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西武ライオンズ メットライフドームエリア改修工事で創り出す「ライオンズだからこそできるボールパーク」とは

2017年11月15日、「西武ライオンズ 40周年記念事業」が発表された。

1978年オフに福岡県福岡市から埼玉県所沢市に本拠地を移転し、「西武ライオンズ」が誕生。移転後はリーグ優勝18回・日本一10回を達成するなど数々の栄光を掴み、2018年に40年目の節目を迎えた。

本事業では、「ボールパーク化」「チーム育成/強化」の2つを軸に、メットライフドーム(2017年より現名称)周辺エリア全体の改修を行っている。期間は2017年12月〜2021年3月、総額約180億円という過去最大規模である。

ボールパーク化は観戦に来られたお客様がより快適に楽しめるように、ドーム内と外周エリアをリニューアルする。

育成/強化の面では、チームが常勝チームであり続けることを目指し、練習環境の整備等を行った。

室内練習場・選手寮を建て替え、ファームの本拠地であるCAR3219フィールド(旧:西武第二球場)の改修と練習施設を増設。

今回、ライオンズ40周年記念事業の特集を前後編に分けてお届けする。前編では、「ボールパーク化」にフォーカス。40周年記念事業を行うに至った経緯やどんなボールパークになるのか球団広報を務める服部友一氏にお話を伺った。

(取材協力/写真提供:埼玉西武ライオンズ)

取材に協力いただいた服部友一広報

サービス多様化に伴い、あらゆるニーズに応える

今回、なぜ本事業を行うに至ったのか。服部広報はその経緯を説明した。

「所沢に来てからの40年間で、サービスやレジャー・野球観戦の楽しみ方などが多様化してきました。昔は男性が圧倒的に多かったですが、今は女性ファンのみやファミリーでお越しいただく方も増えています。

これからのライオンズをさらに応援していただくためにも、あらゆる世代のニーズ・ご期待に応えたいと考えてきました。

そのためには快適な野球観戦の環境を提供することはもちろんですが、周辺施設を充実させて、観戦前後の時間なども楽しめるような”ボールパーク”を目指したというのが最初です」

球団は2014年から本格的に検討を開始。発表まで3年以上かけて企画を練った。海外の球場などに視察へ行き、ライオンズだからこそできるボールパークの具現化に向け水面下で議論を重ねていった。

正式発表後の2018年2月、球団内で球場改修専門部署である「ボールパーク推進部」が新設された。ボールパーク推進部は企画の概要をつくり、具体化させるための部署である。

飲食・チケットなど各担当からサービス面での意見を吸い上げて色付けし、連携を図りながら進めていった。

ライオンズだからこそできるボールパーク

”ライオンズだからこそできるボールパーク”とは何か。

それは「自然共生型」である。

1998年から1999年にかけてドーム化し、完成した西武ドーム(名称は当時)から続くコンセプトで、今回もそれを活かした形式を採用した。

「我々でしかできないボールパークとは何かという考えに基づくと、それは『自然共生型』であると。自然の環境を感じられる場所なので、ドームの外周部分を有効活用できた点が1番の特徴です。

ドームの傘とスタンドの間には隙間があり、座席からアクセスしやすい場所に色々な建物を建てることができるので周辺施設を充実させることができると考えました」

自然共生型の特性を活かし、外周部分をメインに開発した

今回整備した新しい施設も外周部分に建設。

ホームの3塁側には「獅子ビル」と屋外子ども広場の「テイキョウキッズフィールド」を新設。獅子ビル内にはグッズショップに加え、屋内子ども広場の「テイキョウキッズルーム」やフードエリアを常設し、ファミリーでも楽しめる場を用意した。(※屋外子ども広場は21年3月オープン)

コンコースと獅子ビルの間には大型ビジョンを備えた「DAZNデッキ」が広がっており、より開放感を生み出している。

一方、1塁側には大型のグッズショップ「ライオンズ チームストア フラッグス」を新設した。2階層になっており、観戦グッズから普段使いもできるライオンズオリジナルのグッズまで、さまざまな商品を用意。

その隣には「トレイン広場」を新設。昨年11月に引退した西武鉄道101 系車両を設置し、メットライフドームの新たなシンボルとして2021年3月にさまざまな体験が楽しめるようになる。

西武鉄道101 系車両を設置。新たなシンボルになる

メットライフドームエリアのメリットを最大限に活用することで、来場した方々により多くの選択肢を提供できるようになった。

最も意識した「導線」

外周の他に具体的にどんな改修を行ってきたのか。

服部広報は資料を出しながら、一つ一つ丁寧に説明を加える。まず、今回最も意識した点の1つは導線と語った。

昨シーズンまでは1塁・3塁とゲートが分かれていたが、今シーズンからゲートを手前に置き1ヶ所に統一した。西武球場前駅の改札を降り、左を向けばすぐ目の前にメットライフドームがそびえ立つ。駅の目の前にあるという利点を活かし、これまでの導線を整理した。

