「本気でツールを使いこなす」喜田剛 アンダーアーマーを”No.1ブランド”にするためのプロモーション施策とは?
かつて広島東洋カープなどで活躍し、現在は株式会社ドームでマーケティングの仕事を行っている喜田剛氏。
自身の知名度を活かし、YouTubeチャンネル「キダゴch」を始めTwitterやTikTokなどのSNSを駆使して新たなファンを獲得している。
ただ、入社当初から始めるまでは取材を断ることがほとんど、前向きではなかったという。今は「本気で取り組んでいます」と語るまでに至った経緯や力を入れていることについて伺った。
(取材協力:アンダーアーマー、取材 / 文:白石怜平 ※以降敬称略)
トークショーをきっかけに”YouTuberデビュー”へ
ドームでアンダーアーマーのマーケティング関連のチームリーダーを務める喜田は、YouTubeチャンネル「キダゴch」を始め、SNSを駆使して発信力を高めている。
意外にも現職に就いてからは「表に出るつもりはなかった」という。その考えが変わったきっかけは19年12月、川崎市内のスポーツショップで行われたトークショーだった。
12年に入社してから当時までの約8年、喜田はその言葉の通りメディア取材は一貫して断るなど、表舞台に立つことはなかった。
「ブランドを担当する人というのは裏方ですから、”選手をサポートする”という考えが強かったんですね。なので、その自分が前に出ることについては違和感がありました」
と言いながらも、周囲は喜田が元プロ野球選手である事実を見逃す訳がなかった。
「上司や役員の方々から『せっかく元プロ野球選手の肩書があるんだからトークショーをやらないか?』と”命令”が来て(笑)それでやることになりました」
本人も「お客様がくるのか不安もあった」と語ったが、100席用意された会場は開門前から行列ができるほどで、席は瞬く間に埋まっていた。現役時代にもトークイベントの出演経験があったことからトークも弾み、大盛況となった。
集まったファンからも「ぜひ今後もやってください」という声を多くかけられ、自身の役割について考え直すきっかけとなった。
自身が広告塔となって発信力をつければ、ユーザーやファンに直接情報を届けることができる。その想いから、20年の1月から「キダゴch」を開設した。
「アンダーアーマーをしっかりアピールしながら、野球ファンの方々に少しでも楽しんでいただけることを意識してます。おそらく視聴者の皆さまが一番興味あるのは『選手たちがどんなこだわりを持ってアイテムを使っているのか』だと思います。
他にも『パフォーマンスを生み出すために、こんなテクノロジーが活用されている』ことも伝えることが自分の役割だと考えています」
それぞれのツールを”本気”で使いこなす
このように動画を活用した発信を行っているが、他のSNSへも幅を広げている。流行にすぐさま適応し、新たなメディアを駆使することで発信力をより強めている。
「いろいろな新しいツールが出てきていますが、まずはそれがどんなものなのか・何が面白いのかを必ず自分自身で体験しています。自分がインフルエンサーとして影響力を持つぐらい本気で取り組み、ツールを使いこなすことを意識しています」
喜田のSNSはTwitter・TikTok・Instagram・noteと網羅しており、それぞれの特性や流行の時期に合わせて媒体を使い分けている。それによって気づくことがあるという。
「マーケティングの仕事を通じて意識し始めたのですが、メディアを使いこなすことによって、世の中がどんなことに興味関心を持っているのか・どうすれば自分たちのターゲットに情報を届けられるのかが分かってきます。
“Z世代”と呼ばれる方たちと、今後どうコミュニケーションが取れるのかも実際に取り組むことで理解できる。それぐらいやらないと頭に入って来ないのでそれぞれのツールを本気でやっていますし、流行にアンテナを広げて反応しようと心がけています」
アンダーアーマーを”No.1のブランド”に
そんな喜田が今”本気”で挑戦していることは何か、それを尋ねた。
「6秒ほどのショート動画にチャレンジしています。これまではYouTubeで10分前後の尺でやっていましたが、TikTokに取り組んでいるとYouTubeとはまた違いますし、どうやったら視聴者のニーズに応えられるかを常に考えています」
「キダゴch」では、1本約5分〜10分程度のコンテンツがこれまで上げられてきた。ただ、その動画をTikTokでもそのまま活用すると尺が長くなってしまう。そこからショート動画制作の構想へと至った。
「TikTokの特徴はいかに短い動画で表現できるかなので、自分のYouTubeで試しながら、”どういった動画がいいか”・”どんなコメントが寄せられるのか”など試しながら投稿しています。今は(ショート動画に)大きく比重を置いてやっていますね」
現在は野球に加えてバスケやランニングも担当し、プロモーション全体の統括を担っている。今後どうキャリアを積んでいきたいか、大きな目標を語った。
「入社時から変わっていないのですが、『アンダーアーマーをNo.1のブランドにしたい』と常に考えています。引退して無職だったところから拾っていただいた恩もありますし、野球界でもお世話になったので恩返ししたいです。チャンスをくれた会社なので、やるんだったら1番になりたい。そう思っています」
喜田は会社・野球界のみならずスポーツ界への恩返しを続けている。その礎は、様々な苦労を乗り越えてきたプロ野球選手時代に築かれたものであった。
(現役時代編へ続く)