全日本大学駅伝 東海地区選考会レポート 代表校は皇學館大・愛知工業大 ~近年稀に見る激戦~

第54回全日本大学駅伝東海地区選考会が6月18日、愛知県岡崎市の龍北スタジアムで行われた。皇學館大が1位、注目の2位争いは愛知工業大が制した。2校が11月6日に行われる全日本大学駅伝(熱田神宮~伊勢神宮 8区間106.8km)の出場校を獲得、皇学館大が6年連続6回目、愛知工業大が3年ぶり19回目となる。

全日本大学駅伝は全国8地区(北海道・東北・北信越・関東・東海・関西・中四国・九州)で行われる選考会を勝ち抜いた大学と前年8位に入ったシード校で争う「真の大学日本一」を決める大会だ。大学駅伝では箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)が圧倒的な人気、知名度を持つが、関東地区以外の大学は出場できない。

戦前の予想は皇學館大が1位、2位は予想が難しい状況

東海インカレ(5月27日~29日 岐阜メモリアルセンター長良川陸上競技場)では皇學館大が圧倒的な選手層を見せていた。その後、エースの退部が伝えられたが、それでも1位通過が揺るがないと見られていた。一方、出場校のボーダーラインとなる2位争いは3校の争いになると見られていた。昨年2位で全日本大学駅伝出場の岐阜協立大、そして昨年は欠場※した愛知工業大、昨年4位の名古屋大の3校だ。この3校は東海インカレ出場を見送った主力選手が多く、最新の戦力は不明。どの大学が出場校を掴むのか注目されていた。

※部員が生活する寮で新型コロナウイルスの感染者が発生したため出場辞退。部員に感染者はいなかった。

選考会はトラックの10000mを8名が走りその合計タイムを競う。レースは各校2名ずつ4組に分かれて行われる。選手がどの組で走るかは出場大学が決めるため、選手配置も戦略の一つとなる。

1組目は皇學館大が大きくリード、2位争いは混戦に

1組目は17時30分スタート。まだ蒸し暑さが残る時間だ。レースは皇學館大が最初から仕掛けてきた。毛利昂太(2年・神港学園)、浦瀬晃太朗 (2年・鎮西学院)が飛び出し、ライバル校に先行する。愛知工業大、名古屋大、岐阜協立大、中京大の4校の選手は互い牽制してスローペースで進む展開。毛利は大きくリード、浦瀬はペースダウンしたものの2位でゴール。皇學館は総合タイムで2位愛知工業大と1分38秒差。1位通過はほぼ確実と見られた。

後続集団は6000mを過ぎて名古屋大・重田直賢(4年・生野)が飛び出すが、7000mから重田を追った愛知工業大・土方悠暉(2年・愛工大名電)が重田を捉え、逆にリードを奪って3位でゴール。総合タイムでは2位・愛知工業大と3位名古屋大学との差はわずか5秒、4位岐阜協立大との差は17秒。1位皇學館大がリード、2位争いが3校に絞られる予想通りの展開となった。

スタート直後、一斉に飛び出す選手たち。すぐに皇學館大の毛利昂太(2年)、浦瀬晃太朗 (2年)がリードを奪った。

1組目終了時の順位・記録

1位 皇學館大 1時間1分47秒94
2位 愛知工業大 1時間 03分25秒10
3位 名古屋大 1時間03分30秒15

 2組目~2位争いは接戦に~

2組目は3位名古屋大がエース森川陽之(修士1年・近大東広島)を投入。最初の2周こそ自重したが、そこから飛び出しリードを奪った。後続の集団からは岩島昇汰(2年・益田清風)が森川を追ったが、森川は追いつかれながらも再度引き離し、トップでゴール。

総合タイムでは順位変動はなかったが、2位愛知工業大と3位名古屋大の差はわずか0.6秒。4位岐阜協立大と2位の差は1分22秒で、2位争いは2校に絞られた。

先頭を走る名古屋大・森川陽之(修士1年)と追う皇學館大・岩嶋昇汰(2年)。

2組目終了時の順位・記録

1位 皇學館大 2時間3分44秒80
2位 愛知工業大 1時間 05分24秒18
3位 名古屋大 1時間05分24秒78

3組目~愛知工業大が力走、出場校獲得に大きく近づく~

日が落ち、体感気温は大きく下がった。その影響で2組目までと違い速いペースでレースが始まった。上位4校・8名の選手が縦長の先頭集団を形成し、3分前後のペース。中盤少しペースが落ち着いて、5000mの通過は15分19秒。そこから愛知工業大・渡邉大誠(4年・愛知黎明)が飛び出した。皇學館大・矢田大誠(3年・海星)が続き、マッチレースになるが、渡邊がトップでゴール。愛知工業大は吉田椋哉(2年・豊明)が3位に入り、総合タイム1位皇學館大との差を大きく縮めるとともに、後半に2選手が失速した3位の名古屋大と1分14秒差をつけた。最終4組の選手の自己記録を考えるとアクシデントがなければ逆転は難しい。皇學館大、愛知工業大が全日本大学駅伝出場に大きく近づいた。