「私たちは『導線』をすごく意識しました。今までは目の前にチケットセンターがあり、さらに少し歩いて左側にお弁当屋さんがあるなど、機能が分散していました。なので今回の改修では、駅を出て左側に行けば全て揃うように集約したのです」

ファンクラブ窓口やチケットカウンターも一新。駅を出れば”ボールパーク”が目の前に広がり、来場した方が迷わず向かえるよう想像したという。導線の統一化もライオンズだからできるボールパークの1つの形である。

導線を意識し、各窓口を一箇所に統一する

また、球場内部も大きな改修を加えた。西武ライオンズ球場が開場してから40年、ドーム化を経ながらも同じ球場をずっと使用してきた。老朽化や暑さ対策も球団の長年の課題であった。

「事業を開始する経緯の中で球場の老朽化というものもありました。観客席も40年使ってきましたのでほぼ全席刷新します。段階的に入れ替えていまして、現在最後の改修を進めています。あとはバックネット裏の地下部分を掘り下げ、バックネット裏としては12球団最大の『アメリカン・エキスプレス プレミアムTM ラウンジ』を新設します。

約200席ある『アメリカン・エキスプレス プレミアムエキサイトTM シート』と、お食事やお飲み物が楽しめるエリアを含まれており、年間シートを持っておられるお客様向けの施設を充実させます」

暑さ対策にも力を入れる。狭山丘陵に位置し、上述の通り自然共生型であるメットライフドームは気候の影響を受けやすい。特に夏場は構造上、屋根の影響で熱がこもるため、暑さ対策を行う必要があった。

そこで今回、両軍のダグアウトに空調設備を導入。選手たちが少しでも快適にプレーができるように努めている。

エンターテインメント性の向上

プロ野球では、近年、各球団ともに演出に力を入れている。大型ビジョンに映し出される選手出演の映像やヒーローインタビュー時の照明など、それぞれ工夫を凝らしている。

ライオンズでもスタジアムDJの選手コールや12球団で唯一、生のオルガン演奏を奏でるなど、独自の演出で球場を盛り上げている。

昨シーズン、その演出がさらに進化。まずはドーム内の照明がLED化された。ライオンズの選手が本塁打を放ちダイヤモンドを1周する際には照明の光が回転し、ヒーローインタビュー時は暗転させてお立ち台の選手にスポットライトを照らし出す。

そして2008年3月から全面フルカラー化した電光掲示板・通称”Lビジョン”が今シーズンさらに進化する。面積319.84㎡から601.62㎡と約2倍となり、これまで以上に迫力ある演出やスタッツの表示が可能になる。今シーズン、新たな形でファンの方々をお迎えする。

Lビジョンが約2倍の面積に拡張。迫力ある演出が可能に

「照明をLED化させ、ビジョンを大きくすることでより高度な演出ができますので、エンターテイメント性を出せると考えています。野球の他にもコンサートでご利用いただいているので、さらなるイベントの誘致に活用していきたいです」

ITインフラの整備も並行している。

エンターテインメントやデジタルマーケティングなどへの活用を目的に、高速通信インフラを整備。昨シーズン、球場内にサイネージモニターを新たに設置した。現在70台ほどであるが、2021年には301台に増設予定。

選手がタイムリーヒットを打った際や三振を奪った際、Lビジョンに映し出される演出などがタイムラグなく全台で放映することができ、メットライフドームエリアのどこにいても球場内の臨場感を味わうことができる。

「301台のデジタルサイネージで映像演出を球場中に出します。あと1塁側の『ライオンズ チームストア フラッグス』がガラス張りになっていまして、そこもサイネージになっています。実際のプレーとタイムラグなく演出を流すのは高速通信ネットワークがあるからこそできることなので、ITインフラの整備も加速させているところです」

サイネージも大幅に増設する(写真はファンクラブカウンター)

今後も「お客様ファースト」

2018年から始まった改修工事は、2021年3月で全てが完了予定である。球団としても手応えを感じているという。

「改修が始まってからきれいにもなっていますし、利便性もすごく高まりました。この2年の間だけでも様変わりしていて、2020年に来られなかった方も大きな変化を感じていただけると思っています」

ボールパーク化が実現した先、球団はどんな想いを描いてるのか。最後に服部広報はこう話した。

「今後に関しても『お客様ファースト』だと考えています。地元所沢をはじめ、少しでも多くの方が(ライオンズに)興味を持っていただきたいです。久しく離れていた方に戻ってきていただく・一度も球場に来たことない方が好きになっていただくなど、我々もやることがまだたくさんあると思っています」

2021年3月26日、メットライフドームエリアがいよいよグランドオープンする。覇権奪還に挑むライオンズを応援するとともに、新しい球場の雰囲気を味わうことができる。

次回、「チーム育成/強化」編をお届けする。

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