首都大学野球秋季リーグ戦を観に行こう! 武蔵大・筑波大・日体大・東海大・桜美林大・明学大のここまでの戦いぶりは!?
桜美林大学 勝ち点0 勝率0.0 春5位
武蔵大戦 勝ち点0
⬤ 2-8
⬤ 1-7
筑波大戦 勝ち点0
⬤ 0-5
⬤ 0-6
昨年春の王者、桜美林大が今年は苦しんでいる。山本雅樹投手(4年・中越)、土生翔太投手(4年・横浜)、岡田海希人投手(4年・上野学園)、磨龍輝内野手(4年・沖縄尚学)、河原木皇太外野手(4年・横浜)、森田智貴内野手(4年・霞ケ浦)など優勝を経験したメンバーの多くが最後のシーズンとなるため、有終の美を飾りたいところだが、なかなか投打が噛み合わない。個々を取り上げると魅力的な選手がたくさんいるチームであるからこそ、今の状態はもどかしい。
4年間頑張ってきた上級生が活躍するのは大学野球の理想であると思うが、なかなかチームの状態が上がってこない今はキラリと光る1年生が目に入ってくる。
まず、投手では髙安悠斗投手(1年・花咲徳栄)が武蔵大1回戦でリーグ戦初登板。2回無失点と躍動した。「8月のオープン戦で早稲田大の蛭間選手などと対戦してしてみて、レベルの高さを感じました。今日の武蔵大もそうですが、高校生と違って大学生は初球からどんどんスイングしてくるし、対応力が違います」と大学野球の難しさについて語っていたが、ストレートの質には自信を持っている。「大学生が相手になり木製バットに変わったという点で、空振りを取れたりとまっすぐで押せることが増えてきているので、これからも継続していきたいです」。
ずっとレギュラーだった同じ左投げ左打ちの稲村紀外野手(3年・健大高崎)に代わって、今季一番・レフトでスタメン出場しているのが鎌倉洸太外野手(1年・関東一)だ。取材をするのは初めてだったが、この空間だけ時間の流れが違うのかと錯覚するくらい、独特の間で話す鎌倉にペースを持っていかれる。今までの経験から、こういう独特の雰囲気を持っている選手は大物になる可能性を感じる。どんな質問にも、しっかりした答えを持っているところも将来性がある人の特徴だ。頭の中がきちんと整理されていなければ、スムーズに言語化できないからだ。
高校野球引退後の8月、桜美林大の練習会に参加し、藤原悠太郎コーチにバッティングを教わった。背中の肉離れを経験したこともあり、大きくバッティングフォームを変え、キレが増す大学生の球に対応するため、上から叩くのをやめてレベルスイングにした。「落ちる球によく手が出てしまうので、自分のポイントまで呼び込むことで見切る練習、ショートの頭の上を目がけて打つという練習をしています」と、苦手の克服にも取り組んでいる。
高校のときから慣れ親しんだ「一番」という打順。「今はまだヒットが1試合で1本しか出ていないので、筑波大の石毛さんのような嫌なバッターになって出塁を増やしていきたいです。一番バッターの役目は、まず1打席目にしっかり出塁すること。それがまだできていません。ピッチャーはファーストストライクが欲しいと思うので、甘くなるその球を振っていく。自分がチャンスで決めると言うよりは、うしろの先輩たちに繋ぐという思いです。頼れる先輩たちがたくさんいるので、そういう先輩たちと長く野球ができるようにしたいです」と、ここからの巻き返しを図る。
個人的には、タイトルをとるという目標も掲げ「打率をあげること、ミート力も必要、足を売りにしているのでセーフティーとか小技系ももっと磨いていかなきゃいけない、選球眼も大事、状況判断も結構大事です」と、そのために必要なことを整理する。
一番のこの男が初回から出塁して勢いをつけることができれば、今の状況を打破できるのではないだろうか。
明治学院大学 勝ち点0 勝率0.0 春1位(二部)
東海大戦 勝ち点0
⬤ 2-3
⬤ 1-2
日体大戦 勝ち点0
