100年をこえる歴史ある大会を守りたい!!〜その3・早慶レガッタ大会レポート〜
2021年4月18日、春を彩る早慶レガッタが2年ぶりに隅田川に帰ってきた。
3750メートルという長距離を猛スピードで進む2艇の姿は見る人の心を揺さぶる大激闘であったが、大会を開催するまでの道のりは決して平坦なものではなかった。
学生たちが口を揃える、
「多くの人の支えで開催できた」
とは。
その挑戦の影にはどんなことがあったのだろうか。
今回は早稲田大学漕艇部船木主将(左)、国府田主務(右)
慶應義塾体育会端艇部 朝日主将(上)、萩原主務(下)に早慶レガッタとクラウドファンディングへの挑戦についてお話を伺った。
悲願の勝利!慶應義塾体育会端艇部が隅田川の王者に
青空の下、二艇のボートは3750メートルという長距離コースをほとんど並んで漕ぎ続けた。
春の隅田川を強い水しぶきを上げながら熱く進んでいく姿には遠目からでも選手の激しい息遣いが伝わってくるようだ。
駒形橋、吾妻橋ではまだまだわからず。
言問橋では慶應大学がわずか4分の1艇身のリード。そしてゴールの桜橋。
どちらが優勢なのか誰にも全く分からないままゴールに飛び込んだ二艇のボート。
両手を高く天に突き上げ、雄叫びをあげたのは慶應大学だった。
慶應・朝日主将:僕が入部する以前から慶應は勝てていなかった。
慶應が勝つ雰囲気がどういうものか手探りで練習し、その結果9人でしっかり勝てたのは自分たちにとっても価値があること。
端艇部に財産を残せたのではないかと思っています。
早稲田大学の4連覇は1秒差で届かず。
直前に繰り広げられた第二エイト、女子の戦いの勢いを乗せ、連覇に臨んだ敗北の結果に、漕艇部・船木主将は悔しさをにじませる。
早稲田・船木主将:秒差で言うと1秒というわずかな差ではあるんですけれどもそれよりも負けたことをしっかりと受け止めないといけない。
自分が入部したときから早稲田が勝っている姿をずっと見てきていたので、いざ自分が最高学年として連覇をつなげる立場になった時に、それが出来なかったことをとても悔しく思っています。
驚異の31連覇!隅田川の女王は早稲田大学!
女子はスタート直後から快進撃を見せた早稲田大学が、そのまま大きく慶應大学を引き離してゴールし、31連覇を手にした。
長らく隅田川の女王として君臨している早稲田大学だが、去年の中止によって、今回のクルーは、全員が隅田川を経験したことがないメンバーとなった。
早稲田・国府田主務:誰も隅田川を経験していないことに加えて31連覇のプレッシャーは、すごく大きなものだったと思いますでした。
その中で31連覇を見事達成した女子エイトチームのことを本当に尊敬しています。一番近くで応援していて本当に良かったと思いました。
早慶レガッタ復活の影にあった多くの支え
早稲田大学漕艇部・国府田主務は
「あれだけの熱戦を繰り広げられたのは両校の想いの強さの表れ」
と語る。
去年は新型コロナウィルスの影響で早慶レガッタの中止が発表され、涙した先輩たちの姿を見た。
2年ぶりの隅田川への想いは例年にも増して特別なものだったのだ。
早稲田・船木主将:去年の早慶レガッタ中止や、思うように練習できないというコロナの影響下で、今年無事に開催出来たことはいろんな人たちの支えがあったからこそ。
慶應・朝日主将:去年出場できなかった上級生や、同期や後輩の励ましが、普段から練習の支えになっていました。
本当に感謝の言葉しかありません。
もっとたくさんの人に届け!クラウドファンディングへの挑戦
今年は例年以上に人の支えを感じた大会になったという。
その背景にはクラウドファンディングへの挑戦も大きかった。
新型コロナウィルスが競技生活だけでなく地域の経済にも打撃を与える中、早慶レガッタをつなげるためには今までとは違う方法を模索しなくてはならなかったのだ。
