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都市対抗野球大会、8強の「東京ガス」2試合でわずか3失点の投手を支える2年目・馬場龍星捕手

 11月28日から東京ドームで行われている「第92回都市対抗野球大会」。各地区の予選を勝ち抜いてきた31チームに昨年の王者・Honda(狭山市)を加えた計32チームが、トーナメント戦で日本一を目指す。 

 3年ぶり22回目の出場となった東京ガス(東京都)は、1回戦でミキハウス(八尾市)、2回戦で三菱重工West(神戸市・高砂市)に勝利し、準々決勝へと駒を進めた。 

 その東京ガスでマスクを被っているのが、2年目の馬場龍星捕手(八戸学院光星→日体大)だ。ルーキーだった昨年も都市対抗東京都予選でスタメン起用されていた馬場だが、チームは予選敗退となってしまった。1年の時を経て、今年、東京ガスは東京都第一代表での本戦出場を勝ち取った。

バッターボックスに立つ馬場龍星捕手

  山口太輔監督が「落ち着いて試合作りができて、勝ちの展開に持っていけるキャッチャー」と評する馬場は、この1年でどんな進化をしたのだろうか。 

初めての都市対抗野球大会 

 チームとしては3年ぶり、馬場にとっては初めて辿り着いた都市対抗という夢舞台。ルーキーの益田武尚投手(北九州市立大)とバッテリーを組み、ミキハウス(八尾市)との初戦に臨んだ。「都市対抗前のオープン戦から良かった」という150キロ前後のストレートを軸に、3回までパーフェクトの投球を見せた益田だったが、4回、先頭にストレートの四球を与えると、そこから2本の適時打を打たれ2点を失った。 

 馬場は、のちにこの場面を「シュート回転するボールが増え、精度が少し悪くなって、中に入ったボールや浮いたボールがいい当たりにされたと思います」と振り返っている。5回、意識的に変化球を増やしたことで、序盤はストレートの一点張りだった相手に迷いが出た。その結果、ストレートも生きて無失点に抑えることができた。益田は、5回2失点と試合を作ってマウンドを降りた。 

「益田の場合、普段はピンチになるとずるずると点を取られちゃうんですけど、そこを2点で踏ん張れたのは本人的にも自信になったのではないかと思います」 

 その後も馬場は三宮舜投手(明治安田生命から補強/6年目・慶應義塾大)、宮谷陽介投手(8年目・筑波大)、臼井浩投手(5年目・中央学院大)を好リードし、最後まで追加点を与えずに切り抜けた。試合は3-2で勝利。2回戦も5-1で三菱重工West(神戸市・高砂市)に勝ち、8強入りだ。

 

投手陣を落ち着いてリードする

 べらぼうに肩が強い、あるいは打撃で目立つ成績を残している。そのくらいのインパクトがあれば別だが、捕手というポジションはやはり縁の下の力持ちで、スコアボードにゼロを並べても注目されるのは投手の方が多い。必然と、試合後の取材でも質問は「捕手から見た投手の出来について」になりがちだ。 

 馬場も例外ではない。ここまで攻撃面で3つの犠打を確実に決め、盗塁も刺しているが、目立つ捕手かと言われればそうではないだろう。 

 だが、馬場には誰もが持てるとは限らない「経験」という武器があった。 

日本一の景色を見たことがある捕手 

 2017年春。当時、日本体育大学2年生だった馬場は、すでに公式戦でマスクを被っていた。松本航投手(現・西武)と東妻勇輔投手(現・ロッテ)の2枚看板を擁する日体大は、この年の秋に首都大学野球リーグで優勝を果たし、明治神宮大会に出場。初戦から決勝までの3試合で得点が14に対し失点はわずか1と、守りの強さを存分に見せつけて日本一まで上り詰めた。全試合フル出場した馬場も、言わば「日本一の捕手」となったわけだ。 

日体大時代の馬場龍星捕手(左)、辻孟彦コーチ(中)、現ヤクルトの吉田大喜投手(右)

 このときのスタメンは全員、大学卒業後にプロ野球、又は社会人野球でプレー。馬場自身も2020年に東京ガスの一員となった。1年目からマスクを被る機会に恵まれ、馬場はどんどん経験を積んでいった。 

 大学野球に比べて、社会人野球はすべてにおいて精密さが必要になる。投手は大学時代より狭くなったストライクゾーンに対応しなければならないし、精度の悪い変化球は見逃されてしまう。野手は、打撃では質のいい投球に、守備では速い打球に対応しなければならない。 

 そんな世界に身を置いても、馬場がものおじせず1年目からプレーできたのは、大学時代の経験があったからだろう。1学年上には松本、東妻、同学年に吉田大喜投手(現・ヤクルト)、1学年下に森博人投手(現・中日)とドラフト上位でプロ入りした投手がおり、同じ社会人野球の世界で頑張っている仲間も多くいる。馬場は、その投手たちの球をずっと捕ってきた。 

「プロに行った投手の方々の、(ここぞの場面で)腹をくくってまっすぐで勝負するところなどは、とても参考になっています。そのおかげで、社会人にきても思い切ってサインを出せていると思います」 

 2年目となった今年は後輩もできて、馬場の方からアドバイスをする機会も出てきた。「大学のときいいピッチャーが多かったので、その人たちの練習の姿勢などについては、ピッチャーに還元できていると思います」。今年のルーキー益田にも「こういうことやっていたよ」と教えることがあるそうだ。 

 もちろん、過去の経験だけでやっていける世界ではない。1年目は「相手バッターではなく、どちらかというと自分と戦っていた」という馬場だったが、2年目となった今年は、チームに復帰した松田孝仁コーチの存在もあり大きく成長を遂げた。 

「試合の中での配球面や考え方については、オープン戦のときもずっと教えていただいていました。松田コーチだったらここはこういく、僕だったらこうなんですけど、というような配球面での会話がたくさんできました。それによって引き出しがすごく増えて、堂々とプレイできるようになったと思います。気持ちに余裕ができたところに一番の成長を感じます」 

送りバントを決める技術が高い

 ピンチの場面でも動じることなく、しっかりと投手をリードしている馬場は、もう立派なチームの要だ。12月7日14時からは、準決勝進出をかけてENEOS(横浜市)と戦う。スタンドからの応援を背に「日本一の捕手」を目指す。

好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。 面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

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