“神戸で育ち、神戸を愛する”エベイユスポーツクラブオーナーの地域貢献に迫る(前編)
エベイユスポーツクラブは神戸市北区を中心にサッカーを通じた地域貢献を目指して活動しているチームである。2006年に設立され、社会人チームのエベイユFCは兵庫県1部リーグに所属、ユースチームも活動している。
園児から始まり、小学生・中学生そして大人を対象にサッカースクールを運営しており、エベイユでサッカーを続けられる環境を実現している。現在、会員数は600名を超える規模だ。
エベイユスポーツクラブを立上げ、コーチを続ける佐藤隆男代表理事にクラブやサッカー、そして地域への想いを伺った。
子供がサッカーをする環境をもっと良くしたい
――はじめまして。本日はお忙しいところインタビューを受けてくださりありがとうございます。まず佐藤さんについて、クラブチームやスクールの指導に携わろうと思ったきっかけを教えてください。
幼少期から神戸市北区で育ち、小学校1年生からサッカーを始めました。中学・高校も地元で過ごしており、高校時代(神戸弘陵高)は1年生の時に全国高校サッカー選手権出場、3年生の時は国体に県代表として出場しました。
しかし、大学時代(大阪体育大)に大きな怪我をしてしまったので選手としてサッカーを続けることを諦めました。そして卒業後に地元のサッカークラブにコーチとして就職しました。
教員免許を取得していたので、教師としてサッカーに関わることも考えましたが、教師になると授業や生徒指導をして、その後部活動でサッカーに関わることになります。もっと多くの時間サッカーに関わり、スポーツを通じて子供の成長に貢献したいと思い、サッカーに専念できる道を選びました。
――クラブを設立したきっかけ、クラブ運営で大切にしていることは何ですか?
サッカークラブで7年間コーチを務めた後、「子供がサッカーをする環境をもっと良くしたい」と思い、クラブを設立しました。
最近は夫婦共働きなどで保護者が子供に関われる時間も少なくなっています。保護者が送迎や活動中のサポートをする時間を取れなくて子供がサッカーを諦める、ということないよう神戸エベイユでは送迎バスを運行し、他のクラブでよく見られる保護者が交替でクラブ活動をサポートする当番制度もありません。
保護者のサポートが少ないのでコーチと子供たちだけで活動していくことになります。そこで重視しているのが「子供の自立」です。準備や片付けを自分たちでやること、(保護者にチェックしてもらわなくも)忘れ物をしないといったことです。またコーチの問いかけに対しても保護者を介さず、自分の意思を示すようにしてもらっています。
また、スポーツクラブに求められるものを考えた時、勝利だけでなく礼儀や身だしなみ、コミュニケーション、自分で問題を解決する力、ルールの中での創意工夫といったことを身に付けることが大切だと思っています。勝利だけを目標にしたら、極端に言えば負けたときに何も残らない。試合で活躍できなかったとしてもこのチームにいてよかった、と思えるようなチーム作りをしています。
もちろん勝つことも大切で、社会人チームはJFL昇格を目標としています。ですが、まず「サッカーが楽しい」そして「うまくなりたい」という気持ちがあって、次に勝つことが大切になります。エベイユより後にできたチームが先に全国に大会に出場することもあったりして歩みが遅いと感じることはありますが、自分たちのスタイルを大切にしたいと思っています。
「ネックチューブ」を使ったコロナウイルス感染防止の取り組み
コロナウイルス流行による影響はスポーツ界にも大きな影響を与えている。当然エベイユスポーツクラブも例外ではない。クラブ活動を再開したものの、活動休止中は会費収入が得られずクラブ経営にも影響を与えた。
そんな中、感染防止のためネックチューブを取り入れた。ネックチューブはマスクと違い、息苦しさを軽減する素材を使用しており、吸汗速乾性も優れているので、快適に運動することができるアイテムだ。
そして、ネックチューブを自分たちが使うだけでなく、他チームに寄付する、という取り組みを行おうとしている。現在クラウドファンディングによる寄付を募っているところだ。なぜ、このような取り組みを始めたのだろうか?
――ネックチューブ採用の理由と気を付けたことを教えてください。
活動再開の際は強い緊張感がありました。子供たちを感染させてはいけないし、仮に感染者が出れば地域でサッカーができなくなってしまう。しっかり感染防止の対策をして再開しなければならないと思いました。接触があるスポーツですから、プレー中の飛沫感染防止も必要です。そのためネックチューブを採用することにしました。
ネックチューブを付けると暑いですし、呼吸もしづらく全力で走ると苦しくなります。暑さについては元々暑い時間を避け17時から練習を行っていますが、それでも影響はあります。給水、休憩の頻度を増やしたりしてプレーしています。また周囲に人がいないときに外すといった対策をしてプレーさせています。
小学生は「暑い・苦しい」といった意思表示をしにくいかもしれないので、まずは中学生で試してから小学生にも導入しました。
「こうすれば安全に活動できる」という姿を示したかった
――どうしてネックチューブを他のクラブに寄付しようと考えたのでしょうか?
自分たちのクラブだけでなく、よりたくさんの子供たちがサッカーをできるようにしたいという想いがありました。我々民間は動きが早く、自分たちの工夫と判断で活動が再開できます。しかし、スポーツ少年団は学校の設備を使っており、活動再開の判断ができなかったようです。
そこで我々がネックチューブを活用することで「こうすれば安全に活動できる」という姿を示しました。それが他のクラブの活動再開につながり、とても感謝されました。さらにこのネックチューブを寄付することで活動を再開するクラブを増やそうとしています。
もう一つはエベイユの子供たちが試合をできるようにするためです。我々だけが活動を再開しても試合はできません。他のクラブにも活動を再開してもらって試合をしたい、という想いがありました。
実際にネックチューブを使ってプレーする選手たちはどう感じているのだろうか。小学生チームのキャプテンを務める谷祐太朗さんに伺ってみた。
――ネックチューブを使ってプレーした感想は?
やっぱり暑いし、息が苦しいので疲れます。でもコロナウイルスの感染予防になっている、と思うと安心してサッカーができます。あとネックチューブがかっこいいと言われるのは、嬉しいです。
佐藤代表理事が高めたスポーツの価値
エベイユスポーツクラブの活動は地域から必要とされ、地域に貢献しているように見えた。
――活動再開について子供たちや保護者の反応はどうでしたか?
再開時は様々な不安がありました。子供たちがサッカーから長く離れたことでサッカーから興味がなくなることを心配していましたが、今のところ退会したいという話はありません。もちろん不安な方もいらっしゃって休会している子供もいますが、思ったより少なかったことは幸いでした。
多くの子供たちがスクールに戻ってきて楽しそうにサッカーをしてくれて、子供たちから元気がもらえました。感謝してくださる保護者も多く、地域の役に立てたと感じています。
――地元が好きですか?
幼少期からずっと地元で育って、離れたのは大学4年間だけでした。地元が好きというよりは地元に「依存して」生活しています。ずっと地元にいて地元に貢献したいと思っています。
佐藤代表理事の理念、行動からは「好きなサッカーで、好きな地域に貢献する」という強い使命感を感じる。地域の子供たちにスポーツを楽しむ環境を提供することで、神戸市におけるスポーツの存在価値を高めているエベイユスポーツクラブ。後編では、佐藤代表理事ならではの指導方針に迫る。
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