慶應・萩原主務:最初はアイデアベースのところから始まったクラウドファンディングですが、プロジェクトが進んでいく中で本当に多方面からご支援頂きました。
ご支援いただいた方の中にはボートファンだったり、OBだったりと様々な人がいらっしゃったんですが、多くの人に支えられていることをリアルに実感できて、個人的に楽しい企画だったと思っています。
早稲田・国府田主務:今まで以上に早慶レガッタを支えてくださる方の多さ、想いの強さを直接感じることができました。
また色々なプロジェクトを通して、新しい告知のやり方を考える等と、早慶レガッタという大会自体が大きく前進したと思います。
夏の大会、また来年以降の早慶レガッタで早稲田の悔しさを絶対に晴らして、もっと素晴らしい早慶戦ができるように部員一同頑張っていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
戻ってきた隅田川!早慶レガッタの復活
いまだ新型コロナウィルスが猛威を振るう社会の中で
「今回の早慶レガッタという大会を開催できたことは社会的な意味があると思っている」
と慶應・萩原主務は語る。
慶應・萩原主務:今新型コロナウィルスの影響で色々なことができない中、あの大舞台を作りあげられたのは、本当にこれまでの早慶レガッタの歴史を支えてくれた皆様の力があったからこそ。
中止によって1年空くというのは思った以上の影響だった。
新型コロナウィルスによって様々なスポーツイベントが中止・延期する中、無観客での開催を決めたものの本当に大会を迎えられるかはまったくの手探り状態だったのである。
慶應・萩原主務:早慶戦の準備は去年の10月ごろから半年ぐらいかけて行ってきたので、ここがいちばん大変だったというのは一概には言いづらいんですけど、やはり今年は新型コロナウィルスの影響があったので、開催できるかどうかわからないというところからスタートというのは大きかったです。
早稲田・国府田主務:サポートするメンバーも早慶レガッタを経験してない部員ばかりでしたので、どのように大会を運営するかだけではなく、どのようにチームをサポートし、どのように勝利に導くのかは難しいポイントでした。
慶應・萩原主務:規模縮小や無観客開催を計画し、いろいろ苦労しながら何とか開催にこぎつけられたのは、OBの皆様や、さまざまな人の協力が形になったことだと思っています。
激闘は未来へ!学生ボート界を背負う早慶レガッタへ
90年の歴史を持つ早慶レガッタは隅田川の春の風物詩として季語になることもあるという。
三大早慶戦の一つであり、世界三大レガッタに名を連ねるこの大試合を2年ぶりに開催できたことは、選手たち自身に大きな励ましとなった。
慶應・朝日主将:早慶戦は3750メートルでしたが、これからのレースは2000メートル。
全く違うレースになるのでここから選手の強化をもう一度ゼロベースから始めて行かなきゃいけない。
慶應大学は長い間インカレのファイナルに進出しておらず、日本一から遠ざかっているのが現状です。
今年こそ必ず決勝に進み、そこで早稲田とバチバチの試合をしたいと考えています。
早稲田・船木主将:今シーズンで最後になる僕は、次のインカレ、全日本選手権で引退となってしまうんですけれども、そこに向けて全力を尽くしてきます。
早慶戦で負けた悔しさを忘れず、インカレや全日本選手権で雪辱を果たしたいと思っています。
早稲田と慶應が日本のボート界の中で、トップを行く大学ということになれば、もっともっと早慶戦の価値も高まる。
そういう意味で他大学もいる中でもう1回気を引き締め、しっかりと頂点を目指してやっていきたいと思っています。
隅田川で見せた死闘は、学生アスリートたちが、このコロナ禍の中、諦めずに頂点を目指し続けている姿の象徴。
早慶レガッタを終え、未来を力強く語る両校はこれからも挑戦し続ける勇姿を我々に見せてくれるだろう。