愛知工業大主将の渡邉大誠(4年)がトップでゴール。総合3位との差を大きく広げた。

3組目終了時の順位・記録

1位 皇學館大 3時間5分47秒41
2位 愛知工業大 3時間 06分49秒62
3位 名古屋大 3時間08分04秒43

4組目~各校の主力が激戦、見ごたえのあるレースに~

レース開始後はまず中京大・鈴木雄登(4年・中京大中京)が飛び出し、後続は上位5校9名の集団でレースが進んだ。鈴木が集団に吸収された後、岐阜協立大・中尾啓哉(4年・高岡向陵)が飛び出す。このまま中尾がリードを奪ってトップでゴール。2位には7秒遅れで鈴木が入り、総合タイム4位の岐阜協立大、5位の中京大が意地を見せた。

最終4組のスタートを待つ選手たち。この組で全日本大学駅伝出場校が決まる。

出場校争いは皇學館大が総合タイム1位を維持。柴田龍一(4年・三重)が先頭集団から大きく遅れ、4組だけの合計タイムでは5位。それまでのリードが効いた。愛知工業大は確実に代表権を掴みに行くため、名古屋大の選手をマークする形でレースを進めた。最後ペースを上げて3位名古屋大学との5秒広げて危なげなく出場校を掴んだ。

ラスト1周を迎え、力を振り絞る岐阜協立大・中尾啓哉(4年)。

最終順位・記録

1位 皇學館大 4時間7分34秒91
2位 愛知工業大 4時間 07分49秒37
————
3位 名古屋大 4時間09分09秒00
4位 岐阜協立大 4時間10分11秒09
5位 中京大 4時間13分31秒03
6位 三重大 4時間25分30秒94

各校の主力選手が激戦、見応えのあるレース

出場校争いは2組目で3位名古屋大学までに絞られ、3組目でほぼ決着した格好だった。しかし1組目では皇學館大、2組目では名古屋大、3組目では愛知工業大、4組目では岐阜協立大、中京大と上位5校の主力たちがレースを引っ張り、記録以上に見応えのあるレースだった。4組目では総合タイム2~5位の4校が皇學館大との差を縮め、終わってみれば1位皇學館大と2位愛知工業大との差は14秒。2位と3位名古屋大の1分19秒差もそのほとんどが3組目でついたもの。他の組の合計タイム差はたったの5秒だ。

特に最終4組では上位5校の選手がしのぎを削り、1位から9位の選手が20秒以内にゴールになだれ込む激戦。複数の選手が自己記録を更新した。レース後には互いに健闘を称え合う姿も多く見られた。レース後の姿も含め、スポーツの醍醐味を感じさせる大会だった。

関西勢との出場枠争い、東海学連選抜にも注目

11月6日に行われる全日本大学駅伝に出場する皇學館大、愛知工業大。関東地区代表との差は大きい。翌日6月19日に行われた関東地区選考会では出場校ボーダーラインだった7位・日本大との記録差は8分以上ある。現実的な目標は関西地区代表に先着することだろう。同じく翌日に行われた関西地区選考会では1位大阪経済大が4時間06秒01秒35、その差は1分33秒。記録だけなら関西地区代表の方が上だが、気後れするほどの差ではないだろう。

関西地区代表との争いは重要な意味を持つ。全日本大学駅伝では各地区代表の成績に応じて出場枠が割り振られる「成績枠」があるからだ。詳細なルールは割愛するが、近年は関東地区が上位を独占し、残りの成績枠を関西地区・東海地区で争っている。来年の出場枠は成績によって3校に増えることがあるが、逆に1校に減ることもある。

またオープン参加で順位は付かないが、代表校以外から選手を選抜する「東海学連選抜」にも注目したい。名古屋大、岐阜協立大、中京大の選手が中心となり、過去最強のメンバーが組めるだろう。9月に行われる選考レースは東海インカレ5000m王者の岐阜大・小渕稜央(3年・津)も加わった熾烈な戦いが予想される。熾烈な選手争いを勝ち抜いた選手たちが、関東勢にどこまで迫れるか注目だ。

6月19日には九州地区でも選考会が行われ、残るは北信越、北海道、中四国、東北の4地区。4地区で繰り広げられる熱い出場校争いにも注目したい。

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