「いい形になってきた!」Liga Agresiva新潟2023
2023年の高校野球のリーグ戦、Liga Agresiva新潟は、AB2リーグ、計13チームで行われている。
2023年のLiga新潟
Aリーグは、新潟明訓A、北越S、北越A、東京学館A、日本文理、加茂暁星、新発田中央、北3連合の8チーム、Bリーグは新潟明訓B、新潟第一、東京学館B、新潟北、敬和学園の5チーム。それぞれが10月、11月に総当たりでリーグ戦を行っている。
Liga Agresivaのルールにのっとって、1.ベンチ入り全員参加、2.球数制限、3.低反発金属バットあるいは木製バットの使用、4.スポーツマンシップの「学び」が必須となっている。また、試合後に両チームの選手が話し合う「アフターマッチファンクション」も行われている。
今夏の甲子園では、Ligaの参加校では優勝した慶應、ベスト8まで進んだおかやま山陽、立命館宇治と共に、新潟からは東京学館新潟が出場し、話題となった。
今回は私学4校の指導者に話を聞いた。
いい形になってきた
新潟明訓高校 島田修監督(教頭兼務)
Ligaは、私が県立分水高の教頭をしていたときに話を聞きました。2019年に新潟明訓に赴任しましたが、その前年から参加しているので今年で6年目になると思います。
開始当初に比べると、大分形になってきたんじゃないかと思います。
開始当初は、このリーグの主旨とか目的があまり浸透していないと言うか、ただ明るく野球をやっていればいいと言うようなチームも見受けられたのですが、最近は中村聡宏先生(日本スポーツマンシップ協会代表理事、立教大学准教授)のスポーツマンシップ講座をオンラインで受講したり、いろいろ丁寧にコミュニケーションをとっているので、主旨を理解するチームが増えたように思います。
うちの場合、ベストメンバーと言うよりいろんな選手を混ぜてチームを作っています。リーグ戦だから必勝ではないので、いろいろ試しながら戦っていますね。今日の試合では投手がいきなり1回で交代しましたが、これもテストですね。
チームのレベルは当初は実力差があって、始めた当初は30点くらい点が入ったこともありました。それでAB両リーグに分けたのですが、でも、そういうチームでも段々と積極的に野球をすることが浸透して、点差がそこまで開かなくなりました。
もちろんボールを選ぶべき時は選ばないといけませんが、ファーストストライクをしっかり打っていく姿勢は大事だと思いますね。
学習や仕事の評価をする場合に、絶対評価と相対評価というものがあります。
絶対評価は、ある程度の基準に達すればみんなクリアできるというものです。でも相対評価は、相手がいるので自分にとって良い点数をとっても相手が上だったら、評価が下がってしまいます。やはり大会となると、どうしても相対評価の世界に入りがちですが、Ligaのような試合を通じて、やはり自分なりに勝ち方にこだわってみんなで頑張っていくと、つまり絶対評価的なものを目指すべきだと思います。
そしてもう一つ、個人内評価もあります。自分が試合前と後で、どう変わったか?他の子には及ばなかったとしても、できなかったことができるようになれば、それも評価です。
例えば、自分はファーストストライクを絶対振ると、あるいはストライクを3球とも絶対振っていくぞ、という自分の課題がクリアできれば、個人内評価としてすごく評価すべきだと思います。そういう点でLigaはすごく重要な機会になると思います。
そして「野球はそもそも楽しいものだ」と言う原点回帰も含めて有意義だと思いますね。
自分でチャンスをものにできる選手に
加茂暁星高校 大海翼コーチ
今年からLigaに参加しました。選手もたくさん試合で使えるので、その中でいろいろ経験してくれればなと思います。
うちは新チームになって45人になりました。レギュラークラスも出場していますが、多くは控えの選手です。Ligaに参加したのは、東京学館さんや新潟明訓さん、北越さんなど力がある学校が参加しておられるので、そんな中でやらせてもらえれば、選手たちの成長につながるかなと思ったからです。
Ligaは球数制限がありますが、もともと1枚の投手では夏の大会では勝てませんし、低反発バットも来年から導入されるので、経験が積めるのはいいと思いますね。
スポーツマンシップの学びは、勝ちに行った結果負けたときでも、次の試合に向けて立て直すうえではいいと思いますね。
6試合ほど経験して、最初は手探りだったのですが、選手たちも負ければ悔しいですし、いろいろ考えるようになります。Ligaでは試合に出られることが分かっているので、チャンスを与えてもらえることもいいですね。自分でチャンスをものにできる選手になって行ってほしいですね。
自分の持っている力を発揮して成長の機会を得られる
東京学館新潟高校 永田智大部長
うちは今、62人います。大会で背番号をつけた選手もいますが、基本的にはBチームの選手が中心ですね。
私自身は部長になって3年目ですが、いろいろ制限もある中で、中々普段は試合に出られない選手が、自分の持っている力を発揮して成長の機会を得られるのはいいと思います。
今年の夏の甲子園に出たメンバーの中にもLigaに出場した選手がいます。Ligaでの学びが実際にどう結びついているかはわかりませんが、リーグ戦が終わった後に相手チームとミーティングをするような経験が、成長するうえで少なからず影響しているんじゃないかと思います。
Ligaでは1試合でバントが1回しかできません。本来、送りたいところでも基本的には打っていくと言うことで、その難しさを感じています。
それと投手は球数制限がありますが、それよりも投げさせる機会が大事です。投手の配球は真っすぐ中心で、甘いところを打たれたりしますが、コースに投げ分ける力だとか、そういうものも身に着けてほしいですね。
選手の自主性を重視しているので、あまりサインは出していません。自分たちで考えるのも重要だと思いますし、失敗して学ぶこともあると思います。
高校野球はやはり教育の一環なので、協調性とか、一つの目標に向かって頑張るとか、学校生活ではないところで学ぶことがたくさんあると思います。
そういう面でもLigaに参加するのは良い機会だと思います。
レベルが高くなることを目指し、強くなっていきたい
北越高校 宮野元作部長
北越高校は私が赴任した時にはもうLigaに参加していました。それから5年になります。
Ligaのルール、全員出場するとか、球数制限とかにももう慣れているので、むしろLigaのやり方を普段のチーム作りに取り入れている部分が大きいです。
試合の前日までに、誰がどの試合に出て、ここで代わってという選手のローテーションみたいなものを作っています。これはリーダーの選手が中心になって考えています。
新チームになって57人になりました。マネージャーは3人。選手を試合に出す意義も大きいです。うちはAリーグに2チームが参加していますが、1軍、2軍じゃなくてキャプテンのチームと副キャプテンのチームにしています。一番重視しているのは選手の主体性です。
また普段はBチームにいる選手もLigaでは主力級の選手とやれるのですごくいい機会になっていると思います。
スポーツマンシップセミナーを受講して、そこで学んだことを上級生が率先してやってくれて、あれはすごくよかったなと思います。
うちの小島清監督は、やはり野球部なのでまずは野球がうまくなることに第一のエネルギーを注ごうと、純粋にそこに一番の喜びを見出していこうと言っています。今年の夏の甲子園で優勝された慶應高校さんも「究極のエンジョイ・ベースボールは野球がうまくなることだ」とおっしゃっておられましたし、レベルが高くなることを目指し、強くなっていきたいなと思っています。