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野球界の新風「Japan Breeze」 ラミレス監督率いる日本チームがカリビアンシリーズにアジアから初参戦

「日本の野球界が経験したことのない、全く新しい体験になると思います」

75年の歴史を持つカリビアンシリーズが、初めて日本チームを招待することになった。アジアで初めて参加する日本チーム「Japan Breeze」を作り、自ら監督となるのは、ベネズエラ出身で日本に帰化したアレックス・ラミレス氏。

合同会社「JAPAN BREEZE」を立ち上げCEOも兼任するラミレス氏とGMを務める色川冬馬氏が、歴史あるカリブの大会に参加する意義と展望を語った。

アジア初!カリビアンシリーズ参加の意義とは

1949年に始まったカリビアンシリーズは75年もの歴史があり、近年では集客数も多い国際大会だ。カリブ海プロ野球連合(CBPC)の加盟国:メキシコ、ドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコ、4ヶ国それぞれのウィンターリーグで優勝したチームが集い、カリブNo.1を決める。

2014年より招待枠が設けられ、2024年大会ではパナマ、キュラソー、ニカラグアという3ヶ国が招待された。同大会では、ベネズエラ代表ティブロネス・デ・ラ・グアイラが優勝。会場のローンデポ・パークには多くの観客が集まった。ラテン系民族を中心に注目度は増している。

2024年2月のカリビアンシリーズはアメリカ・マイアミで行われた

次回大会は2025年1月31日(日本時間2月1日)からメキシコのメヒカリで開催される。メヒカリは寒冷な気候が予想されるため試合数を減らし、今回の招待枠は1チーム。そこに初めてアジアからの参戦として日本が加わる。

総当たりの予選ラウンドの後、決勝トーナメントが行われ入賞チームには賞金が支払われる大規模な国際大会だ(2024年実績:優勝で14万4千ドル )。

「100%全くためらいなく引き受けた」ラミレス監督

自らも2000年にベネズエラのアギラス・デル・スリアというチームでウィンターリーグに参加し、カリビアンシリーズを目指したことがあったというラミレス氏。チームは優勝し、カリビアンシリーズに進むことになったが、氏自身はメジャーへ行く可能性を重視して辞退。実際に参加することはなかった。

「ウィンターリーグ参加者は、皆カリビアンシリーズを目指す強いモチベーションを持っています。その大会に参加する、優勝するというのは大変大きなことなのです」

CBPCは、以前から野球市場の大きいアジアからのチーム参加を希望していた。NPB、KBO(韓国プロ野球)、CPBL(台湾プロ野球)に打診するも、実現せず。実際、大会実施時期の2月初旬は日本であればNPBのキャンプインの時期にあたるため、NPB選手の参加は考えにくい。

こうしたことから、日本野球に関わりの深いラミレス氏に「NPBに所属しない選手で日本チームが参加できないか」と打診があったという。

GMの色川冬馬氏は、海外で監督経験もあり、また日本人選手の海外派遣に長く関わってきた人物。現在はBCリーグ茨城アストロプラネッツのGMも務めており、同球団では外国人選手の獲得や日本人選手の海外派遣も活発に行っている。

両者のタッグで、NPB以外の選手たちから選抜する日本チーム「Japan Breeze」を立ち上げることとなった。

Japan Breeze監督を務めるラミレス氏とカリブ海プロ野球連合のエレーラ代表

このオファーに「100%ためらいなく引き受けました」と答えたラミレス氏。
「日本の野球は世界でもトップレベル。NPBのベストの選手が集まるわけでなくとも、レベルは高い」

色川GMも参加の意義をこう述べる。
「例えば独立リーグの選手は、25~26歳で転機を迎えます。NPBドラフト指名の可能性は0に近づく。野球を続けるのか、就職するのか。でも、選手としては完成度が高く、すごく良い選手たちがいます。そうした年代の選手に新しい選択肢ができると思います」

