元アスリートが語る スポーツの仕事「やる」から「つくる」へ- Vol.4 -元女子サッカー選手小田加奈子さん~前編~
2年間の選手生活「輝ける場所はどこだろう」
現役時代の小田さん
小田加奈子(おだ・かなこ)さん/24歳
サッカー選手→ガス会社勤務(東京ガスライフバル社員)
(出典:Sports Japan GATHER「元アスリートが語る スポーツの仕事「やる」から「つくる」へ- Vol.4 -元女子サッカー選手小田加奈子さん~前編~」2015年7月1日)
「澤穂希さんとかと比べたら、すごく短い現役時代ですよね。会社の人からも「えっ! まだまだできるでしょ」って言われました」
2人の兄の影響で、本格的にサッカーを始めたのは小学校4年生。以来、中学校、高校、大学と「それ以外に目標はなかった」という小田加奈子さんが、大学卒業後の進路に選んだのは、もちろんサッカーだった。東京のクラブチーム「スフィーダ世田谷FC」で順調に始まったプロアスリートとしての人生。
だが、女子サッカー界では競技だけで生活していける選手は、まだひと握りしかいない。小田さんもサポート企業である「東京ガスライフバル」で昼間フルタイムで働きながら、夜は練習、週末には試合という生活を送っていた。
「私にとってサッカーは仕事というよりも、自分を表現する場所でした。元々、自分のレベルじゃサッカーだけで生活していくことは無理だと思っていましたから」
仕事とサッカーで、遊ぶ時間はほとんどなかったが、働きながら競技をするのは当然の事だと思っていた。しかし、充実した毎日を送っていたはずの心の中に「サッカーを辞める」という気持ちが浮かび始めたのは、2年目のシーズン。
「スポーツって高いレベルに行けば行くほど、自分のチカラの通用するもの、通用しないものがモロに見えてくるんです。スフィーダに入ってからは、試合にもなかなか出るチャンスがなくなって。次の年にプレーしている自分の姿が想像できなくなったんです。目標があっても叶わない事があるなって感じた部分が、正直あります」
シーズン終了後には引退を決断。経験を積んで人間関係もできあがってきた仕事が面白くなってきたことも、大きな理由だった。
「私の中では「3」っていう数字がキーになっていて。サッカーも仕事も3年目を迎える前に“自分がイキイキできる場所、輝ける場所はどちらだろう”と考えたとき、仕事だと思ったんです。だから今年は絶対に仕事で飛躍の年にしてやる、っていう目標が自分の中にあって。来年の今頃はみんなに“うわっ、変わったな”って思ってもらえるようになりたいです」
心がけているのは、お客さまに合わせること
職場での小田さん
小田さんは、現役時代と変わらず朝8時までには出社、9時にはスクーターでお客さんの自宅や現場へと向かう毎日だ。
仕事の内容は、都市ガスの検針、開閉栓、安全点検、ガス機器の販売、設置、修理など。特に多いのは、引っ越しの際のガスを使用するうえでの開栓、使用を停止する閉栓作業やガス漏れ警報器の設置作業で、忙しい時期は一日20件以上訪問するという。
「いろんな人に出会う楽しみがありますね。私たちの業界用語で“ハマる”って言うんですが、お客さまとの会話がはずんで、なかなか切り上げられないことがあるんですよ。話の流れで、なぜかゴルフのレッスンをしていただいたことも…。でも、それもちょっと楽しくて。大事なお付き合いですからね」
会社の制服姿に着替えると元アスリートには見えない、小柄で元気なお姉さん。自分でも“話し好き”という営業向きの性格も幸いして、警報器の販売・設置率でトップの成績をあげることができた。その実績が評価され、今年からキッチンやお風呂のリフォームも手がける“生活提案チーム”にも配属された。
「人に認めてもらえる実績を残せたっていう感覚。それが、どんどん仕事を面白くさせていきました。引っ越して来た人のお宅に伺い、ガスを安全に使用してもらうための開閉栓作業をしているだけだったら、ただ仕事をこなしているだけだったかもしれません」
誰かの役に立てているという実感と、評価される結果がきちんと出せるところが「自分の居場所」。そこには、自分が輝くための工夫もある。
「ひとりひとりのお客さんに合わせることを心がけています。第一印象を大事にしているので、初めてお客さまに電話をかける時は特に気をつけています。ゆっくり喋る人には私もゆっくり喋って、早口の人にはテンポよく、声のトーンが高い人なら合わせて高くします。正解は分からないんですけど、いろいろ模索しています」
※データは2015年7月1日時点
東京ガスライフバルの社員として、毎日お客さんの所へ向かう小田さん。『人との出会いを大切に』をモットーに仕事に励む
記事提供:アスリートのための、応援メディア Sport Japan GATHER
https://sjgather.com/