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葛飾の街を赤く染めるフットサルクラブ「リガーレヴィア葛飾」は新たな象徴になるか?

「リガーレヴィア葛飾」

この言葉を聞いて、それが何であるかを思い浮かべられる人は少ないかもしれない。2022年4月に葛飾にやって来た新参者であるのだから当然だ。今シーズンから、日本フットサルリーグディビジョン2(以下、F2リーグ)で戦うフットサルクラブ、それがリガーレヴィア葛飾である。

これから葛飾の街で歴史を作っていくわけだが、クラブとしては長い歴史を持っている。リガーレヴィア葛飾とはどのようなフットサルクラブなのだろうか。前身のクラブから約10年でF2リーグに導いた、GMの西野宏太郎氏に話を聞いた。トップリーグ参戦までの道のりと目指すクラブ像、葛飾への想いとは。

リガーレヴィア葛飾としてFリーグに参戦する意義

2022年3月、リガーレヴィア葛飾のF2リーグ参入が承認された。本格的にFリーグを目指して活動してきたクラブにとっての悲願達成である。ただし、Fリーグ所属のクラブになることが本当の目的ではない。

クラブは次の目標に向けて動き出している。参入するだけでなく多くの勝ち星を重ね、F1リーグを目指す、ということも目標の一つではあるが、それは多くのクラブが掲げることでもある。リガーレヴィア葛飾が思い描いているのはそれだけではない。

2022年から、これまで関東リーグで使用してきた水元総合スポーツセンター体育館をホームアリーナとすることが決まり、葛飾区をホームタウンとして活動することになった。「水元を真っ赤に染めたい」と西野氏は言う。それこそがリガーレヴィア葛飾が目指すところなのだ。葛飾の人々はもちろん、クラブを支えるサポーターやスポンサーといったパートナーが楽しめる場所であり、情熱を傾ける存在でなければ意味がないと西野氏は考える。

これは目標でありながら、これまでの姿と変わらないことでもある。「関東リーグ時代からFリーグクラブに引けを取らない」という応援を水元で表現し続けることが大切なのだ。

リガーレヴィア葛飾のGM西野宏太郎氏

前身クラブからリガーレ東京へ

葛飾のお隣、東京都江戸川区出身のGMの西野氏は、現役時代はシュライカー大阪などでプレーしたFリーグ選手であった。退団後は東京に戻り、地域リーグのクラブでプレーを続けた。

そのクラブが当時東京都1部リーグに所属していたデルソーレ中野である。リガーレヴィア葛飾の前身となったクラブであるが、そこには西野氏がかつて所属していたクラブの仲間が集まった。有力選手が揃ったチームの中には、現在リガーレヴィア葛飾オーバー40チームの選手兼監督を務め、西野氏とともにクラブを支えてきた松浦英氏もいた。

関東1部リーグ昇格のタイミングで、チーム名をリガーレ東京に改称。本格的にFリーグを目指し始めたのはこの頃である。約8年前のこと、漠然とFリーグを目指し始めた中で、Fリーグクラブと対戦する機会が訪れた。練習量、フィジカル面、あらゆる部分で歯が立たないと感じたという。その悔しさから、本気でFリーグを目指すことを決意した。ただし、強くなることを真の目的としたのではない。

あらゆるステークホルダーを大切にするクラブ

「F1リーグのクラブに比べてもサポーターが集まる。応援には定評があるんです」と西野氏は力強く言う。クラブを支える人たちにより喜んでもらうために、最高峰の舞台に立つことが一つの答えだと判断したのだ。選手はもちろんだが、サポーターやスポンサー、ホームタウン関係者など、常にステークホルダーを大切にする姿勢がリガーレヴィア葛飾にはある。それはリガーレ東京時代から変わらない。

当然だが、そのためにはチームの強化が必要だ。資金が潤沢であればトップ選手を獲得することで強化することができるかもしれないが、今のクラブにはまだそこまでの余裕がないのは確かである。だからこそ、選手の約半分を占めるという下部組織出身の選手を強化する。

とはいえ、資金的な事情からそうしているわけでは決してない。関わる人々を大切にしてきたクラブの方針に照らし合わせれば、ともに育った選手たちを起用したいというのは当然である。

