子どもの未来を作る社会貢献活動 F-connectでつながる支援の輪
現役サッカー選手である小池純輝選手(現クリアソン新宿)が主となり、2015年に立ち上がった一般社団法人F-connect。児童養護施設の訪問を行う一方、2021年には長野県の飯綱町に住む知人の協力のもと『プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子どもたちと泥んこになりたい』というテーマの元、エフコネファームを運営している。
小池選手がこうした活動を推進する理由はいくつかある。最も大きいのは、プロサッカー選手という夢を叶えたものとして、子どもたちに夢や目標を持つことの素晴らしさや大切さを伝えたいということ。子どもたちへ夢や希望を持つことの大切さを伝える活動の中で、選手たちにとってキャリア形成を考えるきっかけにしてほしいという思いがある。
小池選手の思いに賛同し、現在12名の選手がF-connectに在籍。さらには11社のパートナー(いわゆるスポンサーとしての金銭の提供)と70名以上の賛助会員が彼らの活動と子どもたちを支えている。
自身の経験と児童養護施設の子どもたちを重ね、F-connectへの支援を決断
F-connectのオフィシャルパートナーとして、昨年から参画しているのが医療法人ライオン会ライオンインプラントセンターだ。
代表の鈴木仙一氏は国内でデンタルインプラントが始まった1984年の2年後から同治療を開始し、講演や執筆活動、さらには日米の大学での講義や学会への出席など、世界的にも第一人者として知られている。
そんな鈴木氏と小池選手の橋渡し役になったのが、小池選手の地元埼玉県比企郡嵐山町の先輩である内田剛氏である。内田氏は以前、鈴木氏が運営する医院のホームページを運営するポータルサイトの役員を務めており、20年来の仲。
医院のある神奈川県海老名市に長年寄付をするなど、社会貢献への関心が高かった鈴木氏を、小池選手に紹介したのがきっかけだ。内田氏が仲介し何度か会食を重ねる中、鈴木氏は次第にF-connectの活動に感銘を受け、支援を決めた。
「小池選手の第一印象は爽やかでした」(鈴木氏)という人柄も大きかったが、自身の学生時代の経験も支援を始めた要因になっている。鈴木氏の父親は会社を経営していたが、鈴木氏が日本大学在学中の20歳のときに倒産。歯科医師を目指し、勉学に励んでいた中で「まさか」の出来事だった。
「夜逃げのような形でしたし、大学に借金の取り立てが来ることもありました」と振り返る。そんなとき日本航空の操縦士で、懇意にしていた男性から支援として1,000万円を譲り受けた。学費や生活費に充てながら、何とか苦しい状況を脱することができた。
「そのとき『絶対に一流になろう』と誓いました」と鈴木氏。大学を卒業後、借りた1,000万円を僅か3年で返済し、テナントではあったが自身の医院も開業した。
自身の境遇を子どもたちに重ねながら、「小池選手の人間味あふれる行動、損得感情ではないところに感銘を受けます。一緒に手助けをしたいと思いました」と鈴木氏を突き動かした要因となった。
探究心の高いプロフェッショナルとして共通点の多さも支援のきっかけに
現役サッカー選手の小池氏とデンタルインプラントの第一人者である鈴木氏。職業は違えども両者はその道を極めた“プロフェッショナル”である。この部分もまた、鈴木氏が小池選手に共感し、F-connectをサポートする理由である。
先述の通り、鈴木氏は逆境に打ち勝ち、世界でも権威のある歯科医師となったが、それまで血が滲むような努力をして道を極めてきた。
「一流になるには努力をし続けなければいけません。学生時代は勉強に励み、今でも週6回働いています。そして日曜日は学会に出ることが多いので、休みはほとんどありませんね」と鈴木氏は笑うが、それは小池選手も同じ。サッカー選手として技術を磨きながら、フィールドの外でも常に先のことを考え行動に移してきた。
小池選手は「プロサッカー選手も社会人ではありますが、特殊な世界。25歳のときにチーム内の最年長の選手が35歳だったので、自分が選手でいられるのも(最大で)あと10年しかないと感じたときにすごく不安になりました」という思いから、さまざまな人に会うことを意識。その中でいろんな経験をする中、2014年に児童養護施設への訪問をきっかけに「フットボールを繋げる、フットボールが繋げる」という理念の元、F-connectを設立した。
鈴木氏もデンタルインプラントを施すことで、「患者さんを救うことができ、まさに社会貢献だと感じています」と話しており、探究心に加えて小池選手が進める社会貢献活動にも通ずるものがあったという。
自身の経験と技術を子どもたちに提供し明るい未来への一助になる
F-connectへの支援は昨年始まったばかりのため、本格的な活動は今年からスタートする予定だ。
鈴木氏は児童養護施設の子どもたちと同じような経験をした期間があるからこそ、共感できる部分が多くある。
「子どもたちに自分の経験を伝えることはもちろん、私は職人なので施設にいる子どもたちの歯の状態をチェックしたり、ボランティアで治療をしたいと思っています」と鈴木氏は子どもたちに会うのが待ち遠しい様子だ。海老名市への寄付など自身が独自に取り組んできた社会貢献活動を、F-connectを通してできるようになったことで楽しみは広がっている。
「F-connectには期待しかありません。輪が徐々に広がっていき、支援額の規模も増えることは社会貢献の一言に尽きます。大きくなっていくことを望んでいます」と鈴木氏。子どもたちの未来を見据え、今後もF-connectとともに社会貢献活動を推進していく。