• HOME
  • コラム
  • 野球
  • アマチュア野球運営のひとつのロールモデルになりたい~軟式野球チーム・東京バンバータの挑戦~ オーナー兼監督、熊本浩志さんインタビュー

アマチュア野球運営のひとつのロールモデルになりたい~軟式野球チーム・東京バンバータの挑戦~ オーナー兼監督、熊本浩志さんインタビュー

「WORK HARD, PLAY HARD」をスローガンに、日本最強の軟式野球チームを目指して活動している東京バンバータ。昨年のMLBドリームカップでの優勝を含め過去4度の全国優勝、軟式野球界での存在感がどんどん増してきている東京バンバータは、現在スポチュニティのクラウドファンディングを利用して新しい試みを行っています。そんな東京バンバータとはどんなチームなのか、そして新しい試みとはなんなのか、オーナー兼監督の熊本浩志さん、通称「クマカン」にお話をお聞きしました。
 

――「東京バンバータ」という名前はHIP-HOP DJのアフリカン・バンバータからとったとお聞きしました。

そうですね。元々僕がDJをやっていて、飲み屋でノリで作った草野球チームだったので。ここまでのチームになるとは想定していなくて、日本一を目指そうとは思っていましたがそうは言ってもなかなかなれるものではないので、3年くらいやってみようかなと思って始めました。

――それが全国優勝をするチームになったんですね。実際、47というブランドのキャップだったりとHIP-HOP系のブランドも取り入れたり、かなりファッションにも力を入れていますよね。

野球はギア(道具)もアパレルも多いので、ファッション性は当初から意識していましたね。ユニファームも毎年新しくしています。デザインも変えていますし。グリーンを基調としていてブラックがセカンドカラー、(この日は土曜日で)日曜日はグリーンと赤のユニフォームを着ます。

――では今2パターンなのですね。

4パターンあります。

――4パターン!? そんなにあるんですか。それだけ作ると普通は金銭的に選手の負担になりそうですが、ユニフォームは提供なんですよね?

提供ですね。チームがひとつの媒体になっているので、そこにキャップの47、ユニフォームや野球用具の美津和タイガー、そして今度から新しくアメリカのスタンスがソックスのスポンサーとなります。メジャーリーグで使われているソックスですが、日本で初めてですね。

――軟式野球のクラブチームで、どのようにそういった繋がりができていくのでしょうか。

ひとつは、競技性と野球文化を自ら発信しているからだと思います。試合結果だけではなく自らのスタイルや考え方を当初からずっと発信し続けてきたので、ツールは各SNS、最近ではYouTubeなど変化はしてきていますが、徐々に浸透してきてフォローする人たちが増えてきたのかな、と。そのような現象を見て、ビジネス側もパートナーシップを組む意味を見出してきたのだと思います。

――なるほど。では、そんな東京バンバータではどんな人を選手として迎え入れているのでしょうか。

絶対条件としては「仕事をしている人」ですね。まず仕事がきちんとできることが大切で、仕事の才能やバックグランドのようなものをチーム運営に生かすし、逆にチームで得たネットワークなどを仕事に生かしてもらいます。

チーム運営では、リアルにマーケティングをしているようなものなんですね。自分たちのチームを自らが演者となって作りながらSNSなどで情報発信し、そこにフォローする人たちがいて、それで初めてパートナーシップが成り立ちます。

バンバータは「勝つ→ファンがつく→熱狂する→ビジネスが入ってくる→投資が行われて自分たちの育成に還元される」というバンバータなりのエコシステム(※)を作ろうとしているので、そういう意識の高いビジネスマンをとるようにしています。
 

※エコシステム 複数の企業が事業活動でパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かし協力しながら開発業者、販売店、宣伝媒体などが消費者を巻き込み共存共栄していく、という意味の経営用語。

――そこからまた新しい繋がりもできてきますよね。

そうですね。だから、引退してからもみんな関わりがあります。

――設立してから10年になるんですよね。10年でここまで大きくできた、という感じなのでしょうか。

はい、ちょうど10年になります。今は次のバンバータを作れる人間を優先的にとろうという指針を掲げています。今までOBが支えてきたチームなので、野球しながら次のバンバータを作れる人材を入れたいですね。

とにかく僕らがやってきたことって、常にチャレンジというか枠にとらわれない、毎年同じことをやらずに新しいことをやってきたんですよ。どうしても日本一とかとると守りに入りたくなるんですけど、常に新しいスタイルを目指しています。ここからまた次のステージです。

――具体的に今年の目標はなんでしょうか。

今年は天皇杯と国体のどちらかで東京代表をとるということが悲願なので、そういう思いで冬場からやってきました。
 

――今までのお話を聞いていると、練習環境が整っていなかったり練習時間が十分にとれなかったり、というようなクラブチームが企業チームより不利だとよく言われている部分を言い訳にすることなどないと感じますが、実際週末しか練習できないような環境の中でどのように成長していっているのでしょうか。

逆に環境がある方が考えなくて、環境がない方が考えるべきことが増えるので、そういう意味では野球って考えるスポーツだと思うのであまり環境はハンディキャップだと思わないんですよね。あとクラブチームって、年齢バラバラ職業バラバラ住まいもバラバラなのでそれが逆に有利かなと思っているのですが、それを実証できていないのでそこは勝ってからですね。

クラブチームはあらゆる選手を獲れますからね。企業は抱えなければならない。僕も会社を経営しているからわかりますけど、抱えるって大変なので。抱えてしまうとダメだった人も切れないですが、クラブチームはいくらでも入れ替えができますからね。

――ではクビを切った人もいるんですか!?

