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「野球ってこんなに面白いんだ」 言葉が通じなくとも笑顔に…日本と台湾を結ぶ“共通言語”

スポーツを通じた国際交流の新たなモデルケースとなるか――。昨年10月、青森県とむつ市が台湾・高雄市と友好交流協定を締結した。12月には青森市とむつ市にキャンパスを有する青森大学の硬式野球部が高雄市に赴き、現地の小中高生を対象とした野球教室や大学との交流試合を行う国際交流活動を実施。行政間にとどまらない交流を活発化させ、日台の友好関係を促進している。

台湾・高雄市が目指す「行政間」にとどまらない交流

「政府(行政)間の締結だけでは、市民が実際に(締結前との)差を感じることができない。交流が進んでいることを民間や市民の方々にも感じていただきたいという中で、言葉が通じなくとも交流できるスポーツ、しかも日台の両方で愛される野球を介した事業を成功させようと準備してきました」

高雄市政府の張硯卿・行政及び国際処長はそう狙いを明かした。12月21日には陽明野球場で五福中学校の学生を対象とした野球教室を視察。「学生たちが楽しそうに交流して仲間になる光景を見て、とても有意義な活動だと実感しました。今回だけで終わらずに密な交流を続けて、青森の方々が『高雄に行ってみよう』、高雄の方々が『青森に行ってみよう』となれば嬉しいです」と手応えを口にした。

高雄市政府も視察に訪れ、選手たちに記念品を手渡した

青森大は今回の遠征期間中、移動日を除く6日間で野球教室を6度、交流試合を3度行った。各学校を訪れるたびに手厚い歓迎を受け、高雄市政府からもユニークな記念品が贈呈された。

音楽や特産品を駆使した「おもてなし」に選手たちからは驚きの声が上がり、三浦忠吉監督も「歓迎されるたびに選手たちはやっていることを評価されていると感じただろうし、自信もつくと思う」と感謝した。「スポーツの方面にとどまらない交流を長く続けたい」という張処長の思いは確かに伝わったはずだ。

台湾の子どもたちが見せた「日本の野球へのリスペクト」

今回の国際交流活動で際立ったのが、台湾の子どもたちの「笑顔」だ。張処長は「普段の練習は苦しかったり、厳しかったりと大変な面もありますが、青森大学のお兄さんたちに教わる中で、野球をこんなに楽しく、面白くできるんだということを感じ取ってもらいたいです」とも話していた。

野球教室が始まった当初は緊張感が漂うものの、ともに体を動かしながら身振り手振りで話すうちに徐々に笑顔が増えていく。そんな様子を目にした大仁中学校の林讚新監督は「普段の練習では(選手たちが)怖い指導者に立ち向かっているので、こんなに楽しそうに笑う姿は見たことがないです」と冗談まじりに話しつつ、「指導者の立場では厳しく指導しなければいけませんが、お兄さんたちに教わることで『野球ってこんなに面白いんだ』と学べるという意味では良い機会。交流が続くことを望んでいます」と目を細めた。

野球教室では子どもたちの笑顔が溢れた

また台湾の子どもたちは単に野球を楽しむだけでなく、日本の大学生との交流を技術向上の足がかりにしようと真剣に取り組んでいた。小中高生は野球教室で大学生の一挙手一投足に目を凝らし、時には個別に質問をぶつけた。高雄大学との交流試合では試合前、青森大のシートノックを撮影しようと選手たちがスマートフォンを構え、試合後は変化球の握りや投げ方を聞こうと長蛇の列を作った。

初日の野球教室に参加した鼓岩小学校の許祐宸くんは「普段は教わらない新しいことを学べて面白かった。大学生はみんな背が高くてかっこよかったです」と目を輝かせた。シートノックを撮影していた高雄大の蔡承凱くんも「守備のリズムがよく、自分で勉強したくて撮りました。帰って見直します」と笑顔だった。

試合前のシートノックを撮影する高雄大の選手たち

「日本の野球をリスペクトしてくれているのを感じました」とは三浦監督。「日本人が海外に行った時、同じようにスマートフォン片手に技術交流できるかというと疑問が残る。日本の野球から吸収したい気持ちがすごく伝わりましたし、(青森大の)選手たちも『もっと探究心を持って練習しなければ』と気が引き締まったのではないかと思います」。台湾野球の発展という側面でも意義のある時間になった。

冬も温暖な気候…“異例”の海外遠征で生まれたメリット

青森大にとっても冬の時期の海外遠征はメリットが多かった。青森大のグラウンドは冬になると降り積もった雪に覆われるため、室内練習場でのトレーニングや反復練習がメインになる。実戦経験を積むためには仙台や関東へ長距離移動しなければならない。

高雄市は一年を通じて温暖な気候で、遠征期間中も日中は半袖で過ごせるほどの気温だった。三浦監督は「12月にこれだけ温かい場所でスピード感のある野球をできるのはポジティブな要素が多い」と話し、選手たちからも「投げやすかった」「来春に向けた準備をいち早くできた」といった声が聞かれた。

温暖な気候の中、真剣勝負を繰り広げた

国際交流の一環とはいえ勝利にこだわり、戦力を重視した30人を遠征メンバーに選出。高雄大と2試合、高苑高級工商職業学校と1試合を戦い、ブランクがある中でも2勝1分けと強さを見せつけた。子どもに教える過程で普段のトレーニングの意味を再確認できたこと、チームの全員で協力して結束力を高めたことなども大きな収穫だ。

交流継続に期待「ねぶた祭を見てから交流試合を…」

三浦監督は「高雄の夏は暑いと聞いたので、夏に過ごしやすい青森に来てもらって、ねぶた祭を見てから交流試合をするのもいいと思う」と今後に期待を膨らませる。野球を介した事業が日台の友好関係促進に寄与しつつ、双方のメリットを生むことは十分に確認できた。

訪問した先々で熱烈な歓迎を受けた

「野球って面白い」。言葉は通じなくとも、それは日台の“共通言語”になる。そして野球をきっかけとして、輪は広がっていく。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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