社会人野球、新風を吹きこむ若手選手に注目①
今年も社会人野球のシーズンが始まりました。全国各地で次々と行われている大会はどれも魅力的ではありますが、同時期に開催されているものも多いため、なかなか全てに足を運ぶことができないのが残念です。
今回は、3月に行われた「東京スポニチ大会」とつい先日行われた「日立市長杯選抜大会」に出場していたチームの中から、今後が楽しみな若手選手を中心にお話を聞いてきました。7月には社会人野球の頂点を決める都市対抗野球大会も控えていますので、今のうちに期待の選手を要チェックです!
3月11~14日で行われた東京スポニチ大会には16チームが参加しました。4チームごと4つのブロックに分かれリーグ戦を行い、それぞれのブロックで1位となった4チームが準決勝に進み、勝った2チームで決勝を戦います。
埼玉県狭山市に拠点を置く「Honda」とその名のとおり熊本県に拠点を置く「Honda熊本」、大会史上初のHonda対決となった決勝戦は狭山市のHondaが勝利。この大会は秋の全国大会「社会人野球日本選手権」の出場を賭けた大会でもあり、Hondaは今シーズン一番乗りで出場権を獲得しました。
この大会で首位打者(打率 .529)となったHondaの松田進内野手は、中央大学時代からドラフト候補の大型ショートとして注目されていた選手。現在はサードを守りますが、187cmの長身でも機敏にこなす守備や一発の期待と広角にも打てるバッティングで、チームを勝利へと導きます。
俊足、好打のアベレージヒッター
そんな東京スポニチ大会出場チームの中で、昨年からずっと気になっていた選手にやっとお話を聞くことができました。昨秋の都市対抗野球大会でベスト4となった東芝所属の岡部祐太外野手(國學院大・2年目)です。
東都大学野球連盟に所属する國學院大学出身の岡部選手。強豪ひしめき合い戦国東都とも言われるこの東都リーグで、常に上位にい続ける國學院大學のレギュラー、ベストナインにも選ばれたことのある岡部選手が、社会人2年目となった今どのような考えで野球をやっているのか、聞いてみました。
――社会人2年目に入りましたが、一年間やってみて大学時代とどのような違いを感じていますか。
チームのレベルが高いと感じます。相手ピッチャーもコントロールや変化球のキレが良く、最初はなかなか対応できず、去年の一年間が野球をやってきて一番つらかったです。
――そんな状況から今はレギュラーに定着していますが、どうやって乗り越えたのですか。
あきらめずにいろいろな人から話を聞くようにしました。チームの中でもそうですし、他チームの元チームメイトに聞いたりもしました。
――具体的に大学時代と今ではどんなところが変わりましたか。
打席での意識が変わりました。大学時代は考えない方がいい結果が出ていたので、あまり考えずに淡々と打席に立っていましたが、社会人になってからは場面ごとに考えてやることでヒットが出るようになりました。
――今後の目標を聞かせてください。
アベレージを残すことと安定した守備で、周りに安心感を与えられるようになりたいです。
チーム内で仲の良い選手は同期の岡野祐一郎投手(青山学院大・2年目)だそうで、他のチームでも元チームメイトなどの成績はチェックするのですか、という質問には「しますよ! やっぱり気になりますから」と笑顔で答えてくれました。
どんな質問にも終始笑顔で丁寧に答えてくれた岡部選手、打席では粘りに粘って打てる球に狙いを定め、俊足でベースを駆け抜けます。走攻守、そして人柄の良さまで揃った岡部選手に今年はぜひ注目してください。
初戦から結果を出したルーキー
昨秋の「明治神宮野球大会・大学の部」で、北海道勢初の全国大会準優勝となった星槎道都大。その星槎道都大で4番を務めていたのが、今年から日本製紙石巻でプレーする石黒凌外野手です。社会人になって初の公式戦となった「東京スポニチ大会」の初戦、石黒選手は1番センターで出場し2安打と結果を残しました。
――初の公式戦ですでにヒットが出ましたが、新しい環境はどうですか。
チームの雰囲気もいいのでのびのびやらせてもらっています、プレッシャーなどもなく、大学と変わらずできています。レベルは大学とは全然違いますが、(この日試合が行われた)神宮はボールが見やすいのでやりやすいです。
――練習は大学時代とどう違いますか。
個人練習を重視しているところです。やりやすいと感じます。
――初めて北海道から出て宮城県石巻市に住んでみてどうでしょうか。食は合いますか。
北海学園札幌高校、星槎道都大学と実家から通っていたので、寮生活自体が初めてなんです。ずっと実家のご飯を食べていましたが、石巻の食は合いますね。先輩方が良くしてくれるので、寮生活も不自由ないです。4月からは車に乗れるのですがまだ乗れないので(取材当時は3月)、先輩にアウトレットに連れて行ってもらったりしました。