⬤ 0-4
⬤ 1-4
春に二部で優勝し、帝京大との入替戦を制して2008年春以来の一部復帰を果たした。万全の状態で秋を迎えたかったが、新型コロナの影響で7月には約2週間の活動停止もあり、準備が整わないままの選手もいる。そのうえ、開幕カードは春の優勝チームである東海大、続いて2位の日体大と戦わなければならないというハードな日程。
それでも、東海大との開幕戦では、右のエース・佐藤幹投手(4年・駿台甲府)が7回まで無失点の好投を見せた。スタミナ切れで8回に先頭から二者連続四球を与え降板となったが、敵将が「バテてくれて助かったけど……」とこぼすほどの投球だった。左のエース・大川航希投手(4年・志学館)は準備不足の選手のひとりだが、それでも今までの経験を活かして工夫しながらチームのために腕を振る。調子が上がってくるのはこれからだ。
リリーフで頼りになるのは、片渕暖也投手(3年・伊豆中央)。東海大1回戦の8回表にワンポイントで登板し四番の吉田元登内野手(4年・東海大相模)を中飛に打ち取ると、2回戦は7回裏から投げ2回2安打無失点、日体大2回戦では4回裏からのロングリリーフで5回1安打無失点という結果を残した。「テンポ、勢い、声という技術的な面とは違う部分で勝負しています」と言うが、サイドスローから打たせて捕る高い技術を持っている。先発で投げることもあるという片渕は、来年の主軸となるために経験を積む。
なかなか点に結びつかない攻撃について、金井信聡監督 は「勝ちきれない、というのが今の実力」と言うが、安打自体は多く出ている。「一部でも通用する打撃だということはわかった」というのも、また真理だろう。
一番には俊足の古谷大聖内野手(4年・志学館)を置き、繋ぐ野球で得点を重ねたいが、一部の投手を前になかなかうまくいかない。春に二部で首位打者(打率.414)、ベストナインを獲得した上野隆成外野手(4年・日大三)は「二部の投手が悪いということではないですが、(一部の投手は)球速以上にまっすぐの伸びを感じたり、まっすぐがいい分、他の変化球も活きていると感じます」と言う。ただ「4試合やったらみんな一部にも慣れてくると思います」とも言う。ナインの本当の力が発揮されるのはこれからのようだ。
上野が自信を持ってそう言うのには理由がある。上野が明学大に入学した当初、野球部は「これじゃ強くなれないな」という雰囲気だった。「1年目の夏に今の監督さんになって、みんなで『切り替えていこう』と話しました」。そこからの取り組みが二部優勝、一部昇格に繋がった。「今ではどこの大学にも負けないくらいいい練習をしている自信はあります」と、胸を張る。
そんな上野のことを指揮官は「ちょっと変わったバッター」と言う。「見ていると、なんかタイミング合わないし打てるのかなと思うのに、体勢が崩れてもちょこちょこバットを合わせてきて打ったりする。入替戦でも3ランを打っていますし、飛ばすこともできるけど、初球からフワッと当ててポテンヒットを打ったりだとか、相手にとってみれば打ち取りづらい嫌なバッターかなと思います」。
その理由を上野は、日大三高校時代、小倉全由監督に「おまえはバットの根っこから先っぽまで全部使って、形はどうあれとにかくヒットを打て」と言われたからだと話す。就活があったため調整不足でリーグ戦に入った上野にも、少しずつ当たりが出てきた。上野の更なる活躍が、明学大勝利のカギになるかもしれない。
以上、6チームがしのぎを削る首都大学野球秋季リーグ戦。ホームページをチェックし、ぜひ球場で観戦して欲しい。また、現地に行くことが難しい人には、実況、解説も含めて、すべて学生が行っている LIVE配信をオススメする。こちらはこちらで、現地では得られない情報を知ることができる楽しみもある。
今からでも遅くない。首都リーグを観よう。