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アビスパ福岡 城後寿 コロナ禍で感じた想いと情熱「サッカーを通じて活力や元気を与えていきたい」

10月18日、アビスパ福岡はJ2首位に立った。2016年以来のJ1昇格に向け、引き分けを挟み13連勝中の勢いそのままに連勝街道をひた走っている。(※今シーズンは上位2クラブが自動昇格、記録は全て10月27日時点)

チーム最年長であるFW城後寿(じょうご ひさし)は地元福岡県の出身でアビスパ一筋16年目。J1昇格への想いを誰よりも強く抱いている。

新型コロナウイルスが世界中で広がり、日本のスポーツ界も開幕延期など様々な対応を迫られた。Jリーグもシーズンの中断や無観客、現在も有観客ながら制限が付くなど、常に状況に合わせながらの運営となっている。

地元出身かつ生え抜き選手である城後は、コロナ禍のシーズンをどう過ごしてきたのか。そこで感じたふるさと福岡やサポーターなど、その想いを語った。(※敬称略)

「サポーターとの距離がさらに縮まった」

アビスパ福岡の公式戦は2月23日の第1節(ギラヴァンツ北九州戦)から6月28日の第2節(FC琉球戦)までの間、約4カ月中断した。

チーム練習は4月から約2カ月の間自粛。その期間は1日約3時間、体力を落とさないよう自宅で筋力トレーニングや、人の少ない夜に公園でボールを使った練習などを欠かさず行っていた。

「(身体を)追い込む日・抑える日を決めたりして、バランスを見ながら今までの経験を活かしつつ過ごせたと思います。開幕戦はベンチスタートで悔しい思いをしたので、この期間にできるだけ周りの選手と差をつけようというモチベーションでやっていました。なので気持ちが切れることはなかったです」

自粛期間中の活動を語る城後

クラブでは、自粛期間中にサポーターと選手が交流できる機会を多く企画し、城後含め選手たちも積極的に協力した。

企画の中で城後はオンライントークショーや、自身が普段やっている筋力トレーニングを教えるコーナーに出演。普段できない体験をすることで新たな気づきがあったという。

「サポーターの方々から自分のやっているトレーニングについて質問をいただいたり、他の選手へサッカー以外のことを聞いたりしていて、(サポーターの)みなさんが選手をいろいろな角度から見ているんだなというのを気づけました。

僕はあまり人前に出て話したりすることが得意ではないんですけれども、少しでも何か協力できればと考えていましたし、オンラインでは話しやすさがあったので、サポーターと選手の距離がさらに縮まったのではないかと思います」

コロナ禍で見えた“ふるさと福岡”

城後は1986年生まれ、福岡県久留米市出身。名門の国見高校(長崎)を経て2005年にアビスパ福岡に入団。地元出身の生え抜き選手として、福岡そしてクラブを支えてきた。

今年に入り、新型コロナウイルスが猛威を振るい、ふるさとである福岡の街も経済的に大きな打撃を受けた。街の様子はどう映っていたのか。

「車で見えた景色ですが、とても静かになっていましたし『これが福岡?』って思いました。それを見ると同時に本当に大変な状況になったと思い知らされましたね。みんな外に出るのも我慢しているんだなと感じました」

今年5月、生まれ育った久留米市やホームタウンの福岡市にそれぞれマスク5,000枚を寄付した。今後も地元福岡への恩返しはやってきたいと考えている。

「久留米市からも、子どもたちへサッカー教室など元気を与えてほしいと依頼いただきました。コロナが落ち着いたら今まで以上にサッカーを通していろいろな活動をやって行けたらなと思います」

福岡県では新型コロナウイルスの感染者数が9月中旬以降、1日当たり20人を下回っている。予防対策をしながらの生活は必要であるが、少しずつ人出が見え始めた。

「まだまだ大変な状況が続いていますけども、徐々に戻りつつある印象があります。医療従事者の方が懸命に働いてくれているおかげで、徐々に日常の生活が戻ってきていると思いますし、最初の頃に比べると街もだいぶ明るくなってきましたね」