リーグ戦を控えたトレーニングの様子

リガーレは葛飾区へ リガーレヴィア葛飾の誕生

2022年に悲願のFリーグ昇格を果たしたリガーレ東京は、葛飾区をホームタウンとして、チーム名をリガーレヴィア葛飾に変更することを発表した。チーム名にはどのような意味があるのだろうか。

改称前の「リガーレ」に「ヴィア」を足した「リガーレヴィア」という造語なのだが、リガーレ(ligare)はラテン語で「つなぐ」、ヴィア(via)はラテン語で「道」を意味する。「フットサルを通じて人と人との繋がりを大切にする」と西野氏は何度も口にしていたのが印象的だが、クラブが大切にしてきた理念を忘れずに、これからも歩んでいくという想いが込められている。

ではなぜ、葛飾をホームタウンに選んだのだろうか?Fリーグに参入するためには、ホームタウンを一つに決める必要がある。そのために、手を挙げてくれる所があればどこでも良かったのか?もちろんそんなことはない。

ホームアリーナとなる水元総合スポーツセンター体育館は、関東リーグでホームアリーナとして使用。そこでサポーターが創る水元のアリーナの雰囲気は、Fリーグ昇格を大きく後押しした。また、隣接する江戸川区出身の西野氏にとって愛着がある地でもあった。つまり、葛飾を選んだのは必然だったと言えるだろう。

学校でのサッカー教室など、地道な活動を続けて葛飾区に受け入れてもらえるようになった。とはいえ、正式にホームタウンに決まったのは今年の3月であり、まだ区民の認知は高くはない。「リガーレ」と呼んでもらえるよう、これからも地域に根付いた活動を続けていく。

ちなみに、西野氏に葛飾の魅力を聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。

「下町のイメージがありますよね。寅さんやこち亀(※1)も有名です。実はモンチッチ(※2)も葛飾生まれなんですよ。」

※1漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(作者:秋本治)

※2葛飾区に本社を置く株式会社セキグチから誕生したキャラクター

こち亀の両さんのような下町の暖かさがあり、モンチッチという人気キャラクター生誕の街でもある。ある種個性的な街と言っていいのではないだろうか。

そんな葛飾区において、西野氏が意識することがある。同じフットボールクラブであり、葛飾の先輩クラブでもあるサッカークラブ「南葛SC」だ。漫画『キャプテン翼』をコンセプトに活動しながら、元サッカー日本代表の稲本潤一選手や今野泰幸選手など元Jリーガーを多数擁し、葛飾からJリーグ参入を目指している人気クラブである。

「南葛さんとは交流はあるし、個人的にも今後コラボレーションしていきたいと考えている」とのこと。「フットサル」や「サッカー」などのフットボールが、寅さん、こち亀、モンチッチに続く葛飾の象徴になるかもしれない。

リガーレとして変わることのないコンセプト

リガーレヴィア葛飾のクラブカラーは赤である。前身のデルソーレ中野時代から変わっていない。西野氏いわく理由はそれだけだそうだ。「歴史を作ってきた色を変える必要はない」というのが最もな理由だろうが、情熱の赤には、クラブが目指すフットサルに由来するように思える。

泥臭く、かっこ悪く、リガーレらしく

これがリガーレ東京からリガーレヴィア葛飾に受け継がれる、クラブのあるべき姿だ。フットサルは緻密なスポーツで、技術や戦術が勝敗に大きく影響する競技である。「でもそれだけでは勝てない」と西野氏は断言する。「上手い選手はいくらでもいる。『勝つためな気持ちを前面に出せる選手、人の心を動かす選手』が必要」と言う。

日本を代表するプレーヤー 森岡薫選手が加入

今シーズンは日本を代表するフットサル選手である森岡薫選手が加入した。スペインから帰国したところを、同級生で10代の頃から親交のある西野氏がオファーを出したという。西野氏は、森岡選手にはこの部分でも若手選手の手本になることを期待している。

ただ勝つだけではなく、人々の心を動かすフットサルを媒介に、人と人とを繋げる役割を果たす。リガーレヴィア葛飾は「泥臭く、かっこ悪く、リガーレらしく」Fリーグを戦う。

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