• HOME
  • コラム
  • サッカー
  • WEリーグ元年に挑む!「ノジマステラ神奈川相模原」の個性とチームワークから目が離せない

WEリーグ元年に挑む!「ノジマステラ神奈川相模原」の個性とチームワークから目が離せない

いよいよ始まる新時代のリーグ「WEリーグ」

2021年9月から日本初の女子プロサッカーリーグとなる「WEリーグ(Women Empowerment League)」が開幕する。

1年目は11チームでスタートする。これがオリジナル11だ。日本女子サッカーリーグの上位に位置する最高峰のリーグで、国内サッカーリーグとしては初めて秋春制で設定され、最低年俸も設定されることとなった。

WEリーグが思い描くのは、名実ともに日本女子サッカーの世界一奪還。

2011年にFIFAワールドカップでなでしこジャパンが優勝したものの、すでに10年も前の話になってしまった。

東京五輪でも善戦したものの、スウェーデンに惜敗し、ベスト8に留まり、立て直しが急務である。

WEリーグの理念およびVISIONにも世界一への意識が強く現れている。

理念:女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。

Vision:
Vision1 世界一の女子サッカーを
Vision2 世界一アクティブな女性コミュニティへ
Vision3 世界一のリーグ価値を

WEリーグは女子スポーツの普及・促進を引っ張っていく。

オリジナル11は以下のチームだ。

・マイナビ仙台レディース
・三菱重工浦和レッズレディース
・大宮アルディージャVENTUS
・ちふれASエルフェン埼玉
・ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
・日テレ・東京ヴェルディベレーザ
・ノジマステラ神奈川相模原
・AC長野パルセイロ・レディース
・アルビレックス新潟レディース
・INAC神戸レオネッサ
・サンフレッチェ広島レジーナ

なおWEリーグは11団体が決まったことによって次のような概要となる。

・全22節、1節あたり5試合(1団体は競技活動以外でリーグ理念実現に向け活動)
・5000人以上収容のスタジアムの確保。
・試合だけでなく周辺イベント力も強化する。試合会場とその周辺でのハード面の充実も必須。
・リーグはなでしこリーグ(1部・2部)の上位に置かれるが、当面は降格がなく、新規参入のみ。
・目標として観客動員数は1試合平均5000人。
・プロA契約選手5名以上およびプロB・C契約選手[最低年俸270万円(消費税別)]10名以上と契約を締結すること。外国籍選手は5人まで登録が可能。
・監督はJFA・S級(またはS級相当)、JFA・A-Proの指導者資格を有する者。もしくはS級資格取得講習会を受講中の者(ただし、女性に限る)。
・U-18、U-15、U-12チームを保有すること。(ただし、U-18チームの保有は入会より3年以内。U-12についてはスクールまたはクリニックで代替可)
・3年以内にクラブ運営法人の役職員の50%を女性にする。役員にも最低1人は女性を登用する。外国籍選手は5人まで登録が可能。
・チーム名について、事前にリーグの承認を得た場合、呼称にはスポンサー名、ブランド名等を含めることができる(ネーミングライツ認可)。また略称(原則4文字)には地域名を入れなければならない。

最低年俸制度を設定したこと。法人の役職員の50%以上の女性、また役員に1人は女性の採用など、アクティブなVision2にある女子コミュニティの構築への意気込みがリーグ概要からも読み取れる。特筆すべきは、女性特有のライフイベントである妊娠・出産への配慮として、活動再開時は登録期間外でも登録が可能となる。

理念、Visionそして体制含め今後の女子スポーツの新たなレガシーとして引き継がれてほしい内容である。

WEリーグ参入によりグループに分かれていた意志が統一された「チームワーク」

ノジマステラ神奈川相模原(以下ノジマステラ)はオリジナル11で、Jクラブでない、女子サッカーに特化したプロクラブである。「ステラ」はイタリア語で星を意味する。まさに、神奈川の星だ。