「クラブや福岡を助けようという想いが伝わってきた」

アビスパ福岡では、8月27日より「ふるさと福岡を元気に!ALL FUKUOKAクラウドファンディング」を開始した。

このプロジェクトでは、返礼品に福岡ゆかりの商品や、選手のサイン入りグッズなど40品以上用意している。地元スポンサーと手を組んだ施策はアビスパ福岡で初の試みである。選手の立場から、本企画についての想いを語った。

「スポンサー様の力を借りながらクラブを応援するという企画です。僕たちクラブだけじゃなく、スポンサーさんも大変な思いをしているにも関わらず協力いただいています。ご支援をいただく中でクラブや福岡をもっともっと応援しよう、助けようという想いが伝わってきて、選手としては本当にありがたいです」

クラブのプロモーション画像。選手やチアが登場している(公式Facebookより)

選手も積極的に告知に参加し、より発信力を強めている。今後もスタッフら関係者と協力し、クラブが一つになっていきたいと考えている。

「選手会長の杉山(力裕)を中心に、自粛期間中から『何かやれる事は一人一人やっていこう』とチーム内のミーティングでも共有してくれました。クラブスタッフももっと選手を頼ってほしいですし、そこからまたさらにクラブとして1つになれると思うので、大変な時期こそみんなで協力してやっていく必要があると思っています」

「地元でゴールを」

アビスパ福岡では、ホームゲームは第5節(ジュビロ磐田戦)から観客を入れて試合が行えるようになった。第24節(ギラヴァンツ北九州戦)からは上限を1万人に拡大した。

まだ応援歌など声を出して後押しする応援スタイルは制限されているものの、サポーターが戻ってきた時の心境を伺うと、声を高ぶらせながら語った。

「戻ってきてくれて本当に嬉しかったです。サポーターがいるだけで『もっと頑張らなきゃ』『ゴール決めていいプレーしなきゃ』っていう気持ちが一層高まりましたね」

FWとしてもっとゴールを決めたいと語る(クラブ提供)

城後は今シーズン、27日時点で21試合出場(1ゴール)。途中出場が中心ながら、試合終盤の緊迫した場面でピッチに登場し、攻撃の一翼を担う。サポーターに見てほしい点についてはこう述べた。

「僕のことを待ってくれているサポーターもいると思います。そういう方々にピッチを走り回って元気な姿を見せるとともに、FWなのでやっぱりゴールが一番必要な結果です。今シーズンまだ1得点しかできていないですが、お客さんの入ったホームでゴールを見せたいです」

自身は途中出場で決して満足していない。残り13試合、スターティングメンバー奪取を狙うとともに、地元サポーターの前でゴールを見せることを誓った。

「最後まで諦めずにプレーする姿を」

チームは第17節(レノファ山口FC戦)から引き分けを挟んで13連勝中。サッカーを通じてサポーター、そして福岡を勇気づけている。

ただ、順風満帆にここまで来たわけではない。8月、チーム内で新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたこともあった。個々に手洗いや消毒をこまめに行うなど感染対策をしていた中でも起きてしまう。当時の心境を振り返った。

「少し動揺はありました。ただ、その中でもサッカーをやれる喜びを感じないといけないと思いましたし、プレーしたくてもできない選手たちもいたので、それを考えればすぐに気持ちを切り替えることはできました」

数々の困難を乗り越え、目標であるJ1昇格に向けた戦いはこれからが正念場を迎える。熱戦が繰り広げられる中で、サッカーを通じてどんなことを伝えたいか。城後はこう答えた。

「最後まで諦めずにプレーすることで活力や元気を与えられると思っています。時には手紙で感動したという声をいただいたりすることもあって、それこそ僕が求めていることです。サッカーに限らず、スポーツの力って多くの方に様々な形で感動や勇気を与えられると思うので、そういうところがサッカーやスポーツの良さであると思っています」

全力プレーで福岡のまちに感動を与えたいと語った(クラブ提供)

そして、最後にサポーターへメッセージを贈った。

「まだ応援の制限もありますが、皆さんと一緒に喜び合える日が必ず来ます。僕たち選手も感染に気をつけながら生活をするので、皆さんもお体には気をつけていただきたいと思いますし、また皆さんと喜び合える日を楽しみにしています」

インタビュー中、サッカーの話をすると自然と笑顔になった。プレーできる感謝が1つ1つの言葉に詰まっていた。J1昇格という次のステージが城後の情熱にさらなる火を灯していく。

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