それはさすがにないですけど(笑)。

――東京バンバータには輝かしい実績のある選手が多数所属していますが、ライバル心などの部分はどうなのでしょうか。

それはやっぱり野球やっている以上はかなりあると思います。ただ非常に仲がいいので、一生の友達になれるという感じでおもしろいんじゃないですかね。

――監督から見て注目の選手はいますか。

一番人気があるのは、亀谷(孝一郎投手・パナソニック)ですね。地方に行ったらみんな亀谷を観に来るくらいです。

――パナソニックの選手だった時代のファンの方がいっぱい来られるんですか?

いや、バンバータの亀谷を観に来るんです。やっぱりSNSの効果、特にYouTubeの影響が大きいとは思うんですけど、亀谷の影響力は大きいですね。

――ずっと硬式野球をやっていてバンバータで軟式野球をやることになった選手も多いと思いますが、慣れるまで大変ですよね?

大変ですね。やっぱりボールも違うので。赤川(克紀投手・東京ヤクルトスワローズ)なんかも最初全然投げられなかったんですけど、ようやく今年くらいからですかね。

――東京バンバータではキャップなどのグッズも販売されていますが、売り上げが良いとお聞きしました。どんな方が買っているのでしょうか。

具体的な属性はとっていないですけど、東京にあるチームだから東京に偏っているかといったら全然そんなことはなくて、地方の方が売り上げは高いです。グッズの収入だけでだいたい月100万円以上あり、そこにスポンサー収入、それから自分たちが着たものはオークションに出します。それがさらに収入となります。

――えー! オークションでの売り上げもあるんですか。

そうなんですよ。給料をもらって野球をやっているわけではないので普通は道具を買えなくて困ったりすると思うのですが、僕らは困ったことは一切ないですし、十分なチーム運営ができています。

――今後、東京バンバータとしては何を目指していくのでしょうか。

アマチュア野球運営の、ひとつのロールモデルになりたいと思っています。お金がかかるから企業がスポンサーになったチームを作って、でも企業がつらくなってやめちゃったらチームがなくなってしまうというのはおかしいとずっと思っていたんですよね。業績が悪くなったら野球部をなくす、それに誰も抵抗できないというのは変だなと。

自ら誰に頼らなくてもチーム運営ができる、むしろ人がお金を出して喜ぶような仕組みを作ってしまえばいい。一社スポンサーではなく、まさにクラウドファンディングの発想ではないですけど、一般市民だったりファンだったりそういったコミュニティが支えるものがあった方がいいと思います。

マイナースポーツもそういう運営モデルが必要だと思うので、バンバータはそれでやれていますけど、どうやったら同じように展開できるのかというひとつの型のようなものを作っていけたらいいと思っています。

――そこで今回クラウドファンディングを利用するのですね。具体的にクラウドファンディングにどんな可能性を見出しているのでしょうか。

クラウドファンディングというは、基本的には「チームとの関わり方が近くなるもの」だと思っています。

プロ野球だと、選手との距離もそうですし球団運営に関わるには規模が大きすぎて遠いですよね。我々くらいの規模のアマチュアだと、今小学生のジュニアチームができて、これから中学生のチームもでき、女子も含めて野球のすそ野を広げていければいいと思っていますが、今後大きくなったとしても関わる人がどんどん増えてきて、その人たちが支えるようになる。コミュニティが支える理想の形です。

――そこでなぜ、“スポチュニティの”クラウドファンディングなのでしょうか。

スポチュニティさんの目指しているものが同じだと思ったからです。我々はクラウドファンディングを利用してくれる人を「支援者」「スポンサー」などではなく「パートナー」と言っているんですけど、それはwin-winの互換関係にあればいいと思っているからです。だから選手もどうしたら売り上げが上がるのかというのを常日頃意識しています。
 

――では、パートナーとなってくださる方々にメッセージをお願いいたします。

バンバータに関わるというのは選手になる、ベンチに入るということだけでもなくて、今はジュニアチームもやっているので親御さんもそうですし、応援してくれるチアの子たちもいるので、関わり方って人それぞれだと思います。グッズを作ったり、応援が派手だったり、YouTubeを作ったり、それぞれがそれぞれのバックグラウンドを生かせるような関わり方ってあると思うんですけど、それが今回のクラウドファンディングでやってみたいと思うことのひとつです。

バンバータで新しい野球チームの運営モデルというのを作っていきたいな、と思っています。チーム運営ってみんなやりたいと思うんですけど、どうやっていいかわからないと思うんですよね。実際バンバータに入ってみるとよくわかると思うし、チーム愛ってこんな風に作られていくんだとか、ブランドってこんな風に立っていくんだなというのがわかってくると思うので。

一緒にチームを作っていくというような、選手であったり、少額出資だったり、現物支給でサポートするというのもそうかもしれないですし、あらゆる関わり方があると思います

――今回、出資者のリターンの中にバン記者(特定の球団を担当する”番記者”のバンバータ版)になる権利もあり、自分の好きなチームを世の中に発信していくことができますよね

そうですね。そういうことをやりたいという人も中にはいるでしょうし、その中でバンバータという象徴的なチームを使って自分の能力や表現したいことを表現してくれれば、ネタはいくらでも提供できるのでいいかな、と思います。

一緒にチームを作っていきましょう。

 

東京バンバータのパートナーになりたい方はこちらをチェック!

https://www.spportunity.com/tokyo/team/272/detail/

 

山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

関連記事