ノジマステラは2012年に家電量販店の「ノジマ」が全額出資して創設され、女子単独チームとして2017年からなでしこリーグ1部で戦ってきた。選手はノジマの社員として午前中に社業を行った後、午後から練習ができた。また専用の練習場もあり、なでしこリーグ1部に所属していた時代でも環境に恵まれたクラブの一つだった。今年からはプロクラブに生まれ変わった。プロ選手は社業がなくなり、サッカーに集中できる環境となった。

他のWEリーグ参加チーム同様、仕事とサッカーを両立させていた。それがプロリーグの発足により、サッカーだけに集中できる環境が整いつつある。選手たちからは「プロとして」という言葉が出てくるようになり、前向きな意見が多く聞かれた。プロになったことにより個々の意識も大きく転換している。

キャプテン松原選手がノジマステラを牽引する

ノジマステラの今年の注目選手はキャプテン松原有沙選手。副キャプテン大賀理紗子選手と平田ひかり選手であり、加えて、セレッソ大阪堺レディースからノジマステラへ新加入し、背番号10を背負い軸となるMF脇阪麗奈選手だ。

ディフェンスラインにはDF大賀理紗子選手の復帰が見込まれる。失点に課題が残る最終ラインは、安定感が増してくるだろう。第1節マイナビ仙台レディースとのゲームでは、相手の猛攻の中で、大賀選手がペナルティエリア内からボールをはじき出すシーンを含め粘り強い守備を見せていた。

キャプテン松原選手は、
「自分の持ち味であるロングキック、展開力、対人能力を生かしながら、マイボールを大切にしたい。1対1に強くなるため、体幹トレーニングなどで身に付けるフィジカルより技術(ステップなど)を重視している」と語る。

「チームワーク」の重要性を説く平田選手

平田選手は「ディフェンスの時間が長くなることも多いだろうが、全員守備から裏へ抜け出し、1点をもぎ取っていきたい」と語る。

九州出身の平田選手は関東の人をせっかちとみている模様。自身についてマイペースな性格だと言う平田選手は、虎視眈々とスペースを狙って1点をもぎ取っていく。

今年のノジマステラの特長は「団結力」だという。昨年まではいくつかのグループに分かれ、それぞれのベクトルがあったようだが、若い新戦力が増え、一枚岩となり、結束力はこれまでで最高潮に達していると実感しているようだ。

ここに至るまで「言い合える関係」が構築されたこと。これが団結力になっていると平田選手は分析する。

ディフェンスの要を任される大賀選手

前十字靱帯断裂のケガから復帰した大賀選手は、「簿記の資格を取りたい」と話す。その理由を問うと、「今後、お金の計算は全て自分ですることになるのでその知識を得たいと思いました。また(選手としての活動を終えた後の)セカンドキャリアのことも考えて、簿記を学ぼうと思いました」と語った。まずサッカーだけで食べていくこと、その次にサッカーで稼いだお金も全部自分で管理しなくてはいけない環境の変化、すなわちそれが「プロ」としての自覚の表れである。
プレーは、「センターバックとして粘り強く、失点をしないよう準備を怠らない」
と語り、ノジマステラの最後の壁として立ちはだかる覚悟をみせた。

セレッソ大阪堺レディースから移籍した脇阪選手。インタビューでは「優勝するために神奈川相模原にやってきた」と話してくれた。

脇阪選手は、セレッソとの違いを「対人プレーやスペースの抜け出しなど個々人による個性の強さがあり、その中で選手同士が意見を言い合える雰囲気がノジマステラにはある」と分析する。北野誠監督からの約束事や守備の意識等細かい指示が飛ぶが、ノジマステラの雰囲気は非常によいと感じているようだ。

今回取り上げた4選手から共通して出た言葉は「チームワークのよさ」

これが今年のノジマステラを表している。個性が強いものの、そのチームワークがよい。その中で監督の統率力が効いており、全員守備からの攻撃への意識が共通理解として根づいている。

チームワークにより化学反応が生じ、一気に頂点に上り詰める可能性にあふれている。

シーズン後の結果が待ち遠しい。

2021/09/30 一部の内容を修正して更新しました。

(取材 / 文 鈴木大介)

関連記事