カリビアンシリーズは、出場チームの選手たちにとっては来季の契約を得るアピールの場でもある。MLBのスカウトを始め、各国のスカウトも注目する大会で、日本選手にも可能性を広げるチャンスがある。

参加選手は全国の独立リーグ・海外在籍選手・元NPBから選抜

2025年大会は1月31日から行われる。NPB選手にはキャンプイン時期であるのと同時に、独立リーグの選手であっても、今秋ドラフト指名される選手は参加が不可能だ。現在は全国の独立リーグ選手と、海外リーグに参加している日本人選手からメンバーを探している。また、NPBの戦力外通告期間にリリースされた選手も編成に入ってくるだろう。

他国の参加はウィンターリーグごとの優勝チームと、補強選手から成る混成チームだが、Japan Breezeに関しては、国内の外国人選手の参加は考えていないという。そして参加条件について、ラミレス氏はこう強調する。

「ここはクリアにしておきたいのですが、選抜された選手が自己負担を求められることはありません。渡航費用、滞在費等必要な経費はJAPAN BREEZEが負担します。そして選手にはギャラが支払われる。そのためにもさらに多くのスポンサーを募り、資金を集める予定です」

ラミレス氏は合同会社「JAPAN BREEZE」を立ち上げ、CEOとして活動を行っていく。この一回の参加だけではなく、将来的に継続して選手を派遣し、選手の選択肢を増やしていきたい。世界へ羽ばたく選手の夢を後押ししたい。その思いがラミレス氏にも色川GMにもある。

チームの展望、求める選手像とは

現在は動画や成績データなどから全国の選手を吟味し、リストアップしている。チームの編成にあたり、理想のチーム像と、それを実現するにはどんな選手が必要と考えているのか。ラミレス氏は「まず投手力」と語る。

「日本の野球が経験したことのない素晴らしい体験になる」とラミレス氏

「とにかく投手陣を充実させたいです。投手力で試合を作っていきたいということを強く思っています」

やはりパワーでいえば、どうしても他のラテンの国の選手たちに勝てるとは言えない。しっかりと守備力と投手力で試合を作れるチーム作りを目指している。

「スモールベースボールですよ」と茶目っ気たっぷりにラミレス氏は笑った。

「『出るからには勝つんだ!』『優勝するんだ!』という強い気持ちのある選手を選びたいと思っています。ただ出場してみたいから行く、という選手は求めていない。絶対NPBに行くんだ!メジャーでプレーするんだ!このカリビアンシリーズをきっかけに自分は大きく羽ばたくんだ!という、強い夢を持った選手を選びます」

色川GMは野球で海外に挑戦することについて、こう言う。

「海外に挑戦することが当たり前になる方がいい。日本人、特に若い人たちにとって、海外経験は物事を客観的に見る能力が確実に身に着いて、一つの武器になるんです。野球を通して海外を見る。『あの大会に参加したことが今の自分を作っている』と言えるぐらいインパクトのあることになると思います」

世界へ羽ばたく選手の夢を後押し

カリブの野球、メジャーリーグ、そして日本の野球をよく知るラミレス氏。自身がウィンターリーグや日本の独立リーグに在籍した経験もあり、内外で幅広い活動を行っている。日本の野球を世界へ、また世界の野球を日本へ紹介するという意味でも、これ以上ない適役と言えるだろう。

将来的には、世界の他の地域での国際試合参加や、もっと若い世代の世界的な活動に広げていくアイディアもあるという。

「ゼロから始まるスタートですが、今まで日本の野球界が全く経験したことのない、素晴らしい体験になると思います」

選抜されたJapan Breezeメンバーは2025年1月に招集され、強化合宿ののちにメキシコに渡る。注目のカリビアンシリーズは1月31日に開幕だ。

NPBやメジャーへ挑戦したい、国際大会をきっかけに大きく羽ばたきたい、という夢を持ったエネルギッシュな若い選手たちが集う。日本の野球を世界に繋げ、また世界の野球を日本で知ってもらうために、「Japan Breeze」の挑戦が始まる。

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