――特に仲の良い先輩はいるのですか。
浅沼(佑亮/東北福祉大・2年目)さんは、アップとか一緒にやってくれます。
この日は3月11日。東日本大震災からちょうど7年ということで、試合前に黙とうも行われました。当時石黒選手が住んでいた北海道北広島市は震災の影響はない地域でしたが、石巻市民となったことで感じることがあったようで、石黒選手の方から「今日は3.11ということで、チームでも東日本大震災についての話がありました。僕も意識していかなければと考えました」とお話ししてくれました。
積極的なバッティングが持ち味の石黒選手、今後の活躍が楽しみです。
チームNo.1の守備
レベルの高い野球になればなるほど、守りの堅いチームが最後は勝つのではないでしょうか。新日鐵住金東海REXの中村監督に「守備はチームNo.1」と言わしめた名手、西浦丈司内野手(國學院大・3年目)。この日も守備がためで途中出場し、ファインプレーを見せた西浦選手に守備について聞いてみました。
(写真は2017年の都市対抗野球大会)
――今日はショートでの出場でしたが、どこを守ることが多いのですか。
大学時代はサードでしたが最近はショートで、セカンドのときもあります。
――守備のときにどんなことに気をつけているか教えてください。
試合の終盤に出ることが多いのですが、常にどんなバッターかを観察しています。その打席ごとにどこに打球が飛ぶかなどを考えますし、打席の積み重ねでそのバッターの傾向を考えたりもします。出場してからは、配球も考えながらちょっとずつ動いて守備位置を変えています。
――どのようなグローブをつかっているのですか。
久保田スラッガーで、できるだけにぎらないグローブにしています。当たったら自然ににぎれるように、すぐ投げられるように、です。皮がいいから動きやすいし、分厚くもなく機能性がいいです。
――でも、皮が薄いと捕球するとき痛くないですか。
痛いですが慣れました(笑)。
――本当にほれぼれする守備ですが、バッティングも見たいです。
もっと打ちたい気持ちもありますが、今は与えられた役割で頑張ります。
この守備を観るためだけに球場に足を運んでもいい、そう思わせるような西浦選手のプレーをぜひ生で堪能してください。
力をつけてきた注目のチーム
「東京スポニチ大会」には、昨年練習グラウンドまで取材に伺った明治安田生命も出場していました。この日の試合は残念ながら負けてしまったのですが、何人かの選手に少しだけお話を聞けました。
まずは、ベテランでも自ら声を出してチームを盛り上げていく宮川翔太外野手(国士舘大・7年目)からです。
――宮川選手、今年の調子はいかがでしょうか。
コンディションはいいです。チームの雰囲気もいい感じです。足元をすくわれないように、ベテランでも頑張っていきます!
次に新人の2選手に一言いただきました。法政大の主将だった森龍馬外野手と、「全日本大学野球選手権大会」で2本のホームランを放ち立教大の全国制覇に貢献した大東孝輔内野手です。
――森選手、社会人野球でプレーして感じることと今後の目標を教えてください。
みんな細かいところまで考えて野球をしているな、と感じます。早く同じ土俵に上がって活躍できるように頑張ります。
――大東選手はいかがでしょうか。
ピッチャーの球質が違います。一人ひとりの違う特徴に合わせていけるようにしていきたいです。
そして、野性的な守備が魅力の吉田大成内野手(明治大・2年目)。
――今年のチームの雰囲気はいかがですか。
積み上げてきたものが形になっていなくて、あとひとつというところなんですけど。負けていても一人ひとり、何ができるかを考えています。若いチームなので、若さをメリットととらえて覇気を出してやっていこう、という雰囲気でやっています。次の大会では歯車が噛み合うようになればいいですね。
――吉田選手自身の調子はいかがですか。
自分の中でわからなくなっている部分もあるので、原点に返ってしっかりバットを振るようにしていきます。
まだ最初の大会ということで、いいスタートを切ったチームもまだ新体制が確立していないチームもありましたが、冬を越えてまた一回り成長した選手や新しい環境に飛び込んできた選手など、楽しみな選手がたくさんいました。
みなさんも、全国で行われている社会人野球の大会に足を運んで、注目の選手のプレーをその目で見てみてください。
社会人野球JABAのHP
http://www.jaba.or.jp/index.html
次回「社会人野球、新風を吹き込む若手選手に注目②」では、「日立市長杯選抜大会」出場チームの中から注目の選手をご紹介します。