は社業の傍ら、練習や試合の時間を優先的に作ってもらえることもある。他職員さんや介護にかかっている方々から大きな期待をされる。また富里市代表を名乗っており地域の人からも注目を集めるなど、様々な形で大きな責任を背負っています」

「社会へ出てからこれだけ多くの人に期待されたり応援されるのは滅多にないこと。これはハナマウイがクラブと企業の両方の要素を持つチームだからです。特殊で素晴らしい環境で野球ができることを有意義に感じて欲しい」

全国の舞台でプレーすることが会社や地域の方々への恩返しになると考える。

プロ野球という百戦錬磨の世界を知り尽くした本西監督は、自身の立場も冷静に受け入れながら闘志を掻き立てている。

「監督就任5年が経過して全国大会出場1度は合格点ではない。いつ監督交代になってもおかしくない立場なので、来季は明確な結果を残したいと思っています。そのためにも早くからチームを作り上げて実戦を積んで勝てるようにしたい」

「今季終了後から多くの企業チームにオープン戦(練習試合)のお願いをしている。土日は可能な限りダブルヘッダーを組んで実戦経験を増やし、レギュラーだけでなく登録選手全員のレベルアップを図ります」

企業との練習量の差を実戦経験でカバーする意味合いを含む。来季の大きな飛躍へ向け今から着々と準備を整えている。

「あの時(=2020年)以上に社会人球界を驚かせたい」と最後に笑顔を見せてくれた。勝負の2024年、球春到来とともに一気の加速を図る。全国の舞台でハナマウイを再び見られる日はすぐそこまで来ているように感じさせてくれた。

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・ハナマウイ・ベースボールクラブ)

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