「新しい風を吹き込みたい」クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 岸岡智樹 ラグビー体験会初開催 現役選手からの直接指導に感激の声
1月20日、東京・渋谷区でクボタスピアーズ船橋・東京ベイのSO岸岡智樹選手がラグビー体験会を開催した。
シーズン中に現役選手が自らラグビー体験会を開くという異例の取り組みに、参加者は感激と笑顔があふれる2時間になった。
(写真 / 文:白石怜平:以降敬称略)
岸岡が自ら運営するコミュニティが主催に
岸岡は東海大仰星高ー早稲田大と名門校で活躍し、U20日本代表にも選出。
早大時代には、全国大学ラグビーフットボール選手権で11年ぶりの優勝に貢献した。20年4月にスピアーズに入団し、現在もシーズンを戦っている。
本体験会は、自身が運営するラグビーラボ「トモラボ」の主催で行われた。
トモラボは岸岡がスピアーズ入団直後に立ち上げたラグビーサークルで、20代〜60代までの約40名の方が参加している。そこでは、オンラインミーティングやオフ会などが行われており、コミュニティを通じて交流を深めている。
現役選手がシーズン中やオフ問わず、1年中ファンたちと交流する機会を自ら設けている希少な活動。自身も「選手がシーズン中に行う活動は、ラグビー界で例があまりなかったので、新しい風を吹き込みたいと考えていた」と、活動の意義を語った。
約4年行われているコミュニティ活動で、今回のイベントは初めての試みだという。実施に至った経緯について、岸岡はこう話した。
「トモラボのみなさんから挙がった企画でした。年も明けるので何か新しいことをやろうと。実は去年、ビーチラグビーの熱が上がっていると話題になり、メンバー間でチームを作って今年の夏にやろうという話になりました。
なのでその前に、自分たちで体験をつくる目的でどこか集まりやすい場所で一度ラグビーをやろうというところから実現したものになります」
今回はコミュニティのメンバーに加え、岸岡のSNSなどを通じて一般募集も実施した。
「せっかくのラグビー体験なので、コミュニティに限定しない繋がりを生みたい」という岸岡の想いだった。最終的に16名が参加し、約半数が一般からの応募となった。
ゲストには山本剣士選手が登場
18時前に参加者が続々と会場に集まる。今回は大学生以上の大人を対象としており、スピアーズのウェアを身にまとった方も多く見られた。
岸岡はこの6日前、第5節の神戸コベルコスティーラーズ戦に出場していた。シーズン中に現役選手と会える特別な機会ということもあり、開始前から皆喜びを隠さなかった。
さらにこの日は事前にシークレットゲストが来ると岸岡から予告されていた。現れたのは同期のPR山本剣士だった。
ポジションが異なる2人。実は今回、山本が参加することになったのもトモラボ内で挙がった要望だったという。
「どういう選手に来てほしいかを聞いたら、ポジションの違うFWがいい・同じポジションだけど違う考えを持っている2人など様々挙がりました。今回初めてということもあり、メニューのバリエーションを踏まえてFWの山本選手に協力いただきました」(岸岡)
準備体操ののち、ボールを使って1−1でパスを回し合った。初対面の組み合わせでも早速コミュニケーションが取られるなど賑わいを見せていった。
ウォーミングアップが終わると4つのグループに分かれた。そこで1人1つボールを持ち、同時に隣に回すゲームを行った。落とさないようにグループ全員で息を合わせるため、チームワークが必要になる。
それぞれが声をかけボールを渡し続け、落とさずに回し続けたチームからは喜び合う様子も見られた。
最も楽しかったと語るパスとスクラムの実践コーナー
ここからは二手に分かれ、パスとスクラムの体験に。岸岡がパス、山本がスクラムを参加者の方々に教えながら実践する時間になった。
岸岡はスクリューパスでの投げ方のコツを伝授。時折笑いを交えながら楽しんでもらえるように工夫を凝らした。
「スクリューパスは回さない、回るんです。手ではなく、ボールの向きを変えます。でもやってみてください。手が変わっちゃいますから(笑)。ボールを変えるんですよ!あとは、掴むと浮いてしまうのでボーリングをイメージしてみてください」
スクラムではまず山本が体勢を決めるポイントを伝えた。ここでなんと1対1で山本と組むことに。その力強さに体が瞬く間に浮き上がるほどのパワーを一人ひとりが体験した。
さらに、2人がプロップ・山本がフッカーとなり3人でも組むことに。山本はこのように解説した。
「スクラムは組む前が大事で、体勢をセットした時に悪い姿勢だと相手に押されてしまいます。あと、フッカーは特に強さが必要です。その強さにプロップがついて行くイメージです」
ポジションを固め、お互いに掴むとすでに”おぉ”と驚きの声が上がる。3人で体を前に進めると皆感激のリアクションを見せた。
参加者からはその場で質問も寄せられた。山本が試合や練習でスクラムを組んでいる時のことを問われると、
「特にマルコム・マークスは力がとても強く、覆うように一人で持っていく感じなので、僕も体が隠れるくらいです。もし、フッカーの身長が僕より低い場合は僕が肩のラインに合わせるように意識しています」
これらの体験は、参加者から”一番嬉しかった”と寄せられたコーナーで、
「ボールを回転させながら真っ直ぐ投げるのがどれほど難しいか分かりました」
「現役選手と実際にスクラム組めるなんて本当にすごいことです」
などと、次々に挙げていた。
開始前から寄せられた「次もやってください」の声
最後はタッチラグビーでの試合体験。4チームに分かれて2試合ずつ、寒さを吹き飛ばすかのように全員が駆け回る。
岸岡から教わったパスを早速決めたり、楕円を持ってコートを精一杯駆け回った。トライを決めた際にはチームみんなで喜びあい、一方で悔しさの中にも笑顔がたくさん見られた。
約2時間のラグビー体験会は怪我なく無事に終了した。初の取り組みだったが開始前からすでに「2回目ぜひやってください」と岸岡に声がかけられ、終わってからも、「また楽しみにしています」と次々にリクエストを受けた。
参加者からはパスやスクラムの体験以外にも全体を通して、
「子どもたちに教えているのですが参考になりましたし、自分も実際に体を動かせたのでリフレッシュになりました」
「大人だけのラグビー体験会ってあまりなく、そういうのがあればと思っていたので参加できて嬉しかったです」
「観戦にも行っているので、新しい見方が増えそうで次行くのが楽しみです」
と喜びのコメントが挙がった。
岸岡も終えてみて、「お互い初対面の方も多かったと思うのですが、ラグビーという共通言語のもと、楕円にふれることで見えない障壁がどんどん壊れていくのを感じました。これがラグビーの良さだと思います。
感謝の声をたくさんいただきましたので、小さいことから広げていくことでこれからも続けていきたいです」
と参加者の期待に応えていきたい想いを明かした。
両選手はシーズンの戦いが続いている。己を高めるとともに、ラグビーを通じた絆の輪はさらに広がっていく。